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不思議の国の邪神様2 ~大きくなれ大きくなれ~

不思議の国の邪神様1:2015/09/25 20時投稿

不思議の国の邪神様2:2015/09/25 21時投稿←いまここ

不思議の国の邪神様3:2015/09/25 22時投稿

不思議の国の邪神様4:2015/09/25 23時投稿

 広間を後にしたアンリが歩いていると、いつの間にか周囲は森になってました。

 薄暗い森には不気味さを感じましたが、来た道を引き返しても意味がありません。

 アンリは仕方なく、そのまま歩き続けました。


「ん?」


 しばらく歩いていると、前方に奇妙なものを見付けました。


 アンリの背丈よりも大きなキノコ、そしてその上には豪奢な司祭服を纏った金髪の青年が寝っ転がっています。


「……何やってるの?」

「おお、これはアンリ様! 奇遇ですね!

 これはあれです……イモムシです」


 意味不明だった。


「そう、よかったね」

「はい、ありがとうございます!」


 敢えて突っ込まずに流すアンリに、金髪の青年は朗らかに礼を述べた。


「ところで、ここに来る前にある広間の大きな扉、どうやって開ければ良いか知ってる?」


 関わりたくない気持ちが大きかったアンリですが、折角会話が出来そうな相手が見付かったので、質問してみました。


「ふむ、なるほど。

 それならば、このキノコを使えば宜しいでしょう。

 右の傘を食べれば身体が大きくなり、左の傘を食べれば身体が小さくなります」


 青年の言葉に、アンリは彼が乗っている巨大なキノコを見上げました。


 これを……食べろと? しかも、生で?


 躊躇するアンリの様子を見た青年は、キノコの上から飛び降りると、何処からともなく料理道具を取り出して、キノコの傘を包丁で切り取ると料理を始めました。


「どうぞ、こちらをお持ち下さい」


 あっと言う間に料理を終えると、青年は二枚の皿を差し出してきました。

 片方にはキノコの串焼きが、もう片方にはキノコスープが並々と注がれています。


「串焼きが身体を大きくする作用、スープの方が小さくする作用があります」

「……ありがとう」


 思い掛けない展開に呆然としていたアンリですが、お礼を言いながらその場を立ち去りました。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 最初に落下した時の広間に戻ろうとするアンリですが、辺りの景色は見覚えが無いものへと変わっていきました。

 来た道を戻っている筈なのに、いつの間にか違う方向へと来てしまったようです。


 アンリがしばらく森を歩いていると、今度は樹上に薄い緑色の長髪をした男が寝っ転がってました。

 この世界では寝っ転がるのが主流なのでしょうか。


「……何やってるの?」

「ああ、手前か。

 見りゃ分かんだろ……猫だよ」


 どこがだ。


 思わずツッコミたくなるアンリでしたが、言ったところで無駄なのは目に見えてます。

 青年の頭の上に付いているネコミミにも敢えてツッコミません。

 アンリは荒らぶる右腕を必死に抑えながら、道を訪ねました。


「この先で三月兎と狂った帽子屋、それから眠り鼠が茶会をやってっから、そこで聞きな」


 そういうと、青年はにゃあにゃあという笑いを残して掻き消えるように消えていきました。

 望んだ回答は得られませんでしたが、アンリは青年の言葉に従って彼が指差した方へと足を運びました。



 しばらく行くと、森の中にテーブルがあり三人の銀髪の男達がお茶会をしていました。

 いえ、正確に言うとお茶会をしているのはそのうちの二人だけで、一番体格の良さそうな一人はテーブルに突っ伏してグーグーといびきをかきながら眠っています。

 残りの二人はウサ耳を付けた短い髪の青年と、帽子を被り片眼鏡を付けたインテリ風の青年です。


「………………はぁ」


 道を尋ねたいのは山々でしたが、あそこに混ざる気にはなれません。

 アンリは三人に気付かれないように、忍び足でその場を離れました。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 当てが無くなってしまったアンリですが、歩いているうちに一本の大きな樹に扉が付いているのを見付けました。

 扉を開けて入ってみると、なんとそこには最初にアンリが落っこちた広間がありました。


「大きくなれ大きくなれ」


 アンリは念じながらキノコの串焼きを恐る恐る齧ってみます。

 すると、アンリの背丈がグングン伸び、巨大な扉の取っ手に十分手が届く大きさになりました。

 アンリは金色の鍵を使って扉を開けました。

 その後、キノコのスープを飲んで背丈を元に戻しました。

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