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間違って召喚されたけど頑張らざるをえない  作者: 佐々木尽左
16章 最終決戦

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─幕間─ 念願成就

 人形から本来の自分の体へと魂を移した私の姿は、もはや老婆の姿をしていなかった。魔族としては平均的な容姿でしかない本物の体ではあるけど、思うように体が動かせるっていうのは本当に嬉しいわね。

 私がいるのは、大きな魔方陣が床に描かれたあの部屋。この魔方陣は、魔王のそばにいる私の人形が編み出す『吸魂きゅうこんの魔方陣』から、人間に討たれた魔王の魂とその活力を受け取るものよ。

 以前は多くの魂から活力を集めれば蘇らせられると信じて研究を重ねていたけれど、実験の結果それではうまくいかないことがわかった。だから、方針転換をして他者の持つ強い霊魂を活用することにしたの。その対象者が魔王ね。


 「うーん、早く来ないかな」


 既に準備が終わって後は待つばかりの私は、魔方陣の脇で何度目かの背伸びをする。フールからの連絡があって、その後、人形が壊されたこともわかったから、もうそろそろ魔方陣が起動してもいいはずなんだけどな。

 それで、この魔方陣なんだけど、中央には氷に閉じ込められている夫に模した人形を安置してあるわ。ロックホーン城から送られてくる魔王の魂と活力の受け皿として用意したの。夫の体で直接受けない理由は危険だからよ。こっちへ送られてきた当初の魂と活力は安定しないはずだから、それを落ち着かせるまでは何が起きるかわからない。だから、仮の宿り木を用意したわけ。

 そうやって物思いにふけながら待っていると、魔方陣が淡い緑色に輝き始めた。


 「きた!」


 私は目を輝かせて魔方陣を見る。最初はうっすらと輝いていただけだったけど、その輝きの強さは次第に強くなっていく。それは中央に安置された人形も同じだ。さぁ、いよいよここからが本番ね。

 魔方陣の輝きはある程度まで達するとそこで安定するけど、中央の人形は更に輝きを増してゆく。やっぱり、あの守護霊の魔力を利用したのは正解だったわ!

 実を言うと、以前から問題だったのが『魔方陣を起動した後、その発動を維持するための膨大な魔力をどうやって捻出するのか』ということだったのよ。計算すると桁外れの魔力が必要となることがわかったから、どうしようかしばらくそれで悩んでいたわけ。でも、あの守護霊がそれを補えるってわかってからはそれも解決したわ。魔方陣の術式を変更するのは骨だったけど、苦労しただけのことはあったようね。もうひとつ問題はあるけど、そっちはフールがうまくやってくれるでしょう。


 「今のところは順調よね。後しばらくこのまま続いてくれれば」


 何度も見直した術式には絶対の自信がある。今度こそいけるという思いは強い。でも、それは毎回同じだということも覚えている。だから、こうやって言葉にして自分に言い聞かせないと不安で仕方ない。

 人形の輝きは既に直視できなくなりつつある。私は闇盾ダークシールドの半透明の黒い膜を利用して、目に入る光度を下げた。

 しばらくその状態が続いていたけど、突然、魔方陣の輝きが急激に薄れてゆく。一瞬嫌な予感がした私は緊張したけど、人形の輝きは相変わらずなので安心したわ。


 「この工程は何度見ても不安よね」


 魔方陣の輝きはほぼなくなってしまったけど、まだかすかに光っている。これは、人形への魂と活力の注入が終わったことを意味している。そう、つまり、


 「……成功した」


 いや待って、まだ人形の状態を確認できていない。

 私は依然として強い輝きを放つ人形に近づいていった。そして、その体をひとつずつ丹念に調べてゆく。


 「体全体に問題なし。内臓は正常に動いている。体温も正常。それから……」


 確認するべき項目を呟きながら1つずつ見てゆく。肉体に問題はないようね。


 「状態は安定している。後は魂と活力の調整だけ」


 やった。ついにここまで来た! あとはしばらく間をおいて夫の体にこれを移せば、


 「蘇る。やっと会える。会えるよぉ」


 まだ全ての行程を終えたわけじゃない。でも、ここまで進められたのは初めてだ。そして、これ以降の行程については、フールの協力で確実にできることがわかっている。だから、もうほぼ成功したも同然でしょう。

 私はようやく愛しい夫に会えること思い、しばらく泣き続けた。

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