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間違って召喚されたけど頑張らざるをえない  作者: 佐々木尽左
6章 新たな仲間と聖なる大木

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 誤字脱字を修正しました(2016/01/27)。

 王国公路の西端に位置する都市レサシガムは、魔法に関する研究が盛んに行われている。いや、実際は魔法だけでなく、学術、科学、魔族、妖精など、無節操なくらい研究対象は幅広い。そんな都市であるレサシガムは研究都市と呼ばれていた。

 ライナス達は、そんな所へノースフォートから王国公路に沿ってやって来た。約1300オリクの行程を隊商護衛という仕事をしながらだ。荷馬車に揺られてやって来たので1ヵ月程度の行程だったが、これは順調に進めた方だろう。


 「へぇ、ここがレサシガムか」


 都市の城壁の外で隊商護衛の仕事から解放されたライナスは、目の前の城壁を感慨深げに眺めた。何だかんだで王国公路の西端までやって来たからだ。王都からも出身地からも随分と遠い。


 「さぁ、中に入りましょう」


 以前訪れたことのあるローラがライナスとバリーの先頭に立って都市の中に入った。

 王国公路に続く東門から都市の中に入ると、まるで王都のような建物が並んでいる。西方文化の中心地というからにはどんな奇抜な建物が建っているのか期待していたが、そんなことはなかった。王国が人間の住む場所を統一してからなくなってしまったのかもしれない。

 しかし、王都とは確実に違うと言えるような差異が1つだけあった。


 「なんか、俺達としゃべり方が全然違うな……」


 バリーが戸惑いながら左右を見回した。使っている文字は同じなのだが、言葉の発音の仕方が王都とは異なるのだ。意思疎通に問題はないので方言と受け止めればいいのだろう。


 「さぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 今日仕入れたばかりの野菜や! 新鮮でうまいで!」

 「うちで売ってる刃物は無名やけど切れ味は抜群やで! 嘘やと思うんやったら試し切りしてからうてや!」


 しかし、その方言が関西弁に聞こえるのはなぜなんだろう。俺が方言というと関西弁しか知らないからか。

 ともかく、東門から入ると大通りの左右には露天が延々と並んでいるのだが、往来する人々にうるさいくらいの呼び込みがかかっていた。方言で。


 「ローラ、随分と変わったしゃべり方だね」

 「ええ。私も初めて来たときは驚いたわ」


 ライナスの感想にローラが苦笑する。後で聞いた話だが、王国に組み込まれたときに文字は受け入れられたが発音は受け入れなかった。それだけ独立独歩の精神が旺盛……なのではなく、どうしても発音が直せなかったというのが真相らしい。

 それはともかく、こうも関西弁のような方言の会話を聞いていると、研究都市というよりも商業都市なんじゃないかと思いたくなる。しかし、活発な商売をしているのは大通りの露天だけで、そこを離れると途端に落ち着いた街並みへと変化した。


 「さっきの大通りとは大違いだな」

 「まぁね。ここからが本当の意味での研究都市よ」


 このレサシガムは、面積が6平方オリク以上と王都に準じる大きさを誇る。しかし、それに対して公称の総人口は王都の半分以下だ。つまり、王都よりもゆったりとしている。それは、場所を取る研究施設が多数あるためだった。そのため、東門に通じる大通り以外はとても閑静だ。


 「ローラ、どこまで行くんだ?」

 「もう少しよ」


 大通りの喧噪から解放されて落ち着いたバリーが、まばらだが往来する人々を見ながら質問した。

 周囲は、貴族の邸宅や裕福な商人の家くらいも広い敷地がいくつも並んでいるが、ほとんど自宅兼研究施設を兼ねているらしい。無節操なくらい研究熱心とは聞いているが、その熱が高じて自宅に研究施設を作ったのか、それとも通うのが面倒で研究施設に住むようになったのか一瞬気になった。


