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間違って召喚されたけど頑張らざるをえない  作者: 佐々木尽左
終章 決戦の後

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魔王討伐後

 魔王との戦いが終わって1日が過ぎた。今はバリー、ローラ、メリッサの3人と王都にいる。

 俺達は魔王を倒した後、その魔王に恨みを持つという元四天王フールが復讐をするのを見届けた。半球状の魔方陣に魔王を閉じ込めて苦しめていたようだけど、具体的に何をしていたのかまではわからない。

 その後、アレブさんからもらった首飾りで転移した先は、以前1度転移してきたことのあるアレブさんの居住施設だった。

 そして、帰ってから気づいたことがある。ユージから何の反応もないんだ。いつもなら呼びかけるとすぐに答えてくれるのに、今は全く返事がない。他の3人もすぐに気づいたようで、みんなもユージに話しかけるけど結果は同じだ。こういうとき、普段から姿が見えないっていうのは不便だな。

 とりあえず、俺達は魔界での出来事を報告する。魔王を倒したということを聞いたアレブさんはとても喜んでいた。俺達が課せられていた使命を果たしたからだ。

 それはいい。問題はこれからだ。俺達は魔王を倒した直後からユージと連絡がとれないことを話した。もう1度魔王と戦っていたところから丹念に説明をする。


 「ライナス、お主の剣を見せておくれ」


 求められて剣を渡すと、アレブさんはしばらくそれを見つめる。しばらくすると、ため息と共に言葉を返してきた。


 「この剣の中に霊体が存在しておるのは間違いないの。ただ、この中におる幽霊ゴーストは魔力をほぼまとってはおらんようじゃな。まぁ、ある意味幽霊ゴーストらしくなったとも言えるが、これが反応しないという理由なのかもしれん」


 俺達は絶句した。そういえば、以前ユージは言ってたっけ。魔力が枯渇するとどうなるかわからないって。これがそうなのか。


 「なら、魔力が回復したら、またユージの意識も戻るんですか?」

 「原因が魔力不足ならな。ただそれにしても、どの程度回復すればよいのかということまではわからんぞ」


 そうだ。確かユージの魔力は無尽蔵に溜まり続けるから上限がないと聞いている。だから完全回復したから目が覚めるっていうことが期待できないんだ。

 ユージは、物心ついたときから一緒にいた大切な親友だ。俺はこれからもずっと一緒にいるっていうのが当たり前だと思ってたけど、そうじゃなかった。

 しかし、諦めるつもりはない。俺はまだ20歳にもなっていないんだ。これからも冒険者としていろんな所を回り、何とかユージを目覚めさせる方法を探そうと思う。




 魔王との戦いが終わって1週間が過ぎた。私はライナス、バリー、メリッサの3人と王都にいる。

 私は王都に帰還した翌日に大神殿へと向かった。もちろん他の3人も。

 そしてデリアさんに魔界での出来事を報告すると、まずは生きて戻ってきたことを喜んでくださったわ。私もよく無事に帰ってこれたと思う。

 魔界の各地で反魔王勢力が蜂起し、魔王まで死んでしまった以上、魔族が王国を攻める余裕はなくなった。今、王国に残っている魔王軍も早晩魔界に引き上げるだろうというのが上層部の考えだそうね。


 「だから、あなた達が戦場へ出る必要はもうないわ」


 デリアさんはそう言ってくれた。私達としても戦場へは行きたくないから嬉しい話ね。

 でも、ユージは剣の中で眠ったまま。ずっと私達を助けてくれた恩人であり、いつも一緒にいてくれた親友でもある彼を、私達は魔王を倒してから1度も見ていない。普段から姿を見せないから見えないこと自体に不思議はないけど、いくら語りかけても声は返ってこないのは寂しいわね。

 もちろんデリアさんにも相談したけれど、目覚めさせる方法はわからないと返されてしまう。


 「それに、もしその剣の中で眠っているのだとしたら、そうなる理由があるのかもしれないわ。それを理解してからでないと、目覚めた途端に消滅ってことにもなりかねない。もし起こすにしても慎重になさいね」


