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間違って召喚されたけど頑張らざるをえない  作者: 佐々木尽左
15章 終わりの始まり

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武器の使い勝手と防具の性能

 武具を一新したライナス達は再びレサシガムへと戻ってきた。季節は春、もう5月も目前だ。

 山賊や盗賊に襲われることなく無事に着いたことは良かったが、真銀ミスリル製の武具はやはり重たそうだった。ローラやメリッサはもちろん、ライナスもこぼしていたくらいだ。慣れるまでは我慢するしかないだろう。

 ちなみに今回、メリッサとペイリン爺さんの帰宅の儀式はなかった。ある程度期間が必要らしい。

 それはともかく、これでようやく真銀ミスリル製の武具を手に入れることができた。これからライナスが星幽剣アストラル・ソードの出力調整のために修練を重ねることになるが、実のところ他の3人ものんびりとしているわけにはいかない。


 「私達も真銀ミスリル製の防具に慣れないといけないわね」

 「前のやつよりも重いもんなぁ」


 普段なら実家に帰ってきたときは鎧を着ないメリッサだったが、今回は旅に出ているときと同じ格好だ。もちろんローラも一緒である。


 「よぉし、次は左だな」


 庭先ではバリーが全身を躍動させながら、手に入れた真銀ミスリル製の槍斧ハルバードを振り回していた。4人の中でバリーだけは、旅の最中でも嬉しそうに槍斧ハルバードを手に馴染ませようとしていたくらいだ。


 「バリーは元気やなぁ」

 「おう。なんたって念願の真銀ミスリル製だからな! 1日中振り回しても飽きねぇぜ!」


 呆れ気味に眺めていたメリッサの意など介することなく、バリーは嬉しそうに修練を繰り返していた。


 「反対にライナスの方は静かよねぇ」


 一方、バリーとは反対側の庭先へ向けたローラの視線は、ライナスを捉えていた。こっちは俺と一緒に星幽剣アストラル・ソードを使いこなすための研究と訓練を繰り返している。


 「とりあえず、出すだけなら問題ないよな」

 (次は必要な魔力の最小量を確認しよう)


 グビッシュ氏のところで鉄塊を切断できるところまで確認していた俺達は、星幽剣アストラル・ソードに注ぎ込む魔力量について調べていた。最初にごっそりと魔力を取られるのは仕方ないとして、その後維持するためにはどの程度の魔力が必要なのか、また、たくさんつぎ込むほど切れやすくなるのかなどを試していた。


 (これはどうだ?)

 「あ、刀身の輝きが薄くなった」


 ライナスはじーさんにとりあえず用意してもらった煉瓦の1つに刃先を押し当てる。すると、やっぱりあっさりときれいに切れた。


 「さっきよりも少し切りにくくなった。どうも切れ味は魔力量に比例するみたいだ」

 (そうか。なら次は、剣に連続して魔力を入れたり止めたりするよ)


 そう言うと、俺はいろんな間隔で剣に魔力を入れてはそれを止めるという行為を繰り返そうとする。しかし、止めることができない。


 (あれ、止められないのか)

 「うーん、ユージと一体化しているときはいつも星幽剣アストラル・ソードが発動するみたいだね」


 そうなると、常時一体化していて必要なときに星幽剣アストラル・ソードを使うということはできないのか。


 「魔力消費量をなくせないんなら、最小量はどのくらいなんだろう」

 (切れ味は何もしてないときと変わらないだろうな)


 今のところ、星幽剣アストラル・ソードを使うときだけ、ライナスと一体化した方がいいらしい。

 こんな風に、一部に問題があるものの、意外と星幽剣アストラル・ソードを使うこと自体はうまくいっている。ちなみに、ある程度慣れたところで再び素手で星幽剣アストラル・ソードを出してみたが、以前と同じで制御はできなかった。真銀ミスリル製の武器が制御装置の役目も兼ねているのか。


