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間違って召喚されたけど頑張らざるをえない  作者: 佐々木尽左
5章 新たな魔王討伐隊の誕生

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魔物討伐隊の進軍

 魔物討伐隊は、大きく分けて3つの集団から構成されていた。

 1つ目は、今回領内を荒らされているボリス伯爵軍だ。本来ならは騒ぎが発生した時点で早急に手を打つべきだったのだが、軍の主力が王都方面に出兵していたため充分に対応できなかった。結局、冒険者に討伐依頼を出しても効果なしと判断したボリス伯爵は、冒険者ギルドとノースフォート教会に協力を要請することにしたのだった。ボリス伯爵軍は主力以外で使える兵を全てかき集めてきたので、この討伐に失敗すると領内全域の治安が危うくなる。

 2つ目は、冒険者ギルドが集めた冒険者の集団だ。元々ボリス伯爵から討伐依頼が出ていたのだが、いくつかのパーティが依頼を引き受けて全て失敗したため、直接ギルドが冒険者の頭数を揃えて対応することになったのである。ただ、一応頭数は揃ったものの、軍の将兵のような集団戦は苦手なので、主力兵としては頼れないのが難点だ。

 3つ目は、ノースフォート教会に所属する聖騎士団だ。魔物が荒らし回っている地域には光の教徒の信者や施設があるため、今回の討伐に参加することになった。しかし、王都方面へ半数の聖騎士を派遣することになったため、主戦力と言うには心許ない数しかいない。ただ、光の教徒の僧侶が多数従軍しているため、負傷者の治療は一手に引き受けることになっている。

 ちなみに、総指揮を執るのはボリス伯爵だ。自領内なんでこれは妥当だと思う。跡取り息子が主力と共に王都へ出てしまっているので、引退寸前だったおじいちゃんが出てくることになったらしい。老練な指揮に期待だ。

 とまぁこんな感じで討伐隊が編成されたんだが、メイジャーさんから話を聞いた限りでは、数の面だけじゃなく質にも問題があると思う。何しろ、どの集団も一長一短があって主力になりにくいからだ。素人の俺でさえ不安に思うんだから、ボリス伯爵を始め首脳部は頭を抱えているだろう。

 それで問題のライナスとバリーなんだが、冒険者の集団ではなく、聖騎士団に所属することになった。何しろ王都の冒険者で国王のお抱え呪術師がノースフォート教会へ直接推薦したのだから、冒険者ギルドは口を挟めなかったのだ。後から考えてみると、ばーさんの急ぎの手紙が推薦状代わりになっていたので、これがなかったら俺達は冒険者の集団に入っていたんだよな。俺達がローラと一緒に行動できるように配慮してくれたんだろうか。


 俺達がノースフォートを出発したのは、ローラとこちらで再会してから2日後だった。城塞都市の南門に集まったのは聖騎士団と光の教徒の僧侶が約80名に雑役夫100名、それに冒険者が約200名の集団だ。これから100オリクほど南下して、ボリス伯爵軍と合流することになっている。

 今回の討伐隊の副指揮官である聖騎士団団長ウィリアムが訓示を行った後、ライナス、バリー、そしてローラの3人は討伐隊の一員として歩いていた。全員に馬と馬車を宛がうことができればよかったのだが、残念ながらそれはできなかった。なので、荷馬車に重装備と生活用品を乗せるくらいが精一杯だ。それでも、身軽な状態で歩けるというのはありがたい。


 「バリーは槍斧ハルバードを持たなくていいから楽になったでしょ?」

 「いやぁ、確かにそうなんだが、何だが落ち着かなくてよぉ」

 「そういえば、お前はときどき槍斧ハルバードを見てにやにやしてたよな」

 「……バリー、それはダメよ」

 「待て、ライナス。それじゃ俺が危ない奴みたいだろ!」


 はい、危ない奴です、などとたまに俺も混ぜっ返しながら目的地に向かって進む。

 今回初めて百人単位の集団行動を見たのだが、戦闘集団といってもそうきっちりと行軍しているわけじゃないんだな。なんか人気店に並ぶ客みたいな感じに間延びしている。おかげで僧侶集団の中で歩いている3人も遠足気分みたいな感じでいた。


 「そう言えば、ボリス伯爵軍と合流した後はどうなってんだ? そのまま魔物の巣に突撃するのか?」


 バリーはいつもの調子で思ったことをそのまま発言している。さすがに冒険者のパーティだけで討伐するんじゃないから、それは違うと思うが。


 「ううん、その前に、被害があったって報告のある地域にまだ魔物が残ってないか、調べるそうよ」


 おお、以前のゴブリン退治のようなローラー作戦か。まずは領地内の治安を何とかするわけだな。


 「でも、被害の出てる地域ってどのくらいの広さなんだ?」

 「魔物の拠点になってるところがあるんだけど、その麓を中心に半径20オリクくらいって聞いてるわ」


 結構広いな。でも、手勢は限られてるんだし、隅々まできれいに魔物を掃討できるとは思えないなぁ。


 「う~ん、みんなで手分けして半径20オリク以内を調べるくらいしか思いつかないなぁ」

 「それに加えて、期日と集合地点をあらかじめ決めておくの。そして冒険者のパーティを一旦域内に散開させるのよ。特に強力な魔物が出たっていうところは聖騎士団が対応して、ボリス伯爵軍は集合地点で魔物の巣を監視というのが基本的な内容ね」