 そう、魔力が枯渇して眠りについたと私達は思っているけど、実は別の理由かもしれないのよね。でも、私達にはそれを確かめる術がない。それがとても悔しいわ。


 「あと、教団に相談するのはお勧めできないわね。下手をすると聖剣だなんだって勝手に認定された挙げ句、取り上げられてしまうかもしれないから」


 私もそれは考えた。私自身が勝手に聖女扱いされているから充分にあり得る話よね。だから、ユージを目覚めさせる方法はできるだけ自分達だけで探さないといけない。


 「当分は好きにしなさいな。まだ若いんだから、猶予のあるうちは外を回ってきなさい」


 デリアさんに優しく背を押してもらえて、私は嬉しい。

 ライナスはこれからも冒険者を続けて、ユージを解放する方法を探すと言っていたわ。いずれ教会に戻らなきゃいけないけど、私もしばらくはライナスにつき合いたいと思う。




 魔王との戦いが終わって1ヵ月が過ぎた。うちはライナス、バリー、ローラの3人とまだ王都におる。

 とはゆーても、もうすぐ王都を出るけどな。色々と事後処理なんかがあったけど、それも全部終わったし。これからみんなでレサシガムに行くんや。

 魔界から帰ってきて何度かアレブさんと会ってたけど、魔王討伐隊は正式に解散することになった。魔王はうちらが倒してもうおらんしな。うちらはもう好きにしてええらしい。特に用がないならもう会うこともないんやろうけど、なーんかあのおばーさんとはこれからも縁が続きそうやなぁ。

 それで、王都に帰ってきてから何度もみんなで話をしたんやけど、これからもしばらくは4人で冒険することになった。理由は、ユージを目覚めさせる方法がないか探すためや。魔王討伐に一番貢献したのに、ユージだけこんな結果なんてのはあんまりやと思うねん。魔界にも行くことになるんやろうけど、今のうちらなら何とかやっていけるはずや。


 「けど、あっちに行く前に、ライナスとバリーの鎧を何とかせんといかんなぁ」

 「確かに、これじゃぁね」


 2人の鎧をまじまじと見ながら独りごちると、ライナスが苦笑して反応した。うちとユージがベラと戦ってる最中にライナス達3人は魔王と戦っとったんやけど、そのときにかなりやられとったらしい。バリーなんて鎧の腹の部分に穴が空いてるもんな。これじゃ使いもんにならんわ。

 ただ、修理するっちゅーてもそこらにある鎧とはモノがちゃう。何しろ真銀ミスリル製やさかい、材料を集めるだけでも手間と金がかなりかかる。修繕費ならおじーちゃんが出してくれるかもしれんけど、真銀ミスリルの材料はなぁ。


 「ダメ元でアレブさんに頼んでみたらどうだ?」


 バリーがそう提案してきた。そうゆーたら、魔王討伐の褒美をもろーとらんかったな。その線で攻めたらいけるんちゃうやろか?

 ということで相談してみると、あっさり真銀ミスリルと宝石なんかをもらえた。おー、ゆーてみるもんやなぁ。

 そうそう、ライナスが持ってるユージが眠ってる剣やけど、あれを手にしても星幽剣アストラル・ソードは使えんらしい。ユージの魔力を使って出してたそうやから、恐らく魔力不足で使えんっちゅーのがうちらの見解や。

 ともあれ、まずはレサシガムに寄っておじーちゃんに事の顛末を話してから、ロックホールへと行かんとな。もう10月やから今から行くと真冬の山を登るんか。まぁ、急ぐわけでもないしええやろ。

 うちらの旅はまだ続くで!




 魔王との戦いが終わって1年が過ぎた。俺はライナス、ローラ、メリッサの3人と王都にいる。また戻ってきたんだ。

 1年くらい前に王都を出発して、メリッサの屋敷に寄ってからロックホールへと向かった。これは鎧を修繕してもらうためだ。いくら真銀ミスリルっても穴が空いてちゃ使えねぇからな。

 グビッシュさんに見せるとよくこれだけ使い込んだなって笑われた。どんな上等な物だって道具は使って役に立てて初めて意味があるから、鎧がぼろぼろでも俺達が無事ならそれでいいそうだぜ。鎧は4ヵ月くらいで直せるって言われたから、それまで俺達は色々と調査をすることになった。