 「ライナス、俺にも煉瓦を分けてくれ。こいつの切れ味を試してみてぇんだ」

 「いいよ、そこにあるのを持っていって」


 軽く汗を流したバリーが積み上げられた煉瓦をいくつも持っていく。試し切りか。


 (そういえば、その剣の素の状態ではまだ試し切りってしてないよな)

 「本当だね。星幽剣アストラル・ソードの方にばかり気を取られてたよ」


 いずれは試さないといけないことなので早速どの程度がみてみる。まずは刃先を煉瓦に押し当ててみたが、さすがに刃は通らなかった


 「素の状態だとこんなものか」

 (でなけりゃ星幽剣アストラル・ソードなんて使う必要ないもんな)


 俺達は2人して苦笑する。他の武器よりも断然切れ味はいいんだろうけどな。

 次に軽く振って煉瓦に刃を当ててみた。今度は切れる。割れるようにではなく、文字通り切れたのだ。


 (おお?! 軽く振っただけだよな? それでこの切れ味か)

 「へぇ、すごいな!」


 まさか切れるとは思っていなかったので驚いた。ライナスは煉瓦とぶつかった刃先を眺めている。

 横から破砕音が聞こえてくるので視線を向けると、バリーが煉瓦に槍斧ハルバードを叩きつけていた。俺には前のやつとどう違うのかよくわからないが、バリーはそれを実感しているんだろうか。


 (バリー、そっちの槍斧ハルバードはどんな感じなんだ?)

 「すげぇぞ! 簡単に叩き切れるぜ!」


 真銀ミスリルは鉄よりも重いので、同じ大きさの槍斧ハルバードでもより破壊力が得られる。更に切れ味は段違いに良くなったので、これなら何でも切れるんじゃないのかとはしゃいでいた。


 「グビッシュさんのところで鉄塊を切ったときも感じたが、これならあの巨人ジャイアントともやれそうだな!」


 ダンのことか。こっちの攻撃が通じなかったもんな。次に戦う機会を楽しみにしているように見える。俺はもう、あんなのとはやりたくないんだが。

 2人とも、以前と同じ大きさや形の武器にしてもらったので扱いには苦労していないようだが、鉄から真銀ミスリルになったことで重くなった。それに慣れるためにも午前中はそれぞれの武器を手に振り回したり考え込んだりする。

 そして午後からは、4人揃って防具の性能について確認することになっていた。事の発端は俺の発言だ。


 (防具の性能については大体聞いているが、みんなは本当にそうなのか試したことがないよな。だからそれを今のうちに確認しておきたい)


 これは真銀ミスリル製の鎧だけでなく、ローラとメリッサの身につけている御手の守りと魔法の服についてもだ。最北の森で魔族に囲まれてから、実は話が違いましたでは泣くに泣けない。

 ただ、小なりとはいえ実際に攻撃することになるから、危険性を考えてペイリン爺さんにも付き添ってもらうことにした。


 「うむ、実際に実感しておくっちゅーのは確かに大切や。ええやろ、わしも見といたるわ」


 じーさんも俺の提案したことの重要性を認めてくれた。

 ということで、まずは真銀ミスリル製付きの革の鎧からだ。これはライナスとバリーの2人が試すだけでいいだろう。真銀ミスリルの性能がどんなものか知りたいだけだし。

 ということで、まずはライナスとバリーにお互いを武器で殴り合ってもらう。ただし、じーさんが用意した鉄製の長剣ロングソードでだ。さすがに真銀ミスリル製で試す勇気はない。盾と矛の話になりそうな感じがしたからである。


 「よし、いくぜ、ライナス!」


 なぜか嬉しそうにバリーはライナスの胸部に剣を叩きつける。その瞬間、思ったよりも大きな金属音と共にライナスが後方へと踏鞴たたらを踏む。いや、やり過ぎじゃないか?


