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ファースト・リトル・レディ 1

 瑠璃99の物語

101人の瑠璃 外伝2 

 〜〜ファースト・リトル・レディ〜〜


1.作戦開始

 古びたターボブロップエンジンの音が隙間風のように機内に入り込んでくる。 

 普段ならば航空便のコンテナ貨物が詰まっているカーゴスペースに居るのは6体の黒き装甲に身を包んだアンドロイド。いや、単にアンドロイドと呼ぶにはかけ離れた肢体。身長は2mを超え、腕は3対の異形。それでも腰から上はまだ人間に近かったが、腰から下、脚部は馬か鹿か獅子の如く4脚。まるで古き神話の半人半獣神の如き姿。その背と脇腹……もし競走馬ならば騎手が乗るあたりと両脇に厳つき金属の箱。その箱の中に武器の類が納まっていることは想像に難くない。総てを一言で言い表せば戦闘武器の権化の如き姿。

 それでも……その異形をアンドロイドと呼ぶ由縁は横顔。両眼を覆うゴーグルの下はさぞかし美しき瞳があろうと思わせる横顔は物憂げな美女そのもの。豊かな弾力を思わせる頬。形良き鼻筋。真紅の唇は思わず触れたくなるような魅力を香わせている。だが、反対側の横顔は黒き異形の仮面。ゴーグルの下に醜き目を思わせる数個のグラスに映る奥のレンズ達が深淵の彩りを放っている。その異様さはゴーグルを外した姿を想像したくも無い雰囲気を漂わせていた。


「ふー。何だよ。あのアンドロイド達は?」

 カーゴスペースの点検を終え、操縦室に戻った副操縦士が機関士と主操縦士に尋ねるともなく口にした。

「アレが噂の黒き戦闘アンドロイド『ワルキューレ』だよ」

「正式名称は『Ruri9』シリーズらしい。声をかける時は『Ruri9』と呼ばないと……」

 機関士が真面目な顔をして、片手の親指を首に当て真横に引いた。

 若き副操縦士は思わず目を見開き、自分の椅子に座り込んで自分の首を抑えて、身体を丸めた。

「ぎゃははは。そんなに怯えるな。アイツらの敵はオレ達じゃない」

「ま、暴れたらこんなボロ貨物飛行機なんぞ片手で捻り潰すだろうがな」

「アレが!? あの! なんで、オレ達が運んで……」

「……その質問は雇い主に言ってくれ。オレ達が頼まれたのはアイツらを載せて……」

 主操縦士は操縦桿を少し動かし、飛行進路を西に振った。

「……この先に在る雲の中に突っ込め。……だとさ」

「そうはいっても……雲なんて……」

 副操縦士の指摘は確かだった。夜とはいえ、二満月夜。これほど低高度で飛んでいても普段は感じられない眼下の密林、急峻な山地を覆う熱帯の木々も二つの月に照らされて視認できそうな明るさ。つまり、夜空には雲一つもない快晴夜……の筈だった。

「……え?」

 突然、正面の密林から旋風が空に駆け上がり、かき乱した空気がみるみるうちに濁っていく。

「えっ!? なんだぁ!?」

「ヒュー。言われたとおりジェット・ストームが現れたぜェっ! オレ達の雇い主は予言者かぁっ!」

「下らねえ事いってないで、しっかり操縦桿を握りやがれっ! 機関、全開っ! ギヤ(車輪)、ダウン。フル・フラップ、フル・エクステンション&ダウン(全展開)。最大揚力だぜェッ」

