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間違って召喚されたけど頑張らざるをえない  作者: 佐々木尽左
8章 魔王軍との激突

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支援部隊への参加

 霧雨が降る中、各傭兵集団の代表者が聖騎士団本部の天幕前に集まっている。聖騎士団が率いてきた傭兵を陣地の外で野営させていることから、一瞬ぞんざいな扱いをしていると思った。しかし、集まった人数に対して天幕は明らかに小さいので、単純に中に入りきらないからだろうと思い直す。

 傭兵の人数は大体30人くらいといったところか。これが全員隊長なんだとすると、傭兵は一体どのくらい連れて行くんだろうか。純粋な傭兵部隊ならたくさん連れて行くだろうし、ライナスのような冒険者のパーティリーダーなら多くても5人くらいだろう。


 「ちっ、早く話をしろってんだ」


 ライナスの近くにいた巌のように大きな男が、霧雨で濡れた顔を鬱陶しそうに拭いながら呟いた。聞いていて気分のいい独り言ではなかったが、集められた傭兵は大なり小なり同じ思いだろうな。

 しばらく待っていると、天幕から鎧を着た聖騎士が現れる。あれは確か、ケイス副官だったな。真面目な性格の通り、きっちりと鎧を着ている。


 「諸君、私はデミアン・ケイスである。今回の支援部隊を指揮することになった。そして、今からその説明を行う」


 という言葉から、ケイス副官による説明が始まった。

 それによると、ここから北東へ約50オリク行ったところにある王国軍の陣地が魔王軍の襲撃を受けたらしい。そして、結構な被害を受けたが幸い撃退することができたそうだ。ただし、将兵の補充を受けるまで戦力に不安があるので、一時的にそちらへ向かうことになったという。


 「尚、向かうのは我が聖騎士団から10名、諸君ら傭兵から約150名である」


 ケイス副官は淡々と事務的に説明してゆく。うーん、この兵力、多いのか少ないのかわからんなぁ。


 「王国軍からは兵力を割かないのか。言うほど酷い損害じゃないのか、逆にこっちも余裕がないのかわからないだろ」


 そういえば、支援部隊として出るのは聖騎士団とその傭兵部隊からだけなのか。確かにジャックの言う通り、手持ちの情報じゃ判断できないな。


 「聖騎士団はそれだけ頼りにされてるってことなのかな?」

 「王国軍は便利屋として使うつもりかもしれないだろ」


 まぁ、王国軍に比べたら兵力はずっと少ないし、主力にはならないよなぁ。でも、王国内でも無視できない勢力である光の教徒の戦力を、そんなぞんざいに扱うものなんだろうか。その辺の政治に関してはさっぱりだな。


 「……以上である。何か質問はあるか?」


 ケイス副官が目の前の傭兵に質問を促すと、報酬や不明点についての質問が出てくる。俺としては特に関係のない話なので聞き流しているが。

 しばらく質問が五月雨式に出ていたが、それもしばらくするとなくなる。


 「他に質問はないか? ないなら、これで解散とする。出発は明日の早朝、集合場所は陣地の北側だ」


 頃合いを見計らったケイス副官は、最後に集合時間と集合場所を再度言うと天幕に戻っていった。


 「さて、俺達も戻ろうか」

 「はい」


 説明会が終わって自分のテントに戻ってゆく傭兵と一緒に、ライナスとジャックは仲間のいる方向に向かって歩いて行った。




 翌日の早朝、小雨の降る中、ケイス副官を隊長とした約160名の支援部隊が陣地を出発した。傭兵が中心なので雑多な感じのする集団だ。当然、規律正しい行軍など期待できない。イーストフォートから行軍したとこもそうだったが、歩いているときはやたらと集団が間延びするのに俺は驚いた。