 なるほどな。巣から新たな魔物が出てこないようにしつつ、周辺の魔物を討伐するのか。


 「俺達はどうすんだ?」

 「ボリス伯爵軍と同行することになってるわ。そこで魔物の巣を見張るの」


 あ、バリーの表情が微妙になった。


 「魔物の巣って出入りはどのくらいあるんだ?」

 「結構あるみたいよ。だから監視って言っても、実際は出入りする魔物を討伐することになるはず」


 途端にバリーの表情が明るくなった。わかりやすいなぁ。


 「あれ、でも、俺達ってローラの護衛だからそう簡単に前へ出るのは駄目なんじゃないのか?」

 「うーん、どうだろう? そんな余裕があったらいいんだけどね」


 平穏無事が一番なんで、変なフラグを立てようとするのはやめてください、ローラさん。




 ノースフォートを出発してから4日目の夕方、俺達はボリス伯爵領の領都に到着した。この日はここで宿泊し、明日からいよいよ本格的な討伐が始まるということになっている。

 ライナス達3人をはじめ聖騎士団や僧侶はは兵舎を宛がわれた。主力部隊が出征しているため部屋が余っていたからだ。冒険者は街の宿屋に宿泊である。

 翌朝、領都の郊外に討伐隊の面々が集結した。そこにはボリス伯爵軍の将兵も揃っていたんだが、全体的に高齢者が目立つ。居残り組をかき集めたんだから仕方ないか。頭数は一応300人と聞いているが、雑役夫100人を加えた数らしい。人間相手の戦争じゃないんだから、味方にまで吹かそうとするのは勘弁してもらいたい。これも貴族の体面というやつなんだろうか。

 ボリス伯爵は高齢なため、訓示は代わりに中年の家臣がやっていた。なかなかよく通る声がむさ苦しい。

 その訓示が終わるといよいよ出発だ。被害地域は魔物の巣を中心に半径20オリクで、領都の5オリク南辺りからだ。作戦は以前の話通りで、本隊であるボリス伯爵軍と一部の聖騎士団や僧侶が魔物の巣の手前まで一直線に進む。それ以外は大体割り振られた地域を中心に魔物を駆除することになっていた。そして、4日以内に本隊へ集合だ。


