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神殺しの少年は世界の終焉を望む  作者: 桐生桜嘉
アシュレイの過去
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幸せな日々

ダイニングにアレシアとリヒトが行くと、既に子ども達も来ており、椅子に座って待っていた。


「おーそーいーっ」


「なにしてたのー?」


子ども達は口々に二人に話しかける。

アレシアとリヒトは自分の席に座りながら、そんな子ども達に謝った。


「ちょっと魔法の練習をしてたんだよ」


「遅くなっちゃってごめんね」


二人がそう言うと、子ども達は素直に「いいよ」と言って、「早く朝ごはん食べようよ」と言う。

そんな彼らを見てフィリスが言った。


「全員揃った事だし、いただきましょうか」


「そうだな。じゃあ皆、手を合わせてー」


アドルフの言葉に、その場にいる全員が両手を合わせる。

それを確認するなり、アドルフは言った。


「いただきます」


「「「いただきます」」」


そうして朝食を食べ始め、アレシアたち“家族”の一日が始まった――。




その日、まだ姿を変える魔法を完全には修得していないアレシアが食料の調達をするのは危険だと判断したディーリアス夫妻は、アレシアが外に出るのを止めた。

代わりに行く、というリヒトのことも止め、今までアレシアが調達してきた食料が残っているのを理由に、その日も食料を調達するのをやめる。


「悪いけど、今後の生活もかかっているから、今日は一日魔法の練習をしてもらってもいいかしら」


フィリスがアレシアとリヒトにそう言った。

二人はそれに頷き、再び庭に行く。

背後で聞こえる子ども達の楽しそうな声を聞きながら、その声を守りたいという思いを心に、魔法の練習へと取り掛かった。



昼食や夕食などの最低限の生活の時間以外は、全て魔法の練習にあてる。

一日中魔法や剣術の練習をしていた二人の体は、さすがに寝るときには疲れきっていた。


布団に入るなりすぐに夢の中へとおちる。




次の日、前日の練習のおかげか、アレシアは姿を変える魔法を完全に修得し、剣術もそれなりに身につけていた。

元々運動神経は良いのか、剣術の練習を重ねるにつれその強さは徐々に上がっていき、いつの間にかリヒトに並ぶほどになっている。


「これで今日は行ける! ありがとう、リヒト」


そう喜びながら笑顔でリヒトにお礼を言うアレシア。

僅かに耳を赤く染めながら、リヒトはそれに「どういたしまして」と返した。


「お母さん、お父さん。私行ってくるねっ」


「気をつけるんだよ」


「いってらっしゃい」


ディーリアス夫妻がそう言ってドアを開けて出て行くアレシアに手を振る。

アレシアもそれに応えるように手を振って外へと出て行った。


――その日は無事に食料を調達し終え、アレシアは家に帰った。


「ただいまー」


そう言いながらドアを開けると、いつも通り明るく出迎える“家族”の姿がある。


アレシアはその光景に幸せを感じ、そしてこの大切な家族のために貢献できていることを嬉しく思った。




こんな幸せな日々が、ずっと続く――。


この時、アレシアだけではない……そこにいる誰もが、そう思っていた。

少しも疑う事無く、それが当たり前だというかのように。


だが、この王家と抹殺対象者という歪んだ関係性において、そんな“当たり前”など通用するはずがなかった。


誰もが信じて疑わなかったその幸せな日々は、忘れかけた頃に壊れるものとなる――。


その儚く辛い現実に気付く者は、誰もいなかった。







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