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間違って召喚されたけど頑張らざるをえない  作者: 佐々木尽左
4章 冒険者見習いの生活

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盗賊退治5

 ハドリー村長から盗賊の乗っていた馬をもらった7人は、メイの指示に従って細い街道を北上した。日が沈む前にできるだけ進んでおきたいということで馬を早めに歩かせたが、出発したのが昼下がりも遅めだったということと馬1頭につき2人乗ったことから無茶はできず、結局日没前に廃村へは着けなかった。

 俺は霊体だからその特性上夜でも昼のように見えるが、ライナス達は人間だからそうもいかない。それなら魔法でどうにかならないか考えてみたが、闇夜を照らす魔法は夜襲をするため使えないし、夜目が利くようになる魔法は闇魔法しかない。これを使えるのはこの中だと俺だけなんだが、俺の存在がばれてしまうという以外に、そもそも闇魔法は人間に受けが悪いのでおいそれと使えなかった。残るは精霊魔法だけなんだが、これも俺しか使えない。できるのに使っちゃ駄目ってのはかなりもどかしいよな。


 「予定と違うが、襲撃は村の南から仕掛けよう。こんな暗闇の中を迂回するのは危険だしな」


 色々考えたものの有効な打開策が思いつかなかったので、最後はロビンソンの宣言通り廃村の北側に回ることは諦めることになった。日没後は暗すぎて不用意に動けないので、街道に沿って慎重に進むのが精一杯だったのである。簡単に夜襲と言ったが、視界について甘く見すぎていたんだよなぁ。月明かりが思ったほどなかったっていうのも誤算だった。


 (俺は昼間と同じように周囲が見えるからみんなに教えていく。他の仲間をうまく誘導してくれ)

 (助かる)


 ライナス達がそんな状態だったから、俺は周囲の状況をライナス、バリー、そしてロビンソンに逐一教えていた。俺の存在を隠しながらドリー達に教えるというのは大変だったようだが、それでも魔法を使って何とかしたなどごまかしてくれる。そうして不安がる馬をなだめすかしながら、俺の目にも廃村が見えるようなところまでやって来た。


 (先行して廃村の中を見てくる。俺が戻ってくるまで休憩しておいてくれ)


 一行を廃村の近くまで案内すると、一旦俺は先行して中の様子を確認することにした。幸先が悪かったので、他に危険な要素がないか確認したかったからだ。

 南の入り口から元村長宅までやって来たが、これといった罠は見当たらない。見張りを立てないなら罠を張り巡らせているのかなと思ったが、メイの言った通り、そういう類いもなかった。


 (本当に不用心だな)


 思わずそう呟いてしまう。

 そして、周囲を見ても起きている人間はいなかった。念のため捜索サーチをかけると、あまりにも予想通りだったので逆に驚く。帰ってこなかった奴がいる時点で警戒するべきだと思うんだが、本当に何もしていない。あまりの不用心さに俺の方が愕然とした。

 念のため、人間の反応があったところを見て回った。盗賊は実によく眠っている。そして、女の子の方はろくに服も着せてもらえずにだいぶ衰弱していた。どんな扱いをされていたかよくわかる様子だ。

 一通り見回って必要な情報を手に入れられたので、俺はライナス達のところへ戻った。




 俺から廃村の様子を聞いたライナス、バリー、ロビンソンは、盗賊の行動が想定の範囲内だったことに安心する。俺はロビンソンなら拍子抜けするんじゃないのかと思ったが、思い通りに進むのならそれに超したことはないと言っていた。そういえば、仕事は楽な方がいいって言ってたっけ。


 「ドミニク、これからどうする? 夜明け前まで待つか?」

 「一旦廃村の中を見てくる。いけそうならそのままやっちまおう」


 そう言うと、ロビンソンが廃村に向かって進んでいった。俺が既に中の様子を報告した後なので安心だ。ちなみに、どうして二度手間になるようなことをロビンソンがやろうとしているのかというと、俺が報告したことをジャック達に伝えるためである。だんだん自分の存在を隠しているのが面倒になってきた。

 それなら残された6人は暇だったのかというと、実は誰が馬の面倒を見ておくのかということでちょっとした話し合いをしていた。俺も含めて、襲撃中はこの4頭をどうするのか全然考えていなかったのだ。