 「それで、出てくる魔物だけど、小鬼ゴブリンオーガ、それに巨人ジャイアントもいるんだって?」

 「他にも、魔物じゃないけど、狼、野犬、猪、熊なんていう獣ね」

 「俺、わくわくするけど、魔物や獣ってそんなにたくさん集まるものだったか?」


 進軍中、3人はこれから駆除することになる魔物について話をする。その中で、バリーが相変わらず危ない感想と共に、俺も思っていた疑問を2人に投げかけた。


 「う~ん、普通はそんな雑多な集まりなんてないはずなんだけどね。本来なら巨人ジャイアントは群れることなんてないし」

 「オーガ小鬼ゴブリンと一緒にいるってのもおかしいよな」


 そうだな。小鬼ゴブリン小鬼ゴブリン以外と群れるなんて聞いたことがない。ましてや、獣を飼えるだけの知性なんて持ち合わせてないはずだ。


 「その辺りは偉い人たちも首をかしげていたらしいわ。結局、原因が何であれ魔物を駆逐しないといけないんだけど」

 「そうだよな!」

 「ただ、原因が解明できないで放っておくと、また同じことが起きそうだからなぁ」


 さすがにこう何度も大規模な討伐隊を結成する余裕はどこにもない。魔物の駆逐はもちろん、もう2度とこのような魔物の大発生はさせないように対策をしないといけない。


 討伐隊が被害の出てる地域に入ると、冒険者のパーティが次々と担当地域に進んで行くために本隊から別れていく。その中には、時折聖騎士のパーティも含まれていた。


 「さて、いよいよだな」

 「おう、腕が鳴るぜ!」

 「2人とも、まだ気が早いわよ」


 緊張の度合いを増したライナスとバリーの姿を苦笑しながらローラは眺める。本隊の中にいる以上、当面は魔物に襲われても出番はないだろうな。

 そうやってのんびりと構えていると、何事もなく正午まで進軍できた。無事な村を通過し、しばらくしたところで昼休憩となる。

 号令と共に開けた場所で円陣を組み、見張り組と休憩組に別れた。ライナス達も3人固まって休憩する。


 「それにしても、ここまで何もなかったな。てっきり1回くらいは魔物に襲われると思ってたのによ」

 「いくら何でも400人以上もいる集団には来ないだろう」

 「そうよねぇ。5匹や10匹の群れだったら、こちらの数を見たら逃げると思うわ」


 3人はのんびりと保存食を囓りながら雑談をする。

 これは、被害地域に残存する魔物を駆逐するために、わざとパーティ単位という細かい人数に分けた理由でもある。こちらの数をある程度少なくしないと、姿を見て避けられてしまうかもしれないからだ。難敵と遭ったときが問題だが、そのときは近隣にいるはずの仲間に助けを求めて一緒にやっつけるということになっている。無線通信がないとこれが精一杯だ。


 「夕方には集合地点に着くんだよな。そこから魔物の巣まではどのくらいなんだ?」

 「3オリク以上先じゃなかったっけ? えっと、山の麓にある小高い丘の向こう、でよかったよな?」

 「そうね。頻繁に魔物が出入りしているそうだから、たぶん本隊の存在もすぐにばれるでしょうね」


 これだけの規模になると隙を突いて奇襲なんてできないから、逆にこちらが襲われにくいところで野営した方がいいという判断らしい。


 昼休憩が終わると再び進軍を開始する。

 これから魔物討伐に行くのでなければ、まるで遠足に行くような暢気さだ。各地に散開している冒険者達が頑張ってくれているおかげなのかもしれない。

 そうしてそろそろ夕方になろうかという頃になると、次の村へ差しかかる。すると、村に入った将兵がざわめく声が前方から流れ聞こえてきた。


 「なんだ?」


 最初に気づいたのはバリーだった。前の様子を探り始めたバリーに気づいたライナスとローラは何事かと訝しむ。


 「バリー、どうした?」

 「いや、前が騒がしくてよ……」

 「そうなの?」


 やがて村に入った3人はその理由がわかった。

 今現在討伐隊が通過中の村は、今年に入ってすぐ魔物の群れに襲われたそうだ。当時は警戒はしつつもそれ程の大群に襲われると思っていなかったので、実際に襲われるとあっという間に村人はほぼ全員が殺されてしまったらしい。そして、この廃村はそのときの状態でそのまま放置されているのだった。

 村のあちこちにある粗末な建物で無傷なものは1軒もなく、酷いものだと半壊している家屋もあった。また、あちこちには人骨が散乱しており、大人も子供も関係なく骸を晒したままだ。


 「……ひどい」


 ローラはぽつりと呟くと、目に涙を浮かべながらその光景をじっと見ていた。

 魔物や魔族に襲われて皆殺しにあった村の話は3人もよく聞いていた。しかし、実際に目の当たりとしたのは今回が初めてだ。さすがにバリーも真剣な表情で周囲の風景をじっと見ている。

 俺はと言うと、思ったほど衝撃を受けなかった。しょせん他人事と思っているのか、霊体となって長いので人間としての感情がなくなってきているのか、それともこういうことに強い性格なのか、いずれなのかはわからない。でも、魔物に対する同情心は完全に消えた。生きるためには仕方ないからと人間を襲うこともどこかで黙認しているところがあったが、今はそれがない。そっちがその気なら、お互いの生存を掛けて皆殺しにするだけとあっさり思えるようになった。


 夕刻、廃村を通り抜け歩き続けた結果、開けた原野に出た。目の前には南方山脈がそびえている。ここなら不意打ちを食らうことはないだろう。

 集合地点に到着したことで、討伐隊の本隊は見張りと野営場所の設営、それに夕飯の支度と3組に別れる。ライナスとバリーは野営場所の設営を、ローラは夕飯の支度をそれぞれ担当した。

 日没までに設営と夕飯の支度が終わると、手の空いた者から順次飯をかき込むことになる。見張りは次の交代のときまで我慢だ。


 「さて、いよいよだな」

 「ああ。俺、魔物だろうと獣だろうとみんなぶっ殺してやるよ」


 発言はいつも通り不穏だが、バリーなりに夕方見た廃村に思うところがあるらしい。単純に魔物狩りを楽しむという雰囲気はなくなっていた。


 「各地の村にも被害が出てるっていうし、早く終わらせないとね」


 あまり食欲がないのか、ローラはいつもよりやたらと食べるのに時間がかかっていた。やはり、あの廃村を見たせいなんだと思う。


 「もうすぐ終わるよ。そのために来たんだからな……さて、さっさと寝るか」

 「そうだな。今晩は見張りをしなくていいからぐっすりと寝られるぜ!」

 「ふふ、そうね。それじゃ、おやすみなさい」


 3人は最後に暗い雰囲気を断ち切るように元気を出すと、宛がわれたテントに入った。

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