表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
満開お嬢様と毒咲き執事  作者: 甘雪
3/5

呪われたIPO事件〜あの日の悪夢、私は死を覚悟した〜




そう、記念すべき100(・・・)回目のお見合いだ。



すでに99回も失敗している猛者、それがアルメリアお嬢様だ。



初めてのお見合いは7歳の時。



7歳というのは貴族の子息令嬢にとって大切な年である。


社交界デビューがあるからだ。

7歳の誕生日会は他家へのお披露目として認識されている。



公爵家であるリリウム家の長女アルメリアお嬢様の誕生日会はそれはもう盛大に催された。

他国からも来客がある程に。



私もその日は目が回るような忙しさだった。

人手が足りず屋敷の掃除に駆り出され、料理をサーブし、お嬢様が脱走したので確保に向かい……最後のはどう考えても要らない仕事だな。



とにかく、大勢の方がアルメリアお嬢様の誕生会に足を運んだ。

美しいとされるご令嬢や見目麗しいご子息などなど。




そんな煌びやかな空間の中、アルメリアお嬢様は登場した。



あの時のことは忘れられない。



しんと静まりかえる会場。

一斉に集まる視線。

誰もがアルメリアお嬢様の美貌に目を奪われた。



それほどまでに美しかったのだ。



瞳の色と同じ桃色のドレスから覗くきめ細やかな肌、淡く色づいた頬、7歳とは思えぬ微笑をたたえた小さな口、美しくたなびく黄金の髪。


若干7歳にして完成された美貌…いや、これからもっと美しくなるであろうアルメリアお嬢様、しかも国のNo.2の宰相様の娘、誰もがロックオンしたよ、ああ。




本当に忙しいのはそれからだった。



毎日のように恋文が届き、門前に押しかけ、贈り物(ゴミ)が部屋に溢れかえり、お嬢様が脱走した為誘拐されたり……最後の関係ないな。

0歳の赤ちゃんを連れてきた方も来たこともあった。もうどうしろと。




ただ、アルメリアお嬢様のガードは硬い。

親バカと名高い旦那様。

縁談話を千切っては投げ千切っては投げ。

断り続けた。



だが、旦那様にも断れない話がある。

自身と同じ公爵家若しくは公爵家に限りなく近しい侯爵家、自身より偉い王族とか。



ある日、来てしまった。

国王の一人息子、つまり次期国王、この国の第一皇子との縁談話が…。

まだ7歳だから、と断れない。貴族ではその年で婚約を結ぶこともある。



その日、旦那様の執務室からは無念の咆哮が聞こえたという……。




第一皇子と同い年という事もあり日取りはあっさり決まった。

会場はなんと王宮。

場所が入ったことのない未知のものだと知り、お嬢様が当日脱走することはなかった。



その時、何故か私も同行することになった。

全力で拒否した覚えがある。

王族の前で粗相をしたらリアルでクビが飛ぶという家訓があったからだ。

…今も信じてはいるが…。

その頃はまだ、一人前とは程遠かったし緊張で失敗してしまう可能性もあった。

頭が飛ぶんじゃないかという程クビをブンブン振り拒否した。が、その願いは聞き入れられることはなかった。

ワガママお嬢様に屈した瞬間である。





迎えた当日。

懐かしきお嬢様のお見合い失敗伝説の始まりだ。



まず、国王様と王妃様、旦那様、奥様を交え6人で談笑。

私と父、母もその場にいて王族相手にお茶を注いだりしていた。

私が人生で最も緊張した。

本来なら王宮に仕えている使用人がやるべき事などだが、うちの両親は国王様や王妃様を唸らせるほどの腕らしく呼び出され茶会を開くこともしばしば。

この時もそれの延長として、私達がサーブすることになったのだ。

両親の腕の良さを恨んだよ。




お嬢様は外面だけは抜群にいいので第一印象は問題なかったろう。

第一皇子、シスル=ギィ=クリンセム皇子は素晴らしい方だと思った。

私とお嬢様と同い年でありながら落ち着いていて、将来国は安泰だと安心した。