 その間に俺達は魔界に行く方法を探ることにした。アレブさんに転移してもらえば一番速いんだが、魔王討伐隊も解散した今は、あまり頼りすぎるのはよくないってライナスが言ってたんだよな。難しいことはわかんねぇが、自分達でやれることは自分でやるっていうのは正しいと思うぜ。

 メリッサが言うには、王国と魔界を隔てる大北方山脈は険しくて簡単には越えられないらしい。けど、それでも比較的ましなところがあるそうだ。いずれも魔王軍が進軍に使った経路って言ってたな。


 「それで、なんで最北の森の経路しかダメなんだ?」

 「王都方面はまだ魔王軍が残ってて論外やし、イーストフォート方面は魔王軍の残党がおる上に死の砂漠を乗り越えていく必要があるからや」

 「なるほど。けどよ、こっちは大丈夫なのか?」

 「それを今から調べるんやんか。まぁ、元々他に比べて魔王軍の勢力は弱かったし、反魔王勢力と対決するためにさっさと引き上げたって聞くしな。歩いて行くとなるとここしかないんや」


 難しい話は聞いてもわかんねぇから聞き流してたが、そういうことなのか。

 実際に最北の森へ行って調べて見たが、確かに魔王軍はいなかった。山越えの道らしきものの周辺には陣地の跡があったけどな。

 それを確認してからロックホールへ鎧を受け取りに行ってから、俺達は再び王都へと戻ってきた。色々と調べるのに王都は都合がいいらしい。アレブさんに相談できるっていうのもあるしな。

 そうして念入りに準備を済ませて、今日ようやく魔界に出発することになった。ユージには色々助けてもらったしな、今度は俺達が助ける番だぜ!




 魔王様が人間に倒されて数年が経過した。やっと僕の回りは落ち着いてきたよ。あれから魔界は再び四五分裂しちゃった。

 僕はシモンズの体を乗っ取った都合上、魔王様の支配地域と軍団を引き継ぐことになった。魔王様の血族がいたらさっさと丸投げしていたんだけど、誰もいないからね。ということで、元魔王軍であるシモンズの軍団を中心に近衛部隊などをかき集めて、デモニアのある中央部を配下に収めている。

 状況はまさしく四面楚歌で、反魔王勢力──今は反シモンズ勢力──はこちらに一斉攻撃をしようとしている。デモニアとロックホーン城が落ちるのも時間の問題だろう。


 「早く来てくれないかな」


 僕としてはこういった領地経営なんて興味がないから早く止めたい。ただ、乗っ取ったギルバート・シモンズの体で今後しばらくは活動しないといけないから、そのことを考えて後始末をしておく必要があるんだ。つまり、シモンズの政治生命を絶っておかないといけないんだよね。面倒だけど。

 でも、それを補ってあまりあるくらいの成果は得たよ。もちろん魔王様の最期のときにね。あれで僕の魂もきちんと活性化された。本当にそうなのかは100年くらい様子を見ないとわからないけど、たぶん大丈夫だろうね。

 ベラの方はどうなっているか僕は知らない。魔王様が死んでからは全然会ってないからね。あっちも恐らくうまくいっただろうから、協力して研究する必要もなくなった。たぶんもう会うこともないんじゃないかな。向こうは向こうでよろしくやるでしょう。

 僕は今、魔王様の執務室だったところにいる。どうせ誰も使わないんだし、僕が使ってしまってもいいだろう。

 そして、いつものように書類作業をしていると、部下の魔族が慌てて入室してきた。


 「閣下! 失礼します!」

 「なんだ?」

 「反乱軍が4方向からこちらへ攻め込んできました!」


 おお、ついに来たか。やっとこの面倒な仕事から解放される。


 「各方面に迎撃部隊を差し向けよ」

 「はっ!」


 こうなることはわかっていたから、あらかじめ部隊をどう振り分けるか指示はしてある。どれも苦戦したり負けたりするようにね。

 部下が退室したのを見届けると、反対側にある窓から外を見る。結構高い位置にあるので遠くまで見通せるのがお気に入りだ。まだ反乱軍の姿は見えないね。


 「まぁいいや。次にどんな研究をするのかでも考えておこうかな」


 僕は背伸びをしながらそう呟くと、近くにあったソファに寝転がった。

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