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間違って召喚されたけど頑張らざるをえない  作者: 佐々木尽左
3章 王都への旅路

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33/183

初めての大都会で冒険者見習い登録

 矛盾点を修正しました(2016/01/27)。

 王都に入る最後の関門で蹴躓きかけたが、アレブのばーさんが用意してくれた旅費のおかげで3人は事なきを得た。

 ようやく門をくぐり抜けることができたロビンソン達だが、その眼前に広がった光景はライナスとバリーを圧倒した。時は昼下がり、王都の活気が最高潮に達しようかという頃合いだ。

 王都の南門から中に入った一行は、まず幅30アーテムもある大通りを目にする。その全てが石畳だ。その広い道路がずっと先にまで伸びているのだが、驚くべきはその大通りが人や馬車で混雑しているということだ。そして、多種多様な人種が混在しているため統一感がない。

 また、通りの両隣は建物が並んでいるが、平屋どころか2階建てすらない。全て3階建て以上だ。もちろんそのどれもが石造りである。そして、その建物は大半が商家らしく前に荷馬車が止まっていたり、店内で商品を売っていたりする。その活気たるやロビンソン曰くまるで戦争だと表現していた。喧噪がすごいことは間違いないな。


 「すげぇ!」


 バリーはその様子を呆然として眺めているが、ライナスに至っては言葉すら出てこない。思った以上に活気があって俺も驚いた。都市の人口を聞いて見くびっていたが、これはなかなかすごい。そして歩くのが大変そうだ。


 「くくく、どうだ? 王都は?」


 どや顔で聞いてくるロビンソンに苦笑する俺だが、他の2人は口を開けたままその顔を見る。みっともないから口を閉じた方がいいぞ、2人とも。


 「これが王都……」

 「うんうん、俺も初めてここへ来たときはそんな感じだったな。何もかもが違いすぎて頭がおっつかねぇんだ」


 俺も初めて上京したときは感動したけど、端から見たらこんな感じだったのかなぁ。


 「この辺は商人街なんだが、商人同士の大きな取引が中心だ。だから俺達のような奴には縁がないところだな。俺達が買い物できる露天なんかがあるところは別にある」


 なるほど。どうりで往来する荷馬車が多いわけだ。


 「ということは、目の前の人達は全員商人なんですか?!」

 「そんなわけないだろ。俺達みたいに王都の南からやって来る奴や南に行く旅人だっているんだぜ」


 そりゃそうだ。俺も一瞬ライナスみたいに思ったけど、そんなわけがないよな。どうやら俺も微妙に王都の雰囲気に呑まれてるみたいだ。


 「よし、それじゃ突っ立ってないでさっさと行くか!」

 「「はい!」」


 声をかけたロビンソンを先頭にライナスとバリーも大通りを歩き始める。

 しかし、慣れないと雑踏の中を歩くのは意外と難しい。約8年ぶりのロビンソンも最初はコツを思い出すまで戸惑ったくらいだ。


 「お前ら、ついてきてるか?」

 「はい、なんとか……」

 「歩くだけでも大変っすね!」


 ロビンソンもできるだけ歩きやすいところを進もうとするが、人の流れは常に変化しているので思うようにいかないことがある。

 そうか、なら俺が上から見て教えればいいんだよな。


 (俺が上から見て歩きやすそうなところを教えようか?)

 (おお、頼む! 久しぶりで勘が鈍っちまってんだ)


 こうして右、次は左と俺はロビンソンに指示してゆく。たまにどうにもならないときがあるが、そのときは諦めてと言っておいた。


 人通りの多い大通りを歩いているため思うように動けないが、それでも南門から続く大通りを北上し続けると、やがて東西に走る大通りにぶつかる。T字路になっているそこは中央当たりが人でごった返していて特に歩きにくそうだ。

 ちなみに、こんな中でも馬車が往来している。よく事故が起きないなと感心しながら見ていると、馬車の走る場所というのは決まっているらしく、北と東に向かうときは右側、南と西へ向かうときは左側を走っていた。馬車の速度はかなり遅めで、止まった馬車を追い越す以外ではどの馬車も追い越しをしていない。王都の人々もそれを知っているらしく、器用にあっちへ行ったりこっちへ行ったりとしていた。たまに轢かれそうになって御者にどやされているのはお上りさんなんだろう。


 「ドミニクさん、この通りもどこかの門に通じてるんですか?」


 そんな周囲の様子を興味深く見ながら、新たに現れた東西の大通りについてライナスが質問をする。この様子だと、西は西門に東は東門……いや、東は湖だから港に通じてるんだろうか?


