執事とはいつ如何なる時も平静でなくてはならぬのです
下ネタです。お嬢様暴走します。
好き勝手書いてるので大目に見てくれると有り難いです。
我が家の重い家訓の中に、執事とはいつ如何なる時も平静でなくてはならぬ、というものがある。
これは数ある家訓の中で比較的お優しいものだ。
でも、だからってこれはないんじゃないか?
「本日はお越しいただきありがとうございます。ラインベルト様。」
「いえいえ、見目麗しいアルメリア様にお会いできるなら何のそのだワン!」
私の眼の前には身長130センチの少年がいた。
そう、少年だ。
しかも犬耳付き。
…ラインベルト様、人間じゃなかった…
可笑しい、こういう話は予め回ってくるものだ。
ラインベルト様、というかナーシサス公爵家は辺境の地にあり滅多に表舞台に出てこない。
おかげで勉強しようにも家の成り立ちなどの資料が乏しく場所や特産物程度の情報しか分からなかった。
そんな家が何故公爵という爵位が与えられているのか不思議で仕方なかったのだが、獣人だったからとは。
我が国クリンセム王国は獣人との共存を推し進めている数少ない国である。
街には獣人が当たり前のようにおり、人と同じような生活している。
昔は差別が根強かったにも関わらず初代国王が差別を無くそうと奮起したのには理由がある。
彼の盟友が獣人だったからだ。
彼の自伝にこんな一節が記されている。
ともに戦い、ともに笑い、ともに歩いた我が友は獣人だ。
だか、それがなんの関係があるだろうか。
我々と同じように息を吸い、大地を踏みしめ、愛し合って生きている。
我は彼らと手を取り合って生きていきたい。
この決意の元彼は差別をなくすため奔走したのだ。
公爵という爵位は王族に近しいものにしか与えられない。
つまり、ナーシサス公爵家は王族に近しい訳だ。
そしてここからは憶測だが、その初代国王の盟友の獣人の先祖がラインベルト様に当たるのでは?という事に思い至った。
ラインベルト様を客間に案内する間に考えたことだ。
私頑張った。
もし、そうなら父がこの事を知らないはずが無い。
何も言ってこなかったのでオーキル家恒例行事、抜き打ち珍客テストが行われている。
定期的にやるこの抜き打ちテスト。
焦って失敗すると初心に帰れー!と執事になろうブックVol.1からVol.152までの長編教科書の書き写しをしなければならない。
落ち着け、私、餅つけ、わた…違う落ち着くんだ、私。
あの延々文字を追いゲシュタルト崩壊を起こした苦痛の日々を思い出すんだ。
いつの間にか変な術式を書いていて悪魔を召喚しかけたあの日々をっ…!
……実は成功しててお嬢様のぬいぐるみに乗り移ってたりして夜な夜な動いてるだなんて知らないっ…!
「今日はラインベルト様に喜んで頂けるよう、アルメリアお嬢様と思考を凝らした食事会を準備致しました。」
「ほう、アルメリア様とですかワン。楽しみだワン!」
くそぅ…わしゃわしゃしたい、撫でたい、モフモフしたい、誘惑が、誘惑がーーー。
私の理性耐えろ、耐えるんだ。
大っきな尻尾が揺れているが我慢だ。
これは罠だ。
引っかかったら文字地獄が待ってるっ…!
「アルメリアお嬢様、ラインベルト様がおいでになりました。」
「ほぅ…美しいワン…」
私もお嬢様の見た目だけは認めてるからな。
当然だな。
今日のお嬢様は瞳の色と同じ桃色のゆったりとしたワンピース。
…アイリス姉さんの気合の入りようが垣間見えるな。
「お嬢さ「ハァハァハァハァ、ケモミミ、少年、ふわああああ〜」
一瞬で猫かぶりが取れたーー。
失念していた。お嬢様は百合ショタロリコンを極めに極めた変態だった。
ヤバイ、よだれ垂れてる。
なんかクネクネしてる。
手がワキワキしてる。犯罪者だ、性犯罪者がいる。
「お嬢様、落ち着いて下さい。」
「ちょ、退きなさい、シラン!私にそのプリップリの青い果実を食べさせなさい!」
「何を仰ってるのですか!食べるって何するつもりですか!」
「そんなの決まってるじゃない!ベットに行って二人のめくるめく愛を確かめ合うのよ!あ、シランもど〜う?3ぴ「アウトです、お嬢様!貴方は何処でそういう言葉を覚えてくるのですか!」
「月刊少年少女楽園からよ!」
「な、その雑誌は私が全て撤去した筈っ…!」
「ふっまだまだね、シラン!私にはロータスという心強い味方がいるのよ!」
「あんのエロ庭師!」
後で肥溜めに顔面突っ込んでやるから覚悟しろ、ロータス。
「君たちは賑やかだワン!」
「は!」
「や〜ん、ラインベルト様は可愛いわね〜。」
「アルメリアお嬢様には及ばないワン!」
「きゃー!お上手ね、可愛い!」
ラインベルト様、いつの間にテーブルへ!