 「そういえば、ジャックは魔族と戦ったことはあるのか?」

 「ああ、とんでもなく強かっただろ」


 行軍中、特にやることもないのでライナスはジャックに聞きそびれていることを質問した。


 「そうよねぇ。特に空を飛び回るから厄介なのよね!」


 ああ、いつぞやの隊商護衛のときに出会った全身鎧も飛んでたよなぁ。ドリーの憤りを聞き流しながら俺はかつての出来事を思い出す。


 「魔族ってみんな空を飛ぶのか?」

 「鳥みたいなの以外はみんな魔族だったよね、姉さん?」

 「あんたいい加減すぎよ。確かに人型で飛んでいたのは魔族なんだろうけど、飛んでいない魔族もいたでしょう。わたし達が戦ったのは飛んでない方よ」


 ドリーとメイが記憶を引っ張り出しながらバリーの問いに答えた。

 そういえば、オフィーリア先生が移動するときは歩くよりも宙に浮いている方が多かったなぁ。


 「魔族って肌が白くて髪の毛が黒いって本当なのかしら?」

 「そうなのよ。まるで病気してるみたいにね。あれで肌の色がもっと健康的だったらよかったのに。魔族ってみんな美形だから惜しいのよね」

 「あんたそんなこと考えて戦ってたの……」


 ローラの質問に答えていたドリーが漏らした本音を聞いてメイは呆れる。


 「それだけじゃなくて、魔法の使い手としても優秀なんですよ」

 「そうそう! あいつらって例外なく魔法が使えるのよね、闇系統中心だけど」


 ロビンとメイの話によると、更に結構優秀だったりするらしい。


 「話を聞いてると、魔法使いみたいな奴等なんやな、魔族って」

 「そうよね、隙を突いて戦士に迫られたら弱いかもしれないわね」

 「だったらよかったんだけどね。どっちかっていうと魔法戦士みたいな連中なのよ」


 メリッサとローラの意見をドリーが否定する。1回だけ出会った魔族らしき奴は鎧を着ていたが、なるほど、魔法戦士か。魔物みたいな感覚で魔族を捉えていたからそういう分類は思いつかなかった。


 「そういえば、以前全身鎧を着て宙に浮いていた魔族を相手にしたことがあったけど、全然魔法の攻撃が当たらなかったよなぁ」

 「ああ、あれかぁ……俺なんて攻撃すらできなかったぜ」


 俺と同じようにかつての戦いを思い出したライナスとバリーは、全然相手にならなかったことを思い出して渋い顔をする。以前よりも今の方が戦い慣れているが、果たしてどこまで通用するんだろうか。


 「魔族が闇の魔法を使えるということは、光の魔法で相殺できるのかしら?」

 「できますよ。人間の方が込められる魔力が弱いので押され気味ですけど、そのまま直撃するよりはずっとましです。ただ……」

 「僧侶の数が限られているのに対して、魔族は全員が闇の魔法を使えるっていうのがね……」


 ロビンの説明に補足の言葉を加えたメイが肩を落とす。うーん、魔法で攻撃し合うと不利なのか。


 「元の数の差が違うからどうにかなってるが、それも魔物との混成でこられると辛いだろ」


 魔物を前衛として突撃させているうちに後方から魔法で攻撃するわけか。魔物を使い捨て感覚で使われると厄介なことになるだろう。

 そうやってのんびりと話をしながら行軍をしていたわけだが、よく考えてみれば、ここっていつ魔王軍が攻めてきてもおかしくない場所なんだよな。俺達だけでなく、他の傭兵も全体的に弛緩しているようだが、大丈夫なんだろうか。




 小休止を繰り返しながら進んだ支援部隊は、予定通り25オリク程度進軍した。一般の旅人が歩くと1日30オリク以上歩けるが、集団行動をしているためどうしても遅くなる。それでも、まだ人数が多くないこともあってましではあるが。