 「着いたわ。ここよ」


 ローラがとある屋敷の前で立ち止まる。先程まで見えていた敷地よりも更に一回り大きい。ライナスとバリーは、呆然とその屋敷を眺めていた。




 通常、こういった大きな屋敷に住むのは成功している人々だ。そして、そういう人物の周りには良くも悪くも人が集まる。だから、面会を求めた人物が、屋敷の主やその家族と会うにふさわしいかどうかを検討されるのは当然のことだ。平民、ましてや冒険者のような胡散臭い者達が、いきなり事前連絡もなく訪問しても追い返されるのがオチである。

 しかし、中には例外もある。3人の中ではローラだ。メリッサ・ペイリンという人物の知り合いだからである。他に、以前レサシガムに光の教徒の一団としてやって来て、街の人々に教団から聖女扱いされているということが知られているというのも大きかった。もっとも、街の人々の信仰心は以前に言った通りお察し程度なんだが。

 ともかく、そういった理由で3人はあっさりとペイリン邸に入れてもらえた。


 「ローラぁ! 久しぶりやなぁ!」


 そして、応接室の扉を大きく開けて入ってきた少女の第一声がこれだ。扉を開くと同時に声を上げているので、中を確認することもなく口を開いているはずである。違ったらどうするつもりだったんだろうか。


 「メリッサ!」


 ローラは座っていた椅子から立ち上がってメリッサと呼んだ少女に近づく。

 メリッサで目立つのは赤毛だ。ローラと同じく肩当たりまで伸びているが、癖毛で先っぽだけ丸まっているので実際は少し長い。ローラ殿立ち話を見ていると表情がくるくるとよく変わる可愛らしい女の子といえた。


 「いやぁ~、ほんまにおおきゅうなったなぁ、特にここが!」

 「ちょっ?! やめてよ!」


 酔っ払ったおっさんのようなだらしない笑みを浮かべながら、ローラの胸を触ろうとするメリッサ。男の俺達がやったらまず間違いなく痴漢扱いとなるようなことを平気でやろうとするな。うらや、いや、駄目だろう!


 「あれ? そっちの2人は誰なん?」

 「え、ああ。えっと、右がライナスで、左がバリー。私と同じライティア村の出身で、今は一緒に冒険者をやっているの」


 ローラの話を聞いた瞬間、メリッサは驚いて2人を見直す。


 「え、うそ?! ほんまに?! これがあの幼馴染みっちゅー2人なんか!」

 「ラ、ライナスです。よろしく」

 「お、おう、バリーだ」


 メリッサの勢いにライナスとバリーは気圧されて、挨拶もどもりがちになってしまう。一体メリッサはローラの話をどういう風に受け止めたんだろうな。


 「まぁ、いろいろ話したいこともあるし、まずは座ってぇな!」


 上機嫌な様子のメリッサはとりあえず3人に座るよう勧めた後、お茶の支度を使用人に頼むなどせわしなく動いた。何だろう、ものすごくはしゃいでるように見える。


 それからはライナス達4人で今までのいきさつについての話で色々と盛り上がる。特にノースフォートでの魔物討伐は根掘り葉掘り聞いてきた。他にも、冒険者の生活がどういたものなのかということについてもである。


 「いやぁ、ええ話聞かせてもろたわぁ。しかし羨ましいなぁ。うちもはよう冒険者になりたいわ」

 「そういえば、メリッサはもう15なんだよな? それじゃ冒険者登録できるだろ?」


 あんまりにも羨ましそうに言うものだからバリーが思わず尋ねた。しかし、メリッサは可愛らしい顔をしかめて首を横に振った。


 「それがな、おじいちゃん、うちのことを大切に思ってくれるんはええねんけど、生半可な腕の仲間じゃ認められんってゆーてんねん」

 「ちなみに、どのくらいの実力だったらいいの?」

 「どうもおじいちゃんに準じるくらいの実力がないとあかんらしいねんけど……そんな化けもんおるかっちゅーねん!」


 そう言いつつ両手で頭を抱えながらメリッサはのけぞった。とても良家の子女とは思えないような仕草だ。それとも、ここじゃ当たり前なんだろうか。


 「そういえば、メリッサのおじいちゃんってどんな人なんだ?」

 「ゲイブリエル・ペイリンっちゅーんやけど、ライナスは知らんか? まぁ最近はあんまり家からも出んし、知らんか。何でも若い頃は王都でも有名やったそうやで。色々無茶なことしてたって聞いてたし」

 「デリアさんから聞いたことあるわ。肉体派魔法使いだって」


 いや待て何だそれは? ローブの下に筋肉ムキムキの肉体が隠れているのか?


