第1話 ドタバタな毎日とGWデート計画
あれからもドタバタした毎日が続いている俺の学園生活。
可愛い彼女が4人も出来て嬉しいはずなのに、相変わらず昼休みにしかイチャイチャ出来ない。どうしたものかと悩んでいた…
帰りのホームルームのことだった。
「さて皆さん、来週からゴールデンウィークが始まります。」
ん?
「この学園では、9日間連休になりますが藍西学園の生徒として恥ずかしくない行動をしてください。」
何…だって?!
「それでは、ホームルームを終わります。皆さん気を付けて帰りましょう。」
「起立。」「礼。」
「「「「「先生さようなら。」」」」」
ガタッガタガタガタ…
一斉に席を立つ音がする。嫌な予感が………
「えっと…」
おそるおそる振り向くと、クラスの皆が満面の笑みでそこにいた。
「ねぇ!ねぇ!鹿倉くんはゴールデンウィーク時間ある?」「私、映画のチケットもらったんだけど、一緒に…」「私この間美味しい店見つけたんだよ!私たちと一緒に…」「今月のお小遣い余っててさ、奢るから私たちと…」「学生の本分は勉強だもんね。私たちと一緒に勉強しよう!いい場所あるん…」「勉強よりも部活の方が健康的だよっ!私、今度試合に出るんだけど、応援に…」「私たちとカラオケ行こう!」
怒涛のお誘いが来た。
「ちょ…ちょっと待って…。」
「ちょっと皆!貴司が困ってるじゃない!」
紫苑が声を上げた。
「そうよ!」「そうね!」「そうです!」
琉卯、唯、華も同調する。
「それにゴールデンウィークは私たちと予定があるの!」
とさらに続ける紫苑。
え?予定なんかあった?と思ったけど、ウィンクしてきたので何となく察した。合わせろってことだな。
まぁ、いつかの昼休みに邪魔された意趣返しもありそうだけど。
「ブーブー!」「横暴よ!」「誘うくらいいいじゃない!」「チケットぉ!」「鹿倉くん~!」
「皆、せっかく誘ってくれたのにごめんね。俺たちまだデートすらしてないんだ。初めてのデートだから…」
「「「「「……………」」」」」
「そういうことなの。だから諦めなさいよ。」
「「「「「……………」」」」」
「で、でもっ!な、夏休みは皆で何かやろうねっ!」
クラス全員の顔がパァっと明るくなった。
「夏休み!」「約束だよ!」「チャンス到来!」「ダイエットしようかな!」「夏、それは男を大胆にする季節…」「負けないからね!」「夏かぁ…」
よ、良かった。俺のひと言で皆が解散してくれた。
「良かったのですか?」
と華が聞いてくる。
仕方ないじゃないか。クラスの女の子全員にあんな暗い顔されたら断れないよ。正直、約20人に暗い瞳で見つめられたら怖かったというのもある。
「うん。クラスの皆とは仲良くしたいし、いつか全員で遊びに行きたいと思ってたから。」
「そうですか。」
聖母のような笑みをつくる華。
「それじゃ、帰りましょ!」
「私も~!」「私も!」「私もっ!」
紫苑、唯、琉卯、華以外にも同じ方向に帰るクラスメートが手をあげた。
昼休みは俺と4人の時間という協定が結ばれているのだが、他の時間は関係無いので一緒に帰る女の子がいる。
ただし寄り道は校則違反なので、良い子ちゃんの多いAクラスは一緒に帰るだけだけど。
教室を出ようとすると、廊下にもホームルームが終わった生徒が教室の扉を塞いでいた。
「えー………。」
通せんぼじゃないですか。毎度ながら懲りないなぁ…
ピィーーーーッ!!いつもの笛の音が響いた。
「やばっ!」「風紀委員だ!」「逃げろっ!」
廊下にいた生徒たちがゾロゾロと移動する。
「こらぁ!あなた方ぁ!Aクラスの帰り道を塞ぐのはやめなさいっ!!」
注意する声、Bクラスの女の子たちだろう。彼女たちは惜しくもAクラスになれなかった人たち。
Bクラスには数名の風紀委員を選ぶよう決められているが、率先してなっているようだ。何故なら、担当する場所がAクラス近辺、BクラスでもAクラスの男と接点が持てるからである。
「ありがとう。中里さん。」
「え?!………は、はいっ!風紀委員の仕事なのでっ!」