 「っつぅ~!」


 顔をしかめながらもライナスは何とか踏みとどまった。そして、みんなが胸部の真銀ミスリル製板金に注目する。


 「お、傷1つ付いてへんな」

 「おい見ろよ! 鉄の剣が欠けたぜ!」


 今度はバリーの持つ鉄製の長剣ロングソードに視線を向ける。確かに欠けていた。今使っている鉄製の剣は新品って聞いていたから、これはさっきの攻撃でできたものだろう。


 「あら、本当に丈夫なのね」

 「真銀ミスリルの板金のところで受ける必要はあるみたいやけど、革の鎧とは比較にならんな」


 ローラとじーさんも驚いて剣と鎧を見比べている。つまり、通常の攻撃なら大抵は受けきれるっていうことか。

 次は剣に魔力付与したときはどうなるのか試してみる。今度はバリーが受ける番だ。ライナスと同じように胸部の皮に取り付けられた板金で受ける。


 「あ、やっぱり傷ついてないな」

 「魔力付与エンチャントしてもか。かなり優秀なんやな」


 実際に攻撃したライナスと魔力付与したメリッサがバリーの胸部板金を見て感心していた。ちなみに、今度は刃こぼれしなかった。


 「それじゃ、次はローラとメリッサの服だな」

 「魔法への耐性が本物か確認するんやな」


 メリッサに対してライナスが頷く。

 魔法を撃つのは全系統が使える俺だ。そして、着弾したときに本当に効果があるのか確認するのはじーさんである。


 (それじゃ、最初はローラだな)

 「わかったわ」


 ローラの身につけている御手の守りは、四大属性と無属性を半分押さえて、闇属性ならほとんど無効にできると聞いている。実際のところはどうなのか、かなり小さい規模の火の魔法を1つ撃つ。


 「っ、わかっていても緊張するわね」

 「ふむ、確か効果を半減するはずやったな。見えてる範囲では半減してるようや」


 ローラの緊張をよそにじーさんが冷静にその効果を見極めた。それにしても、いざ本当に効果があるとわかると何か感動するな。

 残る水、風、土、無属性を順番に撃ち込んでいったが、火のときと同様だった。撃ち込まれる魔法の規模にもよるけど、これはなかなか使えるんじゃないだろうか。


 (それじゃ次は闇の魔法を撃つよ)

 「あれ、ユージ? さっきのよりも大きいわよ?!」


 動揺を見せたローラを無視して、俺は今までよりも大きい闇槍ダークスピアを撃ち込む。先程までの様子からすると、闇属性の攻撃はほとんど効かないはずだから、多少大きくなっても問題ないはずだ。

 俺の撃った闇槍ダークスピアは、ローラに当たる寸前に穂先から光に包まれて急速に小さくなっていった。ただ、消滅したわけではないらしく、ごく小さい闇槍ダークスピアがローラの体に当たった。


 「こりゃすごいな! ほとんど消えちまったじゃねぇか!」

 「全くやな! 教会もなかなかええやつくれたやんけ!」


 バリーとじーさんが同時に声を上げた。これから魔族と戦う俺達としては、これは非常に心強い結果だ。


 「ほとんど何も感じなかったわ。これなら魔族とも戦えるわね」


 ローラも自信がついたようだ。

 さて、次はメリッサだ。ローラと同じように四大属性から順番に撃ち込んでいく。


 「ちょっ?! なんでローラのよりも大きいんや?!」

 (だいぶ慣れてきたから)


 俺は抗議を無視して、少し大きめの魔法をメリッサに試す。大体思った通りの威力で着弾してくれた。じーさんの言う通りの効果を確認できる。まぁ、孫にそんな変な物を渡すわけがないか。


 こうして数日の間、新しい武器と防具の効果を調べたり、使いこなすための訓練を繰り返したりしていた。結構時間がかかると思っていたが、予想以上に慣れるのが速くて俺自身驚く。

 そして暦が5月に変わった。今度は実際に使えるように実践的な修行をするために、レサシガムを出発する。新しい武具と自分達がどれだけ魔王軍に通用するか期待と不安を胸に秘めながら、俺達は最北の森へと向かった。

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