010話 モブはやっぱりモブ
バイトと学校とでつらい・・・
そして眠い・・・
「死ねや、コラァ!」
シジツは大剣をリュウに向かって振り下ろしてきた。
「お前は決闘のルールをちゃんと覚えてるのか・・・」
リュウはため息をつきながら、コールで軽くいなした。
大剣は勢いを殺せずに、リュウの横を抜けて地面に刺さった。
「ふんっ!」
リュウは刺さった大剣を横蹴りして剣身を折った。
「なっ!」
自分の武器を失ったシジツは唖然とした様子で折れた大剣を見ていた
「負けを認めるか?」
リュウはシジツに問いかけた。
「う、うるせぇ!俺は”剛腕”だ!武器なんてなくても戦えるんだよ!」
武器を捨てて、殴りかかってくるシジツ。
「C級・・・その程度だったのか・・・」
リュウは向かってくるシジツに回し蹴りをくらわせる
ドゴンという音と共に闘技場の壁にへこみができ、シジツが横たわっている。
「カガリさん、相手の確認をしてもらってもいいか?」
「は、はい!少々お待ちください!」
ぽかんとしていたがすぐに意識を取り戻し、シジツの状態の確認に行く。
「意識は飛んでいるようですが、生きてはいますね。これ以上は続行不可能ということで、この決闘はリュウさんの勝ちです。おめでとうございます。」
カガリは嬉しそうに微笑んだ。
「そいつがその状態だとどのみち言うことを聞いてもらうこともできないから、明日でいいか?」
リュウは疲れたような感じを見せつつ聞いた。
「あ、はい。それは大丈夫です。明日には鑑定士も来てると思いますので、その時にでもお聞きしますね」
「じゃあ、それでたのむ」
カガリはギルド員としては優秀なんだろうな、と思いつつようやく宿にかえれることに安堵し、ギルドを後にする。
――――――――――
「おや、結構遅かったね、晩御飯は食べるんだよね?」
民宿に戻ったリュウにクレアが話しかけてきた。
「ああ、もちろん食べる。あとで体を拭けるものがほしい。」
一日中ゴブリンの森にいたので結構汗をかいていたので体を拭こうと思っていた。
「なんだい、汗をかいてるのかい?それなら近くに風呂屋があるから行ってきな、多少硬貨はいるけど疲れをとるにはぴったりだよ」
この世界にも風呂屋があるのか、それは行くしかない。
たまにしか風呂にはつからないが、今日はつかりたいと思っていたのでちょっとうれしかった。
「わかった、ありがとう。あとで行ってみるよ。それより、先に飯をもらえるか?腹ペコなんだ」
「はいよ、たっぷり食べておくれ、うちの旦那が腕によりをかけてつくるからね!」
嬉しそうに言うクレアを見て、おしどり夫婦なんだなと思いつつも席についた。
座ってからすぐに運ばれてきた晩御飯はかつ丼みたいなものだった。
「クレアさん、これはなんて料理です?」
気になったので聞いてみた
「これは豚肉を使ったかつ丼だよ。」
異世界にも丼という文化があるか・・・
「牛肉とか鶏肉もあるんですか?」
「牛肉は超高級肉だよ、うちなんかじゃ扱ってないよ。鶏肉も結構値段が高いからね、いいとこに行けばこの街でも食べれるはずだよ」
牛肉が超高級肉・・・考えられないな・・・
「ありがとう。御飯、いただきます」
「はいよ、たくさん食べてね。」
肉の種類で値段が違うというのは結構驚いたが、特に肉が食べたいというわけでもなかったのでとりあえずは保留でいいかな
かつ丼は日本の定食屋くらいのおいしさだった。
――――――――――――
そのころギルドでは・・・
「うっ・・・俺は・・・」
気絶していたシジツが目を覚ました
「ようやく目を覚ましましたか」
目を覚ましたシジツの近くにはカガリが立っていた
「C級”剛腕”のシジツさん、決闘はあなたの負けです。今日はリュウさんは帰ってしまったので、明日また来てください。そこで決闘のルールである、勝者の言うことを一つきいてもらいます」
「なんだと・・・」
俺はあのルーキーに負けたってのか!?あんな短剣しか持ってなかった奴に・・・
「両者合意の上で、さらに判定員もいるので勝敗は覆りませんよ」
カガリはいままでやりたい放題やってきたシジツをどうにかできると少し強気で言った。
「くそっ」
イライラを全く隠さないままシジツはギルドを後にした。
シジツはその足でギルドから離れた路地裏に来ていた。
「くそっ、あの野郎、ぜってぇ何かイカサマをしてやがる。俺がルーキーなんかに負けるわけがねぇんだ」
ぶつぶつとつぶやきながら路地裏を抜けた先にある自分の家へと向かっていた。
「ずいぶん軽くやられちゃってたねー」
「誰だっ!」
普段、人がいない路地裏で声が聞こえたことにも驚いたが、自分がやられるところを見られていたと思うとさらに腹が立った。
「俺があんな奴に負けるわけがねぇんだ。あいつはぜってぇイカサマしてやがる。高位ランカーが透過して戦ってたんだ、間違いねぇ!」
「じゃあ、君はそのルーキーに再戦したら勝てるのかい?」
誰かわからないがその口調がシジツをさらに苛立たせる
「ったりめぇだ!」
声のする方へシジツは怒鳴った。
「じゃあ、僕と一緒に来ない?今戻っちゃうと決闘のルールに従わなきゃいけなくなるよ?そのルーキーの言うことを聞かなきゃいけなくなる。」
シジツは何を馬鹿なことをと思いつつ返事をする
「はっ、なんで見ず知らずのてめぇといかねぇといけねぇんだよ。」
「”言うこと”の中には”俺に関わるな”とかもできちゃうんだよ?ちなみに誓約は一種の呪いだからほんとにルーキーに対して何もできなくなるよ?」
シジツは驚いたように声のする方を見て、発言する
「・・・・・じゃあ、お前についていけばあいつを殺すことができるのか?」
「もちろん。」
シジツは少し考え、その声の主についていくしかなさそうだと判断をした
「わかった。お前についていこう。それで、お前の名前は・・・」
「俺は―――。ちょっとした傭兵を指揮しててね。君もその一員になってもらうけど大丈夫かな?」
「わかった。」
お互いの利害が一致し、握手を交わす二人。
次の瞬間にはもうそこには誰の姿もなかった。
モブは使いまわせる!(ひどい
タイプミス等あったらご指摘ください。