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間違って召喚されたけど頑張らざるをえない  作者: 佐々木尽左
1章 異世界でも勉強の日々

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魔法の系統とその概要

 この1年間、王国語を皮切りに一般常識を身に付けた。俺の見立てでは、こちらの世界としてはかなり高い水準の教育を施してもらったような気がするけどな。まぁ、教師としてここまで教えられるエディスン先生は生前かなり上位に位置する人だったのだろう。そういう人の水準での一般常識なんだと思う。

 そして季節が巡り2年目に突入すると、いよいよ魔法の勉強だ。ふふふ、やっと異世界らしいことが学べる!


 「では、最初に学習の方針や注意事項などを説明するよ」

 「はい」


 そういえば、去年エディスン先生と出会ってすぐに同じことを聞いたな。最初に概要を説明することになってるんだろう。


 「まず、君が魔法を学習する目的だが、知っての通りライナスを守護するためだ」

 「そのためにこの1年間、色々と勉強しましたからね」

 「その通りだよ。そして、本来なら防御系の魔法を中心に覚えてもらうのが正しいんだけれど、そういうことは無視して手広く学んでもらうことにする」


 確かにそれは嬉しいが、どんな理由なのだろうか。場合によっては遠慮したいんだが……俺には拒否権がなかったんだよな、そーいえば。


 「理由は2つある。1つ目は、君がどんな魔法に適性があるのかわからないからだ。苦手な系統の魔法を学ぶより、得意な系統を学ぶ方がいいからね。その適性を見極めるためだよ。2つ目は、時間が充分にあるからだ。ライナスが成人するまで残り14年もあるからね。妖精語と魔族語の勉強を加えてもやっていけるはずだからだ」


 出来が良くなくても1日に費やす時間を増やして補った結果、1年で必要なことを何とか身に付けられたもんな。今後も同じだけ時間がかけられるんだから、場合によっては、ひたすら時間をかけて身に付けるという力業も不可能じゃないというわけだ。


 「君がどれくらい意識しているかわからないが、1日20時間使えるというのはかなり重要なことなんだよ。何しろ、これで14年学ぶということは、生きた人間の40~50年分くらいに相当するからね」


 そうなんだよな。睡眠は不要だし、肉体的な疲労とも無縁だということが学ぶことに大きな利点となることはこの1年でよくわかった。精神的な疲労──ぶっちゃけ大半が飽き──さえどうにかできれば、24時間学ぶことだってできる。


 「それだけの時間があれば、ライフワークを追いかけることだってできますよね」

 「そうなんだ。だからこそ、できるだけたくさん学んでもらいたいんだよ」

 「わかりました」


 うん、方針は理解できた。次は勉強する手順だな。


 「では次に、注意事項の前置きを説明するよ。魔法には全部で8系統ある。火、水、風、土、光、闇、精霊、無属性だ」

 「意外と多いですね」


 火、水、風、土の4種類くらいだと思ってたよ。


 「そうかね。それで、火、水、風、土の4つは言葉そのままの意味で受け取ってもらっていいよ。光は神聖魔法とも呼ばれている神官が使う魔法だ。闇は主に魔族が使っている。精霊は精霊を使う魔法だね。最後の無属性というのはそれ以外の魔法だよ」


 俺の感想はさらっと流してエディスン先生は説明を続ける。うん、こんな感想を無視されたくらいじゃ俺は傷つかないですよ?


 「そして、ここからが本題なんだけど、私が教えるのは火、水、風、土、そして無属性の5系統なんだ」

 「他の3系統はどうするんですか?」

 「闇と精霊については、それぞれの言語を担当している教師が教えることになっている。光に関しては神殿に行かないと学べないので学習対象外だよ」


 簡単な概念くらいは教えられるけどね、とエディスン先生が補足説明してくれた。光については教えられる適任者がいなかったのだろう。

 まぁ、信仰心なんてなきに等しい俺が身に付けられるとも思えないけどな。


 「けど、5系統も教えられるってすごくないですか?」

 「ありがとう。でも、教えられるだけだよ。全ての系統を十全に使えるわけではないしね。得手不得手はやっぱりあるんだ」


 いやいやいや、そんな謙遜信じませんよ? 得手不得手っていうのも達人の域での話でしょう? この1年間でエディスン先生のすごさを思い知らされましたからね! もっと凡人に優しい授業をしていただきたい……


 「それと、学ぶときの制約条件もある。今の我々は霊体で人からは姿が見えない。だから今までどこで何をしても気づかれなかった。しかし今後、扱う魔法によっては人目に晒さざるを得ないものもある」