 「よし、今日はここで野営する!」


 ケイス隊長は全員にそう宣言をした。雲が空を覆っているので日の傾きははっきりとわからない。しかし、辺りがだいぶ暗くなってきていることは誰の目にも明らかだった。


 「見晴らしのいいところだな」


 ライナスは周囲を見渡しつつ呟いた。地平線まで原野が広がっている。


 「隠れ場所や逃げ場所がないってころだろ」

 「戦いに負けたとき、空を飛んでる魔族からは丸見えっちゅーことか」


 ああ、それは厄介だなぁ。勝ってるうちはいいんだけど、負けるとどうにもならないってことか。


 「見晴らしはいいから奇襲は受けにくいんじゃないかしら?」

 「不寝番は夜にするんだよ? 夜中はなにも見えないじゃない……」

 「あ!」


 ドリーに指摘されたローラも気づいた。そう、昼間ならともかく、視覚に大きく頼る人間は夜間に弱い。


 「まぁ、音である程度わかるんだろうが、目視に比べてかなり近づかれるよな」

 「結局は魔法頼みなんですよね」

 「はいはいそこどいて、一番ましだから」


 丹念に地面を検分していたメイがバリーとロビンを下がらせる。今日の寝床を作るためだ。


 「我が下に集いし魔力マナよ、大地をもって我が盾となれ、土壁アースウォール


 そして5アーテム四方の土台を地面からせり上げる。


 「メリッサ、ローラ、脱水をお願い」

 「よっしゃ!」


 メイの声に応じて、ローラとメリッサは土壁アースウォールの湿気を水吸収ウォーターアブソービングで取り除く。これで簡易寝床の完成だ。

 一夜しか使わないとはいえ、やはり乾いた場所で横になりたいというのが心情だ。先程までの雨で、マント上からずぶ濡れになっていてもそれは変わらない。

 床の作成が終わると、ライナス達は水吸収ウォーターアブソービングの魔法でずぶ濡れになった体と衣服から水分を抜き取る。これでさっぱりした8人は、座ったり横になったりして保存食を囓り始めた。


 「そういえば、不寝番はどうなってんだ?」

 「兵力を1割ずつ不寝番にするって聞いてるよ。1時間だけ見張るんだったはず。あたし達は……最初だっけ?」


 バリーの質問に答えきれなかったドリーは視線でメイに助けを求めた。


 「合ってるわよ。だから早く食べておきなさい」

 「はぁい」


 陣地を出発する前に決められていたのだ。各集団の頭数にばらつきが大きいため、大まかに聖騎士団が決めた後、傭兵同士で取り決めていたのである。


 「ライナス、俺達の担当する所ってどこなんだ?」

 「南西側だよ。俺とローラで、バリーはメリッサとだ」


 円陣を組んで野営をしているのだが、その最外周を不寝番で固める。そのとき、2人一組になるのだ。

 尚、このペアの組み方は、どちらの組でも前衛と後衛と役割を分担できるようにと考えられている。


 「そっちはどうなってんだ?」

 「あたし達? あたしと姉さん、それにジャックとロビンよ」


 干し肉を囓りながらドリーが答える。ちなみに、ジャック達のパーティは円陣の北西側を担当することになっていた。


 「ねぇ、メリッサ。捜索サーチってどのくらいの間隔で使うつもり?」

 「うーん、1時間だけやからなぁ。10分に1回くらいでええんちゃうやろか」


 さすがに何も見えない状態では不寝番の意味がないので、こういうときは魔法の捜索サーチを使って見張ることになる。


 「ライナスもそうするの?」

 「そうだね」


 ローラの問いにライナスは短く答えた。

 まぁ、実をいうと、俺がじっと見張っているからあんまりやる意味はないんだけどな。真夜中でも地平線まで見えるし。


 「時間だぁ! 最初の見張り役は定位置につけぇ!」


 聖騎士の1人が松明を持って傭兵の間を歩いてゆく。おお、もうそんな時間か。


 「よし、いくぞ!」


 光明ライトで周囲を明るくしてから立ち上がったライナスがみんなに声をかけると、全員が返事をして立ち上がる。そして、決められて位置に向かって2人一組で向かった。

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