 「ねぇ、どうする?」

 「うーん、まさか馬の面倒で困るとは予想外だろ……」

 「一番抜けても困らないのは私なんで、馬の面倒は私が見てましょうか?」


 ロビンが遠慮がちに提案をする。

 そうだよな。怪我をしたときに近くにいないってのは不安になるけど、担当する役目は魔法使いの護衛だけだからな。うまく事が運べば必要のない役だ。

 馬を放っておくってことも最初は考えたけど、女の子が2人捕らわれてるから、送るのに必要なんだよな。あと、金品や食料を運び出すのにもいると便利だし。ああもう、どうして直前にならないとやることが明確にならないんだ。


 「……そうだな。それじゃ、ロビンに頼もうか」

 「はい、任されました」


 結局、他に代案もなかったのでそのままロビンに決まった。


 ロビンソンが廃村の中から戻ってくると、すぐに襲撃しようと提案してきた。メイからの情報と俺からの報告を受けて大体の様子は知っていたが、実際に自分で確認したことで計画が成功するという確信が持てたんだろう。


 「ドミニク、そんなにチョロそうなのか?」

 「やるなら今だな。余計なことが起きないうちに片付けちまおう」


 ロビンが馬の面倒を見るためここに残るということを知らされたロビンソンは苦笑したが、特に反対することもなく同意した。

 既に準備は整っていた一行は、ロビンソンとジャックの指示で静かに行動を開始した。腰に吊していた武器は外して直接手に持って慎重に歩く。

 廃村の南側の入り口に達したとき、一行は二手に別れた。


 「ここからは別行動だ。しっかりやれよ、ライナス」

 「はい」


 ロビンソンの激励に対してライナスは短く答えると、多少遠回りをしながら元村長宅を目指した。


 しばらくは俺の指示に従いながら進んで行ったライナスは、すぐに元村長宅の近くに着く。そして、捜索サーチをかけて人の数を確認した。


 (屋内に1人、納屋……ここ納屋でいいんだよね? その納屋に2人と。話の通りだ)


 事前情報通りであることに安心したライナスは、そのまま元村長宅に近づこうとする。しかし、俺はそれを止めた。


 (待った)

 (どうしたの?)

 (防音サウンドプルーフィングを家の壁にかける。これで屋内で外の音は拾えなくなる)


 こうすれば堂々と歩いて行っても気づかれない。俺がライティア村で魔法の練習をするときに散々使った魔法だ。

 ライナスが驚くのをよそに俺は防音サウンドプルーフィングの呪文を唱える。


 (もういいよ。これで大丈夫だ)

 (ありがとう)


 幾分か緊張のほぐれた表情でライナスは元村長宅の扉まで近づいた。

 俺はそのまま壁をすり抜けて中の様子を窺う。すると、粗末なベッドでだらしなく寝ている頭首の姿があった。

 ついでなので、ベッドの四方に防音サウンドプルーフィングをかけておく。これで真横に立っても気づかれないだろう。

 中から扉付近に視線を移すと、慎重に扉を開けて中の様子を窺おうとするライナスの姿が見えた。


 (ライナス、中の様子はわかる?)

 (……真っ暗で何も見えない)


 そうだよな。俺みたいな特殊能力はないしな。なので、屋内がどうなっているのか俺が簡単に教えた。


 (右手奥に頭首の寝ているベッドがある。まっすぐ向かうと机と椅子にぶつかるから、壁伝いに行くといい。それと、防音サウンドプルーフィングの魔法をベッドの周りにかけておいたから、多少の音は平気だよ)

 (ありがとう。それじゃ、睡眠スリープはベッドに着いてからでもいいね)


 ライナスはそう言うと、壁に手をかけながらゆっくりと奥へ進んでいく。蹴躓いたりする原因となるようなものはないので、あまり気にすることはないだろう。

 時間をかけてベッドまでたどり着いたライナスだったが、相変わらず暗くて何も見えないらしい。不安そうにここでいいのか俺に問いかけてきた。


 (大丈夫、今目の前にいるよ)

 (けど、こうも見えないと何もできないな)

 (なら光明ライトをかけようか?)