ポッと顔を赤くする中里さん。
Bクラスの中里瞳さん、風紀委員の一人で短いツインテールの女の子だ。Bクラスの中でも特に風紀委員の仕事を頑張ってくれている。
「えへへ…また、話しかけてもらったよぅ。」
手を顔に当てて、嬉しそうにはにかむ中里さん。
なんか従順なワンコみたいで可愛いから、ついつい構ってしまうんだよな。
ナデナデ…
我慢できず、頭を撫でてしまう。
「ふ、ふみゅぅ……」
「可愛いなぁ…」
「コホン…」
周りの彼女たちに無言の注意を受ける。
「ご、ごめん。」
「別に…」
紫苑にツンとされてしまった。唯も琉卯も華も拗ねた顔。
これ以上機嫌を損ねる前に帰ろう。
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━━━同日、夜。
ゴールデンウィークの予定を話し合うことにした俺たちはスカイピで話し合う事にした。
「もしもし。こんばんは。」
『もっし~。』
一番に着信が来たのは唯だった。
『もしもしぃ。えへへ…何か楽しいね♪』
とすぐに琉卯が来た。
『もっ…もしもしっ!』
『紫苑うるさいし。』
『し、仕方ないじゃない!声だけって緊張するのよっ!』
次に来たのは紫苑だ。
「華はまだかなぁ…」
『時間かかるんじゃないかしら?』
『確かに~。』
『華ちゃん機械苦手だもんねぇ。』
『心配だから華にメールしとくね。』
『私もしてみる。』
───10分後。
『あれ?これですか?ん~…』
「あははっ…」
『あっ!貴司さんですか?』
「そうだよ。」
『よ、良かったぁ…やっと繋がりました…。』
「待ってたよ。」
華は機械が苦手なのだ。携帯も最近まで覚えるのが大変だったとか。
「全員集まったし、デートの場所を決めよう!」
『待ってたし!』『わ~っ!』『楽しみね!』『ワクワクします!』
「皆、どこに行きたい?」
『せっかくの休みなんだから、遠出したいわね!』
『うんうん!』
『私は貴司さんとならどこでもいいですよ。』
『どうする~?』
『遊園地とか?』
「いいね。」
『楽しそ~♪』
『でも遊園地ってどこにあるんです?』
『最近出来たとこあるじゃん!』
唯が画像をアップする。
『華、画面に出てきた文字をタッチして。』
『こ、これですか?』
フォローする紫苑。
『出ました。藤久ベリーランドですか?』
『知ってるぅ!』
『へぇ、本当に出来たばっかりなのね。』
「面白そうだし、いいんじゃない?」
『じゃあ、いつにする?』
『う~ん。貴司くんに合わせる。』
『そうね。私もそうするわ。』
「え?大丈夫?」
『『『『うん!』』』』
「それじゃあ、来週の月曜日とかどう?」
『『『『うん。』』』』
「じゃあ、決まりだね。どこで待ち合わせする?」
『駅にしよう?』
『そうね。』
『また、痴漢にあったら大変だし。』
『駅まで迎えにいきます。』
「ごめんね。」
『気にしないで!』
『本当は家まで迎えに行きたいとこだけどね。』
「いや、それはまだ…ごめん。まだ、家族には…その…」
言えてない。恥ずかしいとかいう訳じゃない……姉さんが…
『いいのいいの。気にしないで!』
『男親は厳しいし。』
「う、うん。」
変な虫がつかないよう男親は厳しい。この世界の常識だ。
俺には理解不能だけど。
『遊園地………グス……』
『どうしたの紫苑ちゃん?』
『わ、私が恋人と遊園地に行ける日が来るなんて思ってなかったから…』
『それを言ったら私だって…』
『私もだし…』
本当にこの世界の女の子はネガティブだなぁ。
「一緒に楽しもうね!」
『『『『はいっ!』』』』
その後もデートが楽しみで話が止まらなかった。
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(続く)
全部で8話です。意外と長くなってしまいましたので、短編では無く8話構成に致しました。
いろいろツッコミどころ満載ではございますが、何卒、皆様の深いお心でお許しください。