「おぅっ! おいっ! ボーヤ。ぼやぼやしてんじゃねぇっ! しっかり自分の身体をシートに括りつけろッ! あの下を抜けるぜェっ!」

「え? な、うをっわっ!」

 木の葉のように突風にあおられ、暴風雨の中で無造作に洗われ、副操縦士が気絶寸前となった頃にやっと貨物飛行機は暴風雨を抜けた。

「ぅえっ……ほふぅ……抜けましたね」

「ああ。ハードな嵐だったな。次はもっとマシな航路を行きたいねぇ」

「あ、そうだ。荷物を確認して来ます。う……ぇお……」

 吐き気を抑え、若き副操縦士が点検しに行くのを主操縦士と機関士は顔を見合わせて肩をひょいと上げて笑いあった。

「た、大変ですっ! 荷物が……アンドロイド達が居ませんっ! 荷室の扉が、あ、開いて……」

「気にするな。……というか、操縦桿の感覚で判らなかったんか? ん?」

「途中下車したんだよ。ほれ、特製の揚力計が遠の昔にカラだといってるよ」

 機関士が計器の一つを指差しながら荷室の扉を閉めるスイッチを入れたが何も反応は無かった。

「ちっ! お客さん達は操作レバーを『遠隔』に戻しちゃくれないか」

 軽く舌打ちをして機関士が荷室へと出ていった。

「えっ!? でも、いいんですか? 運ぶように頼まれ……。どうして落着いているんですかっ!?」

 主操縦士はニヤニヤと笑いながら自動操縦のスイッチを入れて操縦桿に足を乗せパイプに火を点けてから若き副操縦士にいった。

「いいか? ボーヤ。オレ達は『荷物を積んで密林の上で嵐を突き抜けろ』といわれたが、『荷物を届けろ』とはいわれてはいない。だろ?」

「そういう事だ。ボーヤ。ヤバい仕事は『内戦状態の国の上空を通過しろ』ってあたりで気づくんだな。契約金も良過ぎたろ?」

 戻って来た機関士が計器をチェックしながら若き副操縦士を諭した。

「えっ? え!? ヤバイ……仕事?」

「ぎゃはははは。その事は明日からのバカンスでじっくり教えてやるよ」

 古い貨物飛行機は二つの月明かりの下、空の端でくるりと回って闇へと紛れていった。


 密林の中。低空からとはいえ、アンドロイドとしては巨大な肢体を無傷で着地させるにはパラシュートの力を必要とした。だが、瑠璃9達の身体は余りにも重い。通常の規格のパラシュートでは無理。しかし、突風に伴う嵐の中の無造作な上昇気流が彼女達を密林の腐土の上に無地に着地させた。まるで、奇蹟の如きタイミングだったが……

「(点呼)」

 脱捨てた水溶布のパラシュートが風雨に溶けていくのを安堵の息で見つめながらチーフらしきアンドロイドが仲間の状況を赤外線通信で確認し始めた。

「(瑠璃92。無事。装備、異常無し)」

「(瑠璃93。脚部、擦過傷。他に異常無し。装備、異常無し)」

「(瑠璃97。無事。装備、異常無し)」

「(瑠璃98。左第2椀肘関節に被衝撃、動作に異常無し。装備、異常無し)」

「(瑠璃99。……異常無し。装備、異常無し)」

 チーフらしきアンドロイドが瑠璃99と名乗ったアンドロイドの前に歩み寄り、半顔の仮面に飾られた瞳……事実、それらは各種光学センサーが埋めこまれ、今、こうして点呼中にも他のアンドロイドはあたりを探っている。……マルチ・アイで、瑠璃99の状況を再確認した。

「(瑠璃99。左第2腕が損傷している。……落着け。落着いて総てのセンサーの信号を再確認しろ)」

「(あ……。り、了解。瑠璃90チーフ。……左第2椀、上腕に亀裂。リペア・キットで修復可能。修復時間……10分と推定。移動中に処理可能)」

「(了解。瑠璃92、周囲状況は?)」

「(付近の生体反応……人間と思われるモノは皆無)」

「(現在位置確認。予定着地点より南に1.0km、西に1.5km地点と推定)」

「(位置確認了解、瑠璃98)」

 瑠璃90はゆっくりと全員と顔を合わせ、アンドロイドでありながら作戦の無謀さに思いを巡らした。

(できるのか? このメンバーで……)

 本来のチーフである瑠璃9、長距離砲撃が得意な瑠璃95、突撃攻撃に長けた瑠璃94、何より偵察、侵入を専門で行っていた瑠璃96が居ない。接近戦を得意とする瑠璃91が居ないのも不安の種だ。その5体のアンドロイドは先の作戦で損傷し、今は修理中で居ないのだ。

