第6話:大魔王に育てられています? 4
目の前に先程の魔法で消し炭にしたはずの、少年アレスがいつの間にか立っている。
『まさか、さっきの魔法は、全力で放ったんだぞ。しかも周りの連中を巻き込む様に放ったが?まあ無意識にガキの方を外したのだろう』
そう、言葉に出したつもりだったのだが、声が出ない事に気が付かず。
先程の爆炎とそれで起こった煙が晴れると、アデルが先程まで抱えていた少女を、いつの間にか少年アレスの、腕の中でお姫様抱っこをされている。
『いっ、いつの間にこのガキ。よくも・・・?』
アデルは、また言葉を出したつもりだったが、今度は身体に悪寒が走り少年の方を見た。
するとアレスは、アデルに向けて冷たい視線を送り睨み付け威嚇している。
このときアデルは、何時の間にと考えながら、まあまた少女を奪い取りこの少年を始末すればいいだけと思い自分の腕を伸ばそうとした。
だが自分の腕を動かそうとするが動かない事に困惑して、他の部分を動かそうとした。
でも、まったく身体がいう事をきかない。
と、いうより身体全体が動かない。
何故と思い視線だけを動かすと、見える範囲にあるはずの自分の腕がない。
それもそのはず右腕は肩口から無くなり。
そして見える範囲にある左腕は、完全に氷付けにされている事に気が付いた。
それなのに、冷たさもだけど痛みも感じず頭も動かせない。
この事に、混乱して声を出そうと、必死で口を動かそうとしているのに、言葉が出ない事にやっと気が付いた。
『どうなってやがる。俺の腕も身体も動かねー、終いには感覚もねーし声もだせない・・?』
ただ、視線だけが動かせる状態で、思考だけははっきりしているので後は考える事しか出来ない。
このときアデルは、《はっ》としてから、恐怖した。
そうだこれは、大魔王の仕業だと思い視線だけを動かし周りを見てみると、大魔王はいない事を確認する。
そして周囲の煙が晴れてよく見える様になり、周りに視線を向けた。
すると周りにいた者は、こちらを見て驚き青ざめた顔をしている。
そしてやっと魔王候補の男アデルは、この所業を行なったのが目の前の少年アレスである事に気が付く。
そう周りにいた全員が、少年の方に視線を向けて驚いていたからだ。
だがもうこの時、すでに気が付くのが遅かった。
そう目の前の少年アレスから湧き出ている覇気は、大魔王エリザと比較しても同等でありしかも、ありえない事に魔族にとっては天敵である聖なる力を持つ者であると気が付いた。
だがしかし目の前にいる少年アレスの気は、不思議であり聖なる気と魔なる気の両方を放っているのだ。
『なっ、なんだこのガキは・・・いや、もしかして』
アデルは冷や汗を流し、そう思いながら後悔していた。
これまで、散々やってしまい何故粋がって報告をせずもみ消そうとした事を、そして大人しく捕まればよかったと目に涙を溜めていた。
あわよくば、もう一度チャンスを与えて貰えるのなら、今度はと考えて顔を伏せ後悔していた。
そして、それを見たアレスは自分の出していた気をすべて抑え込み。
セリカをお姫様抱っこしたまま、マリアの元に歩いていった。
そのマリアの元に歩いて行く途中で、セリカが目を覚まして。
「あぁ、アーたんだ。えへへっ」
そう言葉に出し笑顔を向け、お姫様抱っこされたままアレスの首に抱きついてきた。
「あう、セリー動かないでよ。それに気が付いたのなら自分で歩いてよ」
「えへへっ、やーだよっ。まだこのままが良いの」
「うぅ、歩きにくいのに」
セリカは、余程嬉しいのか、笑顔のままアレスの抱きつき、そのアレスは歩きにくそうにマリア達の前までやってくると。
「あぁー、セリーずるい。私もお姫様抱っこしてよ。アーくんおねがいっ」
レイカが、お姫様抱っこをしているアレスの前まで来てお願いをして来た。
その言葉を聞いたアレスは、ゲンナリした顔をしていた。
そして、今回の飢饉の首謀しゃである、魔王候補のアデルは、アレスが覇気を抑えた瞬間に先程まで動かなかった、身体が動くようになり、膝から崩れ落ちた。