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アマテラス様は弟たちにシスコンになってもらいたかったらしい

作者: 平子 奈都亜

 高天原。そこは八百万の神々が集う場所として知られている。今日も多くの神様が雑談をしたり、人間界を見ていたりしていた。

 そんな穏やかな高天原で一際笑顔を浮かべているのは、太陽神として有名なアマテラス様。その向かい側には神妙な顔をしているツクヨミ様とスサノオ様がいた。三貴子ともあろう神様が仕事もせずに何をしているのか。他の神様たちも興味津々で見ていた。

 その時、アマテラス様が右手の人差し指を唇に当て、

「ねぇねぇ、ツクヨミにスサノオ! 2人はお姉ちゃんの事好き?」

 そう言いながら上目遣いをしてツクヨミ様とスサノオ様を見る。

 すると、すぐにスサノオ様が動いてアマテラス様の右腕を掴んだ。そして顎を少し持ち上げた後、ニヤリと笑う。

「残念だったな。……俺様は姉ちゃんの事なんてこれっぽっちも好きじゃねぇんだ」

 ズバッと言い放ったスサノオ様の言葉に、アマテラス様は目を見開いた。目からは涙が溢れ落ちる。

 まずい。アマテラス様とスサノオ様のやり取りを見ていた神様たちは思った。アマテラス様が涙を流せば、人間界は雨が降る。しかも、先ほどまでアマテラス様は笑っていて人間界も快晴だった。しかし、いきなり雨が降れば人間界でのアマテラス様の評価もガタ落ち。伊勢神宮の参拝者が減るかもしれない。

 何て、ほとんどいらぬ心配をしているに等しい神様たちをそっちのけで、スサノオ様はアマテラス様に口づけした。

「っ……!」

「バーカ、何泣いてんだよ。……俺様の気持ちは、好きじゃ収まらねぇって言ってんだ。……愛してるぜ、姉ちゃん」

「っ!馬鹿はどっちよ……っ!私も、スサノオの事愛してるんだから……!!」

 そうして2人は微笑みあった後、もう一度口づけをする。

 傍観者の神様たちは目の前で何が起こっているのかさっぱりで、何度も瞬きを繰り返している。そんな中、今まで黙っていたツクヨミ様が動いた。素早くアマテラス様の背後にまわったツクヨミ様は、アマテラス様をお姫様抱っこする。

「きゃっ!? ツッツクヨミ……!? 何するの!?」

 いきなりの事に驚くアマテラス様。ツクヨミ様は優しい笑みをアマテラス様に向けて口を開いた。

「何って、僕は姉上様の事が大好きなんです。頭の悪い脳筋のスサノオには渡せませんよ。

姉上様に相応しいのは、インテリ学級委員長タイプであるこの僕です」

「手前、ツクヨミ……! 姉ちゃんを離しやがれ!!」

 スサノオ様は何処からか八岐大蛇やまたのおろち退治で使用した天羽々斬(あめのはばきり)を取り出して振るう。

 アマテラス様をお姫様抱っこしたまま斬撃を華麗に避けるツクヨミ様。それを見た女神様たちは黄色い声を上げるが、スサノオ様は舌打ちした。

 スサノオ様は剣を構え直し、ツクヨミ様を睨む。

 ツクヨミ様はどんな攻撃が来ても回避できるように身構えた。

 本格的に争いの気配が膨れ上がってきた高天原。

 アマテラス様を巡って、ツクヨミ様とスサノオ様が今にもぶつかり合いそうだ。

 しかし、そこへ乱入者、否仲介者が現れる。

 アマテラス様、ツクヨミ様、スサノオ様を生んだ父神様であるイザナギ様が騒ぎを聞きつけてやってきたのだ。

「こらこらこら!! お前たちは一体何をしてるんだ!? これからは仲良くするんじゃなかったのかい!?」

 そう。イザナギ様の言う通り、アマテラス様たちは今までの過去を全て清算して仲良くすると誓った。故に、高天原から追放していたツクヨミ様やスサノオ様がここにいる。

 辺りが静まり返った。

 そんな中で、アマテラス様はイザナギ様を見ると深いため息をつく。ジトーッとした目をイザナギ様に向けていた。

「もーっ。お父様、邪魔しないでよっ。折角、仲直りするためにアーちゃんが考えた劇やってたのに!!」

「げっ劇ぃ!?」

 イザナギ様はオーバーなリアクションをしながら言う。ツクヨミ様、スサノオ様はコクリと頷いた。

「あぁ。本当はやりたくなかったんだけどよ、姉ちゃんがどうしてもって言うから」

「仕方なく、付き合っていました」

 本当はやりたくなかったと遠回しに言いながらツクヨミ様はアマテラス様を下ろし、スサノオ様は剣を仕舞う。

 詳しく話を聞けば、アマテラス様はツクヨミ様とスサノオ様を高天原から追放した事に対して後悔していたらしい。本当はツクヨミ様とスサノオ様の事が大好きであったのに、その場の勢いに任せて追放してしまった。そのため、ツクヨミ様とスサノオ様から嫌われているとも思ったようで、仲直りをしようと劇を考えたのが昨日。早速今朝台本を渡して、劇をスタートしたんだとか。

 全てを知ったイザナギ様は大層疲れたような顔をしてからゆっくりと口を開いた。

「……うむ。諸々の事情はわかった。でもな?これからはせめて、そういう事をパパに伝えてからやってくれないか?じゃないと、パパ焦るから。折角隠居して穏やかな生活を送ってるのに、気が休まらないんだよ。……いいな?」

「はーいっ」

「かしこまりました」

「おう」


 高天原。そこは八百万の神々が集う場所として知られている。今日も多くの神様が雑談をしたり、人間界を見ていたり、仲良くなるために劇をしたりしていた。

人間界は、晴天だ。


勢いで書いてしまった短編ですが、ここまで読んでくださってありがとうございました!

連載の方もよろしくお願いいたします!!

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