 「ほら、魔法も使える戦士を魔法戦士ってゆーやろ? おじいちゃんの場合やとその逆で、戦士みたいに戦える魔法使いやったらしい。さすがに今は無理やそうけど」


 さしずめ戦士魔法使いってところか。その色々無茶していたってのは、魔法使いとしてはでたらめなことをしていたってことなんじゃないんだろうか。


 「そうや! なぁ、ローラ! あんたのパーティに入れてくれへんか?!」


 頭を抱えて悩んでいたかと思うと、突然メリッサは前のめりになってローラに顔を近づけた。それに対して、距離があるにもかかわらずローラは体を少しのけぞらせて距離をとろうとする。


 「私達のパーティに? 私達だと許可は出そうなの?」

 「えっと、ローラは問題ないと思う。教団で聖女って言われてたんやろ? しかも、ここで慈善活動してたときに、おじいちゃんも『なかなかやるやんけ』ってゆーてたし」


 思わずライナスとバリーがローラに視線を向けた。ローラはそんな2人に対して慌てて手を横に振る。


 「待って、私そんな変なことしてない!」

 「またまたそんな謙遜を~。おじいちゃんが認めるなんて相当なんやで?」


 俺もそんな気がする。そして珍しくローラが青筋を浮かべた笑みをメリッサに向けた。


 「メリッサ、あなたに協力できそうなことはないかもしれないわ……」

 「ごめん、ほんま言い過ぎたわ!」


 一瞬でローラに謝るのを見て俺達は呆れる。表情だけじゃなくて態度もころころ変わるのか。


 「それで、問題はこの2人なんやけど、なんか俺はこんなにすごいんやっていうことを証明できるやつ持ってへん?」

 「そんなこと急に言われても……なぁ?」


 困り顔のライナスがバリーに顔を向ける。バリーも同様に眉をひそめていた。


 「あるじゃない。2人ともボリス伯爵とノースフォート聖騎士団から感状をもらってたでしょ?」

 「感状?! あんたら、そんなもんもらってたんか?!」


 メリッサは驚いて2人に顔を向ける。

 まぁ、ライナスもバリーも見た目は駆け出しの冒険者だしなぁ。普通はそんなものをもらっているなんて思わないよな。


 「それって、ノースフォートでやってた魔物討伐のときのやつなんか?」

 「うん、野営地を守ったり単眼巨人サイクロプスを倒したりしたのが認められたんだ」

 「2人で倒したんやったっけ? すごいやん! それならおじいちゃんも認めてくれるやろ!」


 メリッサは文字通り飛び跳ねて喜ぶ。いや、本当に感情表現が豊かな子だな。


 「なぁなぁ、その感状って今持ってるんか?」

 「うん、あるけど……」

 「見せてくれへんか?」


 ライナスとバリーは言われるままに感状を取り出してメリッサに手渡した。すると、メリッサは感動した面持ちでそれを見る。


 「すごい、本物やんか! 一介の冒険者が持ってるもんやないやろ! いける、これならいけるで~!」


 あまりのはしゃぎっぷりに3人は引いている。そんなに冒険者になりたいのか。


 「なぁ! あんたら、うちのおじいちゃんに会ってくれへんか?!」


 元々そのつもりでやって来たわけだが、あまりの突っ走りっぷりに断りそびれたというのが実情だった。

 ということで、明日の夕方にメリッサの祖父であるゲイブリエル・ペイリンと会うことになった。正直ちょっと腰が引けてます。

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