 それぞれの行動プログラムは自身のメモリーにもコピーされ、ここに居る他のアンドロイド共々、能力に差は無い。だが……コピーされていているとはいえ、瞬時の判断には心許ない。自身の得意とする行動を選択する、そのようにシステムが構築され、ここまで生延びて来た。生延びて来た以上、得意分野以外の戦闘には不得手となる。仕方のない事だ。

(市街地での作戦が連続したのが響いてるな)

 今居るのは、市街地戦を得意とする自分、瑠璃90と瑠璃92、瑠璃97。トラップ解除専門の瑠璃93。工兵としての実績しかない瑠璃98、そして……急遽、瑠璃9シリーズの一員として増員されたルーキーの瑠璃99。ゲリラ達と市街地では無い場所で戦うには不得手な機体だけ。それだけしかいない。

(……やるしかない。それだけは確かだ)

 自身の不安に言聞かせるように、瑠璃90は作戦の確認を行った。

「(これより敵陣地に乗込み、A.Kasa将軍を救出する。今この時より、指揮は瑠璃99に移る。以後は瑠璃99の指示に従う。瑠璃99、指示を)」

 他のアンドロイドは驚いた。本来ならば……瑠璃シリーズの慣例に従うならば、指揮は最も上位ナンバーである瑠璃90が執るはずだ。

 部下達のざわめきを眺めながら瑠璃90は瑠璃99に目配せした。

「(え〜と。みなさん。私は瑠璃9コピーとして造られました。今回の作戦についても瑠璃9の発案、瑠璃1により承認済みの指示書が私のメモリーの中にあります。適時、お伝え致しますので……宜しくお願いします)」

 ぺこりと頭を下げる下位ナンバーの瑠璃99に他のアンドロイド達は敬礼で応えた。呆れながら。

「(では、皆さん。万平連の指示通り、無線封鎖および敵陣地まで音声会話を遮断したまま移動します。到着予定時間は3時間後、夜明け直前です)」

 先頭に立つ瑠璃90の後ろに追従する瑠璃99、背中でアンドロイド達が短く、フィンガーサインを交えて会話した。

「(本当に戦闘専門アンドロイドか?)」

「(さぁな、瑠璃97。アンタはオーバーホールで帰ってただろ? 事情を知らないか)」

「(確か……頭部演算ユニットは瑠璃7達の予備。増設演算メモリーは瑠璃8のお古。行動選択および運動制御ユニットは瑠璃3達用の旧式ユニットを使っている。……筈だけど?)」

「(法律屋の頭脳に料理屋の記憶と鉄砲玉の選択ね……大丈夫か?)」

「(ま、メッセンジャーとしては上出来だろ)」

「(え?)」

「(メインチーフ、瑠璃9立案の作戦指示を伝えるだけだろ? 伝言係だよ)」

「(なるほどね。伝言屋でアタイ達と同じ戦闘機種……ま、瑠璃6達よりは)」

「(そうそう。アイツらときたら同じ戦闘専門機種だというのに、対人攻撃以外は全くダメダメだからね)」

「(そういうこと。それに戦うのはワタシ達。ルーキーの出る幕じゃないわ)」

「(そういや、ルーキーのデータアドレスネームは?)」

「(レギンレイヴ。サブネームは……リトル・レディだって)」

「(確かに『末妹』には違いないわ)」

「(ま、お嬢ちゃんのお手並み拝見ね)」

 6体のワルキューレ達は静かな会話を楽しみながら密林の奥へと姿を消した。


2.奇遇な英雄

 A.Kasa将軍は英雄である。

 この国……シグマ共和国にとって列強諸国の支配から独立を勝取った英雄として。だが、彼は独立を果したこのシグマ国に英雄として留まる事はできなかった。何故ならば……ほぼ同時に独立を果した隣国のデルタ国、諸王の連合国家のある王族の子息。諸王の王位を受継ぐ身であったからだ。

 英雄といわれる由縁はシグマ国内に在った列強、ゼータ国の軍事基地をシグマ独立戦線との共同作戦で壊滅させた事。だが、それも元を正せば自国デルタ国の独立を助ける為。それでも、その作戦がシグマ国の独立を宣言する重大な出来事であった。さらには、その戦果はA.Kasa将軍の才に拠る所が大きいことは誰の目にも明らかであった故にA.Kasa将軍は英雄となり、そしてシグマ国から追い出された。

