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戦慄の人魚姫

<原典>

人魚姫


前話「リトルマーメイドの悲恋」と繋がっております。

しかし、前話で満足されたなら蛇足になりますので読まれない方が良いかも知れません。

微ホラー風味

 深い海の底にお城がありました。

 そこに住むのは人魚の王様でした。

 王様には三人の姫が居ましたが、その中でも一番末の姫はとても綺麗でした。

 腰まである金色の髪に透き通った肌、整った顔立ちに大きくパッチリとした紅い瞳、すらりとしながらも歳不相応に大きく実った胸。そして、滑らかな尻尾。

 額に刻まれた黒い紋様が神秘的な美しさに拍車を掛けます。


 二番目の姫であるアンリはその末の姫のテナをとても可愛がっていました。

 素直ではないアンリはあまり直接は口や態度に出さないものの、歳の近い彼女のことをずっと気に掛けていたのです。


 そんなある日、テナは海辺の国の王子に一目惚れをして、邪神?と契約して人間の姿になって王子に会いに行ってしまいました。


「どういうこと?」

「どういうことと聞かれても、僕は彼女の願いを叶えただけだよ」


 アンリはその尻尾で邪神?を締め上げると詰問します。

 テナが王子と結婚出来ないと海の泡になって消えてしまうことを知り、真っ青になりました。


「どうすれば助けられる?」

「そうだねぇ、王子と結婚するために人間になったのだから、その願いを捨てれば願いはキャンセルされるよ。

 そこに転がっているナイフで王子の心臓を貫き、その血を足に塗れば元通りだ。

 勿論、王子を殺すのは彼女自身でないとダメだけどね」


 釘を刺すように取って付ける邪神?にアンリは苦い表情になりました。

 テナが一目惚れした王子を殺せるかと考えると、その可能性は低いと言わざるを得ません。

 しかし、一旦はその可能性に賭ける為、アンリはナイフをテナのもとに届けると、王子の心臓を刺して血を足に塗るようにと伝えました。


 しかし、やはり安心は出来ません。

 アンリは邪神?のもとに戻ると、更にキツく締め上げました。


「テナが王子を殺せなかった場合、他に方法は皆無なの?」

「う〜ん、オススメは出来ないけれど方法は無いこともないよ。

 他の誰かが契約して、彼女を救うことを願えば良いんだ」


 その言葉に、アンリは躊躇なく頷きました。


「テナが王子を殺せないことを条件として、あの子を救う契約を結ぶ。

 代償は……海辺の国に住む全ての人間の魂」

「あはは、妹一人を救うために万を超える人間を犠牲にする気かい?

 大した姉妹愛だね、狂っている!」

「貴方に言われたくない。

 それに、あの子の気持ちを踏み躙った人間達には報いが必要」

「悪いのは勘違いした王子とその命の恩人に成り済ました娘だけで、他の人間には関係ないと思うけどね」


 邪神?は呆れたように言うが、アンリの気持ちは治まりません。


「まぁ、僕は別に良いけどね。

 いいよ、その契約……引き受けよう」




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 アンリは泡となって危うく消えかけたテナのもとに姿を現すと、無事彼女を救って城へと連れ帰りました。

 父親である国王やもう一人の姉であるレオノーラと共に、心配を掛けたことに対するお説教を散々にすると、彼女は泣きながら謝るテナの頭を撫でて貝のベッドへと寝かせ付けました。

 そうして、妹が完全に寝入ったことを確認すると、アンリは海上へと向かいました。


「──────ッ!」


 海上に上半身を出した状態で、海辺の国の方を眺めます。

 やがてアンリは静かに目を閉じると、念じ始めました。

 邪神?から預かった力により、先日の嵐で海に投げ出されて命を落とした人間達の死体がアンデッドとなり蘇ります。

 海底を歩いて海辺の国に向かったアンデッド達は、静かに海辺の国を襲い人間達を殺していきました。

 殺された者は新たにアンデッドと化し、海辺の国は一晩にして滅亡を迎えました。

 勿論、テナが愛した王子も、その命の恩人を名乗っていた娘も一緒です。


「これで良いのかい?

 彼女が知ったら、恨むんじゃないかな」

「あの子には知らせない。

 この国の住人には、このまま生きていた時と同じように過ごして貰う」

「そこまでするのかい、大した執念だね。

 まったく、恐れ入ったよ」





 人魚達が住まう海底の城から一番近い海辺の国。

 そこに住む住人達は歳を取ることもなく、いつまでも若々しい姿のまま幸せそうな暮らしを続けています。

<配役>

人魚姫:テナ

王子:???

魔女:邪神?

姉姫1:レオノーラ(名前のみ)

姉姫2:アンリ


本当はとても邪神な童話集

タイトルに偽りなし

本編と比べると凶暴さ十割増のアンリ様でした。

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― 新着の感想 ―
おう! 予想していたより遥かに悍ましい終わり方をしていた! 王子「半分気絶してたんだし、不可抗力………にはならないかなあ?」 少女「浜辺で倒れていたのを介抱していたのだから、嘘はついていないのだけど…
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