 (頭目が起きない、それ?)

 (それじゃ、ライナスがかける睡眠スリープと同時にしようか)


 屋内でもいくらか視界は利くと思ってたけど、本当に全く駄目なようだなぁ。

 そういえば俺って、日本の都会の夜しか知らない。田舎だと星がきれいに見えるほど真っ暗だって聞いたことあるけど、結局体験してないしなぁ。こっちに来てからは夜でも昼のように見えるし。ああ、だから暗さに鈍感だったんだ、俺。

 今更ながら自分の至らない点に思い至りながらも、とりあえずは目の前のことを何とかしないといけない。


 (うん、それじゃ、同時に魔法を使おう。俺が睡眠スリープで、ユージは光明ライトということで)

 (わかった)


 相談し終わったところで、俺達は一呼吸置いてそれぞれの呪文を唱えた。そして、ほぼ同時に詠唱を終える。

 次の瞬間、光を発する球体がベッドの真上に現れた。それは屋内全体を昼間のように照らす。

 目の前の頭目は相変わらず眠ったままだ。元から眠っているので魔法が効いているのかわからないが、どちらにしても光明ライトに照らされても起きないならば問題ない。


 (それじゃ、ライナス。とどめを)

 (……うん)


 あまり気乗りしない様子のライナスだったが、ここまで来てやらないという選択肢はない。


 (そうだ、上布団シーツを掛けた上から刺した方がいいよ。返り血を浴びずに済むから)

 (ああ、そっか)


 最近、木刀の代わりにと買った短剣ショートソードを鞘から抜いてからライナスは気づく。

 ライナスは鞘を床に置くと、頭目が脇に押しやっていた上布団シーツを手にする。そして、それを盗賊にかけると、両の手で逆手に構えた短剣ショートソードを頭目の心臓めがけて一気に突き刺した。


 終わってから気づいたが、ライナスにとってこれが初めての人殺しだった。慣れないといけないとは思いつつ、やっぱり気分の悪いものだったな。




 事が終わって数時間後、朝日が昇った。

 ライナスは頭目を殺した後に元村長宅を出ると、納屋の中に行こうとした。しかし、俺はそれを止める。精神的にもかなり傷ついた女の子の相手は、同性であるメイとドリーに任せるべきだと思ったからだ。その説明に納得してくれたライナスは、仲間が来るまで納屋の前で見張りをしていた。

 それからしばらくして他の仲間と合流できたわけだが、あちらもあっさり事が運んだらしい。睡眠スリープが必要だったか疑問に思えるくらいだったそうだ。


 「連中が8人も残ってるってわかったときはどうしようかと思ったが、終わってみりゃ簡単だったよなぁ」

 「作戦勝ちってことだろ」

 「私なんて馬の番しかしてないですしね」


 まぁ、相手が予想以上に油断していたってことも大きいけどな。世の中の盗賊ってこんなものなんだろうか。


 「うーん、楽ができるのはいいんだけど、ああいうこっそりってのはあたしの性に合わないなぁ」

 「そうだな。俺ももっと真っ正面からやり合いたいぜ!」

 「あーもう、この体力馬鹿たちは……」


 小馬鹿にされたドリーがメイに抗議しているが受け流されている。反対にバリーは言われた意味がわかっていないのかというくらい無反応だ。バリーはもっと気にするべきだと思うな。


 「……思ってたのと違うな」


 そんな風に仲間が騒いでる輪から少し離れたところで、ライナスはぽつりと呟いた。

 盗賊は全員倒したし、想定外だった女の子も助けた。こっちは1人も犠牲がなかったんだから大成功なんだが、ライナスは元気がない。小さい頃から夢見ていた冒険者像とは違うからだろうな。


 (独り立ちしたら自分で仕事と戦い方を選べるから、それまでは我慢するしかないな)

 (……ユージ)


 日本だと中学生なんだよな、ライナスって。そんな子供が人を殺したんだから、そりゃ落ち込みもするか。俺がしてやれることは口で慰めてやることくらいってのがな。霊体だから触ることもできん。

 同い年でもバリーは全然平気なのになぁ。

 今後どうやってライナスの精神を支えてやればいいのかを考えながら、俺は7人の様子をぼんやりと見ていた。

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