 自国の独立を叫ぶ勢力にとって隣国人の英雄は好ましくはなかったのである。

 こうしてA.Kasa将軍は自身の国、デルタ国に戻り、受継いだ所領の王として、国王連合の諸侯の一人として安息の日々を過したのである。

 が、再び将軍は英雄としてシグマ国の民衆から求められた。

 長期に渡る内戦が、将軍の力を必要とさせた。幾度となく要請されては自らの軍隊を率いては反政府勢力を蹴散らし、時には互いに争う勢力を総て平定しては平和政府を発足させた。だが、その度に将軍に与えられたのは……小さな勲章と罵声。隣国に組込まれるのでは無いかと危惧する愚鈍な政治家達の追放の罵声だった。

 それでもA.Kasa将軍は黙って自国へと帰っていったのである。笑顔を民衆に残して。

 数十年の時が過ぎ、A.Kasa将軍の最後の遠征が静かに厳かに始まった。

 長年に渡る内戦の停戦交渉が、世界国家連合である万国平和連合の調停によって開始され、調印まであと一息というところで、A.Kasa将軍が調停の証人として要請されたのである。

 A.Kasa将軍は殊の外に喜び、調停の場、反政府勢力の中核都市へと僅かな手勢を引連れて向かった。

 だが……その道すがら、得体の知れないゲリラに急襲されたのである。

 和平調停への参加という事で、A.Kasa将軍を警護するシグマ国の軍隊が小数だった事が災いし、A.Kasa将軍の身柄がゲリラ達に奪われてしまったのである。

 即座に反政府勢力は自分達の行動では無いと声明を発表した。が、それが奇弁に過ぎないとの噂はすぐに立つ。万国平和連合も即座に将軍を解放する事を求めた。

 数日の緊張の後、さらに第3勢力が声明を発表し、混乱のるつぼに事態を陥れた。

 ラムダ自由共和国、シグマ国とデルタ国に国境を接する秘密主義の国、その国のゲリラ達が自分達の犯行だと声明を出したのである。


「(……それで、私達が要請されたという訳さ)」

「(どうして?)」

「(ラムダ自由共和国は世界中のテロリストやゲリラ達を支援しているという秘密主義の国。未だに御神託で政治を行っているいう得体の知れない国家。それでも……先の大戦で万国平和連合の勢力として軍隊が活躍した理由で特別な地位を認められている……からね)」

「(で、ラムダ国政府はゲリラの存在を否定している。シグマ反政府勢力も否定している。万平連……万国平和連合の仕業であるはずもない。シグマ国政府もする訳がない……判っているのはA.Kasa将軍が何者かに略奪されたという事だけ)」

「(で?)」

「(相手が誰かが判らないと、万平連も動けない。怪しいのはラムダ国政府とシグマ国の反政府勢力だけどね。噂だけじゃ大手を振って動けないという事さ。特に、ここ、ラムダ国内ではね)」

「(それで、私達が目をつけられた。平和維持軍として働いていたアンドロイドだけの軍隊が……という訳か)」

「(そっか、失敗したとしてもシラを切れる……という訳ね)」

「(それでも、私達だとはすぐに判るでしょ? 同型機種は私達だけ。他の国には存在しないんだから)」

「(それで、責任を取らされるのは……御主人様だけよ。アンドロイド運営万国法では所有者に総ての責任が追及されるから……ね)」

「(万平連は知らんふり……か)」

「(無駄口はそこまで。成功すれば何一つ文句は出ないんだよ)」

「(チーフっ! 聞いてたんですかっ!)」

「(そんなに赤外線信号を撒き散らかしていたらいい加減、気がつくよ。それに……今のチーフは瑠璃99。私じゃないよ)」

 密林の樹冠の下は以外に植生が乏しく、移動は楽だった。人間ならばそれでも移動速度は著しく低下するが、彼女達の4脚ユニットは密林の木々の間を滑るように移動させていた。そして、密林を抜けた所、崖上となった場所で大木に身を隠し、眼下の廃村に敷かれた敵陣を見つめている瑠璃99が居た。