シスル皇子であればお嬢様の手綱をしっかりと握ってくれるだろうとも。



緊張で意識が吹き飛びそうになる中そんなことを思った。





そして、その後予定通り二人っきりにすることになったのだが……。

旦那様が男と二人っきりになぞできん!と言い放ち、私も同行することに。



旦那様の顔面に■■■■■■して、■■■■たら、ケツに■■■■■■■■したい衝動に駆られた。



父と母の視線を感じ自重したが。



別室へとシスル皇子がお嬢様をエスコートし、私はその後ろに付き従った。


あはは〜うふふ〜といった感じのゲロ甘な空気を感じた。

今思えば上辺だけだったのだろう。

実際、お嬢様は慣れないヒールと王族特有の威圧感に疲れていた。


私は両親と国王夫妻の視線から解放され、少し気が抜けていた。



だから、あの時お嬢様を止めることができなかった。




それは一瞬のことだった。


お嬢様の右足首がおよそ90度に折れ曲りシスル皇子目掛けて転んだ。


最悪なことにシスル皇子のズボンを引っ掴んで。



そこからは御察しの通り皇子のズボンをずり下ろしてお嬢様は床に顔面をぶつけた。



忘れもしない、皇子のパンツ。



ピンク色の下地にイチゴが描かれたイチゴパンツだった。


がっつり見てしまった。


脳が今しがた起こったことを正しく認識するとともに私は死を覚悟した。


お嬢様は盛大に笑っているし、皇子はブルブル震えて先程までの優男っぷりを捨て怒鳴っているし。


咄嗟に音声遮断の魔法を使ったことは褒められるべきであろう。



私はとにかく死にたくなかった。ので、皇子を脅した。


今回のことは他言無用にしましょう。

お嬢様の口止めは私がしっかりしておきます。

言いふらされたくなかったら、私の仕事っぷりを私の両親の前で褒め称えて下さい。と。


最後のはちょっと欲が漏れ出た。

皇子が褒めてくれたら小遣いが増えると思ったから。

案の定増えた。ウェーイ。



これが、呪われたI(イチゴ)P(パンツ)O(皇子様)事件の全貌だ。



ちなみにシスル皇子とはその後も親交があり、お見合い失敗99回の内50回ぐらいは皇子とのお見合いだ。

しかも、なんだか知らないがやたらと突っかかってきて喧嘩を売ってくる。

もちろん買ってるが。

お見合いというよりただ遊びに来てるだけのような気もしないでもないが、周りの認識はお見合いだ。

巷ではストロベリーフラれ皇子というアダ名が流れていたりする。(私が流した訳ではないぞ?決して、多分。もしかしたら口が滑ってしまったかもしれない。)



それから、皇子以外のリリウム公爵家と親交のある家とのお見合いを重ね、当日ドタキャン、相手の家半壊、プライドへし折り、お嬢様のお転婆に幻滅、などの理由により、99回という華々しい数字を打ち立てたのだ。


私としてはさっさと結婚して家を出て行って欲しいのだが、なかなか上手くいかない。

皇子も遊びに来るんだったら、ついでにお持ち帰りしてくれ。返品は受け付けない。



ふぅ、今回のラインベルト様が持って帰ってくれないだろうか。ウチの変態お嬢様を。




変な噂を聞いたことがあるが成功して欲しいものだ。




˚˙༓࿇༓˙˚˙༓࿇༓˙˚˙༓࿇༓˙˚˚˙༓࿇༓˙˚˙༓࿇༓˙˚˙༓࿇༓˙˚



おまけ



「懐かしいですね。あの時は死を覚悟致しましたよ。」

「何言ってんのよ、シラン。貴方見事なイナバウアー決めてぶほぁwぶふwwwって草生やしまくってたじゃない。」

「そんなこと言ったらお嬢様なんか、私のドレス今日は赤だからお揃いね!とか言ってあははは!って笑ってたじゃありませんか。」

「……シラン」

「今日のおやつをホリー兄さんに頼んでイチゴタルトにしましょう。」




この話をすると無性にイチゴが食べたくなる。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