 「西はまっすぐ進むと西門にぶつかる。東は200アーテムほど進むと北に折れ曲がってる」

 (あれ、東は港に通じてるんじゃないのか?)


 予想と答えが違ったので俺は思わず問いかけた。


 (攻め込まれたときの対策で、一直線に端から端までは行けないようになってるんだ)


 なるほど、確か日本でも昔の城下町だとそんな風になってたって聞いたことがあるな。なかなか経済最優先ってわけにはいかないわけか。


 「で、俺達はこれからどこに行くんすか?」

 「ん? あ、そういえばまだ言ってなかったな。まずは冒険者ギルドに行く」


 次はどこに向かって歩けば良いのかわからなかったバリーがロビンソンに尋ねると、2人にとっては衝撃的な言葉が耳に入った。


 「え、冒険者ギルドですか?!」

 「マジっすか?!」


 この反応を予想していたのか、ロビンソンはにやにやしながら2人を見る。先輩風を吹かせられるからって楽しんでるな!


 「そうだ。お前達がなりたかった冒険者にこれからしてやる! ただし、見習いだけどな」

 「見習い?」

 「ああ。本来冒険者には大人になってからでないと登録できない。けどな、指導者がついている場合に限って、特別に冒険者見習いという形で登録できるんだよ」


 現在13歳であるライナスとバリーは子供扱いなので本来なら登録できないが、面倒を見る大人がいる場合は12歳から仮登録ができるらしい。そうなると、ロビンソンが指導者で2人の面倒を見るということになるのか。

 ライナスとバリーは喜んで良いのかどうか判断できずに困惑している。まぁ確かに微妙だよな。


 「その指導者っていうのに、ドミニクさんがなってくれるんですか?」

 「俺以外に誰が引き受けるってんだよ」

 「おお、ありがとうっす、ドミニクさん!」


 まぁ、そうなるわな。2人の感謝を一身に受けているロビンソンは嬉しそうにしていた。


 「よし、それじゃ行くぜ。こっちだ」


 簡単な説明が終わった後、ロビンソンは東西に走る大通りを西に向けて歩き始めた。


 話が終わって再び歩き始めた3人だが、冒険者ギルドはそんなに遠くない。先程のT字路から西門へ向かって200アーテムの所にある。大通りに面しているためすぐにわかった。


 「さあ着いたぞ。ここが冒険者ギルドだ!」


 ロビンソンが目的地に着くと、ライナスとバリーに振り向いて建物を紹介した。

 建物は5階建ての総石造りの立派な建物だ。壁の変色具合などが歴史を感じさせる。薄汚いと思わせないところは手入れが行き届いているせいかもしれない。


 「うわぁ……」

 「ここが……ここが、冒険者ギルドっすか……」


 先程南門を潜った当初のように口をあんぐりと開けたまま建物を見る2人であるが、出入りしている人が生暖かい目で見てる。俺は見られてないはずなのになぜか恥ずかしかった。

 そんな2人を咎めもせずにロビンソンはにやにやと笑っている。

 まぁ、ようやく憧れの冒険者になれるんだから仕方ないのかもしれない。実際には見習いだが、今の2人にとっては些細なことだろう。


 「いつまでも建物の前で突っ立っててもしょうがないから、中に入ろう」

 「「はい!」」


 ようやく我に返った2人は、中に入ろうとするロビンソンの背中を慌てて追った。

 中は思いのほか広くて俺は驚いた。建物の横幅が結構あるのは見てすぐわかったが、中に入って奥行きもあることを知る。そして多くの人がいた。大半が武具を身につけているので冒険者だというのがわかる。そうでない者は専用の服を身につけていることから、光の教徒と魔法使いだけ区別がついた。光の教徒はかつてローラを迎えに来た神官だったか僧侶と同じ服装だったし、魔法使いはローブを身につけていることが多いからだ。

