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三柱の子神

<原典>

三匹の子豚

 昔々、あるところに三柱の子神様がいました。

 一番のお兄さんが闇神アンバール、二番目のお姉さんが光神ソフィア、そして末の妹が邪神アンリです。

 子神様と言いながらでっかいですが、気にしてはいけません。


 三柱の子神様は親元から離れ、それぞれで自分の家を作ることになりました。


「ったく、めんどくせぇなぁ……」


 一番上の闇神アンバールは、藁の家を作ることにしました。一番簡単だからです。神様が藁の家って……しょぼ、とか言ってはいけません。

 藁をある程度の束にして紐で縛ります。そうして出来た束を円状に配置して円錐上の形を作り、頂点を紐で縛れば完成です。所要時間三十分で家が完成しました。


「まぁ、さっさと片付けてしまいますか」


 二番目の光神ソフィアは、木の家を作ることにしました。

 何処からか大剣を取り出すと、森の木を片っ端から切り倒していきます。自然破壊ここに極まれりです。切り倒した木は形を整えて木材とし、地面に突き立てて柱とします。四隅に設置した柱の間に更に木材を積み重ねていき、釘で固定していきます。ある程度の高さになったら屋根を作って完成です。所要時間は二時間でした。


「めんどくさい」


 末っ子の邪神アンリは頑丈なレンガの家……を作らずに、近くにあったダンジョンを占拠しました。所要時間三十秒です。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 作ったばかりの家で三柱の子神様が寛いでいると、山に住んでいる悪い黒龍がやってきました。

 まずは長男アンバールの藁の家です。


「闇神よ、ここを開けて我を家に入れてくれ」


 アンバールは呆れたように答えました。


「あぁ? アホぬかせ、入るわけねぇだろうが」


 ちなみに、藁の家は横幅が五メートル程ですが黒龍は全長二十メートルはあります。

 どう足掻いても入ることは不可能ですが、断られた黒龍はカッとなって怒鳴ります。


「よかろう、ならば斯様な家なぞ我のブレスで木端にしてくれよう!」


 黒龍が大きく息を吹き込みブレスを吐くと、藁の家は一瞬にして消し飛びました。木端も残りません。藁が木端になったらそれはそれで凄いですが。

 中から激怒した闇神アンバールが漆黒の槍を担いで飛び出してきます。


「手前ぇ、舐めた真似してくれんじゃねぇか!」


 激闘は暫く続きましたが、流石に相手は神様であり黒龍は負けてボロボロになり、這う這うの体で逃げ出しました。


「こりゃ堪らん、何処かで身体を休めなければ」


 逃げ出した先には、光神の作った木の家がありました。


「光神よ、ここを開けて我を家に入れてくれ」


 ソフィアは呆れたように答えました。


「馬鹿なことを言わないで下さい、どう見ても入らないでしょう」


 ちなみに、木の家の横幅は十メートル程です。

 やはりどう足掻いても入ることは不可能ですが、断られた黒龍はカッとなって怒鳴ります。


「よかろう、ならば斯様な家なぞ我のブレスで木端にしてくれよう!」


 黒龍が大きく息を吹き込みブレスを吐くと、木の家は一瞬にして消し飛びました。

 中から激怒した光神ソフィアが光の大剣を担いで飛び出してきます。


「よくもやってくれましたね!」


 激闘は暫く続きましたが、元より黒龍はボロボロの状態です。ただでさえ勝ち目は薄いのにそんな状態で敵う筈もなく、更にボロボロになって這う這うの体で逃げ出しました。


「こりゃ堪らん、何処かで身体を休めなければ」


 逃げ出した先には、邪神の乗っ取ったダンジョンがありました。


「邪神よ、ここを開けて我を家に入れてくれ」

「……………………」


 しかし、邪神アンリは答えません。


「よかろう、ならば斯様な家なぞ我のブレスで木端にしてくれよう!」


 黒龍が大きく息を吹き込みブレスを吐きますが、そもそも相手は家ではなくダンジョンです。如何に黒龍のブレスであってもダンジョンには罅一つ入りません。

 何度もブレスを吐く黒龍ですが一向に効果はなく、疲れ切った黒龍は荒い息を吐きました。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 すると、黒龍の目の前でダンジョンの入口の扉が開いていきます。


「フッ、我の力を思い知って恐れをなしたか」


 どう考えてもブレスは効果がなかったのですが、都合良く解釈した黒龍はダンジョンへと足を踏み入れました。



 ……そして、一歩目で落とし穴に落ちました。


「は?」


 その落とし穴は黒龍の全身がすっぽり入る程の大きな穴で、落ちてしまった黒龍は身動きが取れずに混乱しています。

 そんな黒龍に、穴の上から声が投げ掛けられました。


「待ってたぜぇ?」

「観念して貰いましょう」

「ご愁傷様」


 それは、槍を持った闇神アンバールと大剣を持った光神ソフィア、そして扇を持った邪神アンリでした。アンバールとソフィアは怒り冷めやらぬ様相であり、どうやらボコボコにしたくらいでは腹の虫が収まらなかったようです。

 邪神アンリはそんな彼らの様子を見て、黒龍に対する哀れみの表情を浮かべています。

 黒龍はこれから自分を襲う事態を理解し、声にならない悲鳴を上げました。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 アンバールとソフィアに更にボコボコにされた黒龍ですが、途中で流石に見かねたアンリが宥めに入り何とか命を長らえました。

 黒龍は助けてくれたアンリに感謝して忠誠を誓い、ダンジョンの守護を担うことになりました。仰向けになって腹を見せるくらいの忠誠心を発揮しています。

 家を失ったアンバールとソフィアも、居心地のよいアンリのダンジョンに居付き、みんなで仲良く暮らしましたとさ。


「いや、出てって欲しいんだけど……それか、家賃払って」

<配役>

子豚(長男):アンバール

子豚(次男):ソフィア

子豚(三男):アンリ

狼:ヴァドニール(偽)※本物は喋りません

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― 新着の感想 ―
ある意味、三柱の中で一番原始的な家はアンリなんだよな。言ってしまえば洞窟だし。
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