この男デキル!ってそうじゃない!
お嬢様の魔の手がラインベルト様に!
「お嬢様!イエス鑑賞、ノータッチです!」
「馬鹿言ってんじゃないわよ!イエス少年、ゴーセッ○スよ!」
「犯罪ですよ!ラインベルト様逃げてください!!!」
「なんでだワン?可愛い女の子から逃げるなんてありえないワン!」
「これが可愛い女の子!?見た目に惑わされないでください!中身は変態のおっさんですよ!」
「フフフフ、さあ、ラインベルト様ぁまずは服を脱いでぇ…それから、ハァハァハァハァ」
お嬢様、手が早い!
すでに服に手をかけるなんて!
お、終わりだーーー客人の貞操一つ守れないなんて…!
「…何をしていらっしゃるのですか?」
「あ、執事長。」
「え!?なんでヒスイがここにっ…!今日は準備が終わったらお父様の仕事の付き添いで出掛けるって!」
「…ええ、そのつもりだったのですが、アイリスが緊急連絡装置を起動させましたので…」
あ、アイリス姉さんっ…!さすがです!
これで危機は去ったっ…!
「あ、シラン、お前は後で勉強ですからね?」
おかえり、危機、グッバイ、平和。
「申し訳有りません、ラインベルト様。お見苦しいところをお見せしてしまって…」
「いやいや、賑やかで楽しいワン。そちらの子も優秀な執事さんだワン。」
おお!もっと言ってやってください、ラインベルト様!
そう、今回の件私は悪くない!
げ、すっごい睨んでる。何々…お嬢様の強行を止められなかったのはお前の責任だ。…そんなぁ…
お嬢様の強行を止められる猛者なんていないだろう…。
「ありがとうございます。まだまだな未熟者ですが、そう言ってもらえると幸いです。」
「あのう、ヒスイ?私、ラインベルト様と二人っきりに「何かおっしゃいましたか?お嬢様?」いえ、なんでもないわ!」
さすが、執事長だわー。
私とお嬢様専属執事変わって欲しい。
いたわ、お嬢様の強行を止められる猛者。
「それでは、食事会といたしましょう。」
その後はなんとか和やかに進んだ。
何度も手を出そうとするヘンタイを執事長が睨みつけ抑え、和やかなのはラインベルト様だけだったような気がしたが食事会という名のお見合いは終わった。
しっかりお土産を渡してお帰り頂いた。
「私、あの方と結婚するわ!」
「ラインベルト様が危ないので今回の話は無しにするそうですよ。変態は受け取れないそうです。」
「な、なんですって!?」
「おめでとうございます、記念すべきお見合い100回失敗!!!」
「どこにおめでとうのポイントがあるのよ!」
「無いですね…お嬢様が嫁いでくださらないと私まだ貴方に仕えないといけないんですから。」
「貴方どんだけ私の専属止めたいのよ!」
「お嬢様の専属止めたい欲求はとどまるところを知りません。」
「もういいわ!」
プンスカして出て行くお嬢様。
ん?通信用魔道具から…
「…シラン…」
「あぁ、ホリー兄さんですか。どうなさいましたか?」
「…ラインベルト様に出したスプーンが…」
「無いんですか?」
カラン
「…お嬢様、今落としたものはラインベルト様にお出ししたスプーンのような気がしたのですが…」
「き、気のせいよ!私のよ!そう、私の!」
「……使用済みの食器や日用品を集めるのはやめなさいと言ったでしょう!!!!」
「きゃあ!!!ちょ、そんな怒らなくたっていいじゃない!ああ、でも、怒ってるシランもいいわっ!」
「お嬢様成敗!!!」
お嬢様と書いてヘンタイと読みますbyシラン