 そんな冒険者達は、室内に規則正しく並べられた掲示板に貼り付けられた紙を熱心に見たり、壁際に置かれた書類を真剣に見ていた。俺なら自分にふさわしい仕事を探しているということがわかる。おお、今になってライナスとバリーが冒険者になるのが羨ましく感じてきたぞ。


 「これ、みんな冒険者っすか……?」

 「すごくたくさんいるね……」


 本日何度目の驚愕か忘れてしまったが、冒険者の数の多さに2人は圧倒されていた。そうだよな、俺も本物の冒険者ギルドにやって来て感動しているせいか言葉にならない。ロビンソンを喜ばせているだけで何か嬉しくないんだが、残念ながらどうにもならんなぁ。


 「よし、それじゃ奥へ行くぞ。まずは見習い登録からだ」

 「「はい!」」


 人だかりの少ないところを縫うようにしてロビンソンは建物の奥へ向かう。ライナスとバリーもその後を不器用に追った。

 掲示板のある場所を抜けるとロビーが広がっている。そこにはいくつかの丸机と椅子があり、数人が集まって話ができるようになっていた。

 そして更にその奥にはカウンターがあり、受付嬢が何人も座っている。見習いとはいえ冒険者登録をするのはここしかないだろう。


 「ちょっと頼みたいことがあるんだが」

 「はい、なんでしょうか」


 ロビンソンに声をかけられた受付嬢が顔を上げて用件を伺う。失礼な話だが、容姿は普通だ。そうそう美人にお目にかかれるわけもないか。


 「この2人を冒険者見習いとして登録したいんだ」

 「わかりました。それで、指導者はどなたが担当されるのでしょうか?」

 「俺だよ」

 「では、こちらの用紙に必要事項をお書きください」


 渡された書類をしばらく眺めた後、ロビンソンはカウンターに座ってそばにあったペンで何やら書き始めた。この辺りのやり取りは銀行や役所そのままだな。特に真新しいものはない。


 「できた。ほらよ」

 「確認します……はい、問題ありません。指導者はドミニク・ロビンソンさんですね。冒険者登録をされているんですね。カードもお預かりします。しばらくお待ちください」


 そう言い残すと席を立って奥に向かう。カウンター毎にパソコンが置いてあってすぐに確認できるようにはいかないな、やっぱり。魔法で一発確認ってのも期待してたけど、それもダメか。思ったよりも魔法が普及してないんだな。


 「カードと筆跡の確認ができました。冒険者ランクCのドミニク・ロビンソンさんですね。それでは、次に冒険者見習いの登録作業に移ります」

 「よし、お前ら、カウンターの席に座れ。そしてこの姉ちゃんの言う通りに書いていくんだぞ」

 「「はい」」


 そうして渡された1枚の紙に名前、年齢、クラスなどを書いていく。記入する項目は少ないんですぐに終わるはずだったのだが、ライナスがクラスのところで引っかかった。


 「魔法戦士……あなたが、ですか?」

 「はい」


 書類に不備がないか確認しているときに、受付嬢がライナスのクラスに目を止めた。13歳の冒険者見習いで魔法戦士は通常あり得ないからだ。受付嬢がロビンソンに視線を向けて確認をとろうとする。


 「ライナス、無害で簡単な魔法を使ってやんな。そうだな、小さな水球ウォーターボールくらいならいいんじゃねぇか?」

 「え、ここでですか?」

 「まぁ、それくらいでしたらいいですよ」


 ということでライナスはその場で水球ウォーターボールを発動させる。すると、小さな水の球が現れた。これには受付嬢も驚く。


 「本当だったんですね。申し訳ありません。それでは、登録作業はこれで終了です。2人のカードを作りますのでお待ちください」


 そして再び奥に向かってしばらくすると、カードを2枚手にして戻ってきた。


 「こちらがカードになります。なくさないでくださいね」

 「「はい!」」


 2人は嬉しそうにカードをもらう。

 これでついに2人は見習いとはいえ冒険者になった。俺も含めてこれからが本番だ。

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