「(チーフ様は何をなさっているのかね?)」

「(決まっているだろ。情報の確認。敵陣の配置と勢力の確認だよ)」

 顔の片側にある各種光学センサーを駆使して、事前に得られていた情報の確認を行う瑠璃99に仲間達の雑談は聞えない。

「(……確認終了。人員数の誤差、10%前後。武器数、武器種類の誤差……20%以内と推定。……他に確認すべき事は)」

 必死に脳裏に情報を展開し、伝達された状況を思い出す。

「(間違い無い。……間違い無いはずだ)」


3.作戦命令

「これで指示は終了だ」

「万平連から届いた情報も終了。こっちの低軌道偵察衛星で調べた情報も全部。矛盾している所はこっちで調べた方を信じて。全く、万平連の情報で使えたモノがあった試しは無いからね。それに何よ。このオプションの指示は? 今、説明してても矛盾だらけで論理処理回路がオーバーヒートしそうだわ。従う必要は全く無いからね」

「ありがとうございます。瑠璃9チーフ。瑠璃11参謀長」

「さ、参謀長!?」

 いきなり参謀といわれて銀糸で薄雪草を彩った白衣に身を包んでいる瑠璃1のコピー2、瑠璃11は面食らった。

「あ、あのね。私は瑠璃シリーズの中の解析と分析と行動支援を担当している瑠璃1シリーズの一員であって、軍事担当じゃないわよっ」

「でも、軍事部門の行動支援と分析でしたら『参謀』となると思いますけど?」

「う……。アンタ、急拵えで作った割には鋭いじゃない」

「そうですか?」

 小首を傾げる瑠璃99を見ながら瑠璃11は心の中(正確にはメモリー上で)溜め息をついた(溜め息をつく行動のシミュレーションを行った)。

(……やっぱり理屈屋の瑠璃7の予備を使うんじゃなかった)

「ははは。それでいい。オマエは我々軍事部門専用である瑠璃9シリーズ最初の作戦立案担当なんだからな」

「そうなんですか?」

 瑠璃99の無邪気な問掛けに瑠璃9は笑って応えた。

「ああ。最近は何やら現地対応が必要な作戦が増えている。私達は戦闘主体で行動を選択するように造られている。それでは損耗が激しくなるだけだ。私のようにな……」

 瑠璃9は視線を落とし自分の身体を見た。

 首から上だけが天井から吊るされ、首から垂れ下った各種チューブが剥き出しのフレームの機械に繋がれ、その先に辛うじて形を保っている腕が1本だけで戦闘の凄まじさを告げていた。

「胴体が吹飛んだのが何よ。頭部だけでも完全な形で戻って来ただけでもありがたいと思いなさい。頭が無かったら『再生』も出来ないんだからね」

「何にしても戻ってくれて助かったわ。これで万平連に対する発言権が増す事になるからね」

 不意に部屋に入って来たのは化学薬品で染みだらけの白衣の瑠璃1と地味なスーツをきっちり着こなした瑠璃7。

「おはようございます。ファーストナンバーズ様」

 深々と頭を下げる瑠璃99の仕草に瑠璃1は面食らってしまった。

「はぁ? なにそれ?」

「気にする事ないわ。私達、瑠璃1姉から瑠璃9までがファーストナンバー、それぞれのコピーがセカンドナンバーとしてグループ化してるのよ。この子達」

「んな、関係無いわよ。私達は全部、『瑠璃』なんだからさ」

「それより、こんなにも損耗が激しいのならば……それこそサードナンバーやフォースナンバー、いいえっ! この際、フィフスあたりまで量産しないと。いや、何より量産体制の確立が……」

「ストップ。それについては御主人様から指示を受けてるでしょ? 無闇に増えるなって。それぞれのコピーは10体まで。瑠璃2と瑠璃8は1体づつしかないからオリジナルの瑠璃姉ぇも含めて全部で80体まで。そして……」

 瑠璃1は振返って瑠璃99をみて、にっこりと笑った。

「あの子が80体め。だからサブネームが『リトル・レディ』なのさ。わかった? 法律屋さん」

 瑠璃1に窘められても瑠璃7は不満そうだ。

「その件については、もう一度、御主人様に苦言を言上するわ。絶対、絶対にそれじゃ……を維持できないもの」


 ニフティのFSFにUPしていたモノです。


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