 「あぁ、攻撃魔法とかはそうなっちゃいますよね」

 「そのとおりだ。しかし、目立つわけにはいかないのでいろいろ工夫をしようと思う」

 「どのようにですか?」

 「例えば、昼は見た目が地味な魔法を学び、夜は派手な魔法を学ぶというようにだよ。ただし、爆発音など音の出る魔法に関してはしばらく控えることにしよう。これはライナスがある程度単独で動き回れるようになってからの方がいい」


 ふむ、確かに俺達は人に知られちゃまずい存在だから、こっそりと勉強しないといけないわけか。何か悪いことをしてるみたいだな。


 「ライナスが1人で動けると音の鳴る魔法も練習できるんですか?」

 「君が話をして、人気のないところまで行ってもらうんですよ」


 なるほど、確かにそれなら好きなように練習できるな。しかし、問題が1つある。


 「でも、俺って生きた人間からは見ることも触ることもできないんですよ。どうやって話をしたらいいんですか?」

 「ああ、我々のような霊体は、生きた人間と接触したいと強く念じれば会話くらいはできるんですよ。特に君はライナスの守護霊ですから通常よりも簡単にできるはずです」


 なんと、そうだったのか。移動するときも念じるだけで動けたが、会話をするときも同じだったんだ。


 「あれ、そうなると、みんなに見てもらいたいと念じたら、生きてる人にも俺の姿が見えるんですか?」

 「ええ、そうですよ。物理的に触るということはできませんが、慣れてくると色々できますよ」


 そうなると今まで誰にも見つからなかったのは、単に俺がそう思ってなかったからだけなのか。知らなかった。


 「いつライナスに話しかけたらいいですか?」

 「まずはライナスが話をできるようになるまで待たないといけないですね」


 そりゃそーだ。つまり、今すぐじゃないわけか。


 「あとは、君の学習の進捗具合です」


 うっ、そうか、ライナスだけじゃなくて俺の方の事情もあるんだな。ま、まぁ、急ぐことはないだろう。事は慎重に運ぶべきだ。


 「当面は魔法の学習と並んで、霊体としての能力も訓練して使いこなせるようになっておきましょうか。ライナスとの接触はその後の方がいいでしょう」

 「そうですね」


 ライナス以外に見つかるとよろしくないので、その辺りの調整がしっかりとできるようにはなっておきたい。騒がれると厄介だからな。

 ということで、今後の方針は決まった。これからも引き続き目立たないように魔法の勉強を中心にやっていくわけだ。楽しみで仕方ない。


 魔法の勉強に関する方針の説明が終わると、そのまま授業に移った。特に疲れているわけではないからだ。もうすっかり慣れてしまったが、こういうとき霊体というのは本当に便利だと思う。


 「さて、それでは最初に魔法の概略から説明するとしよう。まず、『魔法とは魔力を利用して対象物に何らかの影響を及ぼす行為』であり、そして『魔力とは魔法を使用するために利用する要素』であるということを覚えておいてほしい」

 「えらく抽象的ですね……」


 人間とは動物の一種であるってみたいな感じで漠然としすぎているな。表面上の意味はわかってもそれ以上がわからん。


 「言葉の定義だからね。仕方ないよ。そして魔法とは、火、水、風、土、光、闇、精霊、無属性の8系統から成る」

 「さっき言ってたやつですね」

 「その通り。それでは、1つずつ概要を説明していこう」


 自分の知識とどれだけ一致しているのか気になるところだな。俺の知識と重なる部分が大きいほど習得しやすいはずだ。


 「火属性とは、炎や熱に関する属性魔法だ。火球ファイアボール火壁ファイアウォールが有名だね。次に水属性とは、水や氷に関する属性魔法だ。水球ウォーターボール氷槍アイススピアが代表的な魔法だろう。次に風属性とは、空気に関する属性魔法だ。風刃ウィンドウカッター電光サンダーボルトなどがある。次に土属性とは、土や金属に関する属性魔法だ。土槍アーススピア土壁アースウォールなどがある」


 ふむ、この辺りは問題ないな。ゲームなんかの知識で充分に補えそうだ。


 「以上が、四大属性と呼ばれる属性魔法だ。この4系統の魔法は魔力を各属性に変換して使用することになる。つまり、術者が魔力の収集、変換、錬成、発動という4つの行程を行うんだよ。工程が多いのは厄介だけど、光、闇、精霊の魔法よりも必要な魔力はずっと少ないのが利点だね」


 この4つは属性の違いはあっても、魔法を使うときの手順は全て同じというわけか。そして燃費もいいと。


 「そして次に光属性とは、神やその眷属の力を借りる属性魔法だ。祝福ブレッシング回復ヒーリングが有名だね。次に闇属性とは、魔やその眷属の力を借りる属性魔法だ。呪詛カース吸収アブソービングなどだね。この2つの系統も属性魔法なんだけど、四大属性と違って他者の力を借りている点が特徴だ。だから、術者の行う行程は、魔力の収集、嘆願、発動となる」


 大体のところはわかったけど、一部わからないところがあるな。聞いてみよう。


 「先生、魔やその眷属ってなんですか?」

 「神やその眷属と対になる存在だよ。近年では悪魔と呼ばれるようになったけど、それは神が正義だという前提が普及したからだ。正義の反対は悪だってね」

 「王国に攻め込んできた魔族とは違うんですか?」

 「違うよ。魔族は闇の眷属の一種だという説もあるけど、闇の影響を強く受けた人間の果てという説もある。ただどちらにせよ、神やその眷属はこの世界に常時存在してないんだから、その対となる魔やその眷属も常在していないと考えるのが普通だよね。魔族が闇魔法に精通していることは間違いないけど」


 なるほど、いくつか学説があるほどはっきりとしていないわけか。


 「もうひとつ、魔力の収集の次に『嘆願』って手順があるんですが、これはどういうことですか?」

 「光と闇の属性の場合は、神や魔、あるいはその眷属の力を借りるって言ったよね。術者は用意した魔力を触媒に、そのいずれかに魔法を使ってくれるようお願いするんだ。だから『嘆願』なんだよ」


 おお、エディスン先生の説明はわかりやすいな。


 「続いて精霊だけど、これは精霊の力を借りる魔法のことだ。火の精霊ファイアエレメンタル水の精霊ウォーターエレメンタルがよく知られている。精霊魔法は光と闇の魔法と同じように他者の力を借りるんだが、直接本体を召喚するのが特徴だね。だから、術者の行う手順は、魔力の収集、召喚となる」

 「呼び出したら後は自分で動いてくれるんですか」

 「契約の範囲内でね。それに、命令することもできる」


 命じられる内容は契約の範囲内だけどねとエディスン先生は付け加えた。


 「あれ、術者が精霊を召喚することを精霊魔法っていうなら、精霊自身が使う魔法って何魔法なんですか?」

 「良い質問だね。精霊が使う魔法は四大属性か無属性だよ。召喚された精霊の属性によって使える系統は異なるけどね。ちなみに、召喚した精霊は魔法を使うときに『変換』という行程が不要になる。その上、使う魔力も無属性並みに低いんだ」


 なるほどなぁ。さすがに精霊が精霊魔法を使うわけじゃないのか。


 「ただし、上位精霊が下位精霊を召喚することはあるから、精霊が精霊魔法を使う場合もある」


 あれ、違った。先輩に呼び出される後輩みたいなものか。そしてこき使われると。嫌だなぁ。

 そして俺は、精霊が召喚できると聞いて、光と闇の魔法の説明を思い出した。確かこの2系統も他者に力を借りるって言ってたよな。だったら、召喚もできるんじゃないだろうか?


 「先生、精霊が召喚できるなら、神や魔も召喚できるんですか?」

 「一応ね。でも絶対に召喚してはいけない」


 エディスン先生の目は真剣だ。理由は何となくわかる。


 「今まで何度か神や魔の眷属を召喚した記録があるけど、全部悲惨な結果に終わってるんだ。眷属の召喚でさえ周囲一帯が消滅している。ましてや神や魔なんて召喚した日には大陸中に厄災が降りかかるよ」

 「なんかヤバそうなんで触れないようにします」

 「うん、その方がいい」


 やっぱり身に余る力は手に入れちゃいけないってことか。でも魔王を倒さないといけないしなぁ。何か手立てがあるんだろうか。


 「それで最後の無属性だけど、これは4大属性と光と闇、そして精霊以外の属性魔法だ。捜索サーチ爆発エクスプロージョンがよく知られている。無属性魔法は魔力を変換せずにそのまま使用できる。だから、術者は魔力の収集、錬成、発動という3つの行程を行う。また、必要な魔力は8系統中最も少ない」

 「無属性なのに属性魔法なんですか?」

 「無属性の『無』は『どの属性にも属さない』という意味なんだ。属性そのものが無いわけじゃないんだよ」


 なるほど。ちょっと紛らわしいな。


 「でも、四大属性と違って『変換』って行程がないんですか」

 「魔力は色が付いていない無色透明な存在なんだ。四大属性の場合、使う系統に合わせて魔力に色を付けないといけないけど、無属性の場合は魔力をそのまま使えるんだよ」

 「へぇ、行程が少ないのはいいことですね」

 「そうなんだよ。だから人間では最も利用されている系統なんだ」


 そうなると、人間はさしずめ無属性みたいなものか。なかなか興味深いな。


 「ということで、君は光以外を身に付けてもらう」


 説明を聞いてから改めて言われると、本当にできるのか不安になってくるな。まぁ、時間はあるんだし、できる範囲でいいか。

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