独り憎悪を抱えて
この世界は六人の神によってつくられた。
火・氷・水・風・雷──
そして――
──光。
光は全ての創造主。
光によって五属性の神々が生まれ、その五人の神々によって五属性の魔法がつくられた。
彼らは“世界”をつくりだし、力の源となる“竜”をつくりだし、それを操る“人”をつくりだした。
そして。
──それらに生命を吹き込んだ。
そうしてこの“人間と竜が共存する世界”――【テウルギア】を生み出したのだ。
だが、神々は忘れていた。
朝があれば夜があるように。
太陽があれば月があるように。
──光があれば、闇があることを──……
やがて生まれた“闇”と呼ばれる者たちは、徹底的に殺されていった。
残滅されていったのだ。
黒が象徴の“闇”は、この鮮やかな世界ではあまりにも異様で、すぐに見つかってしまう。
“闇”というのは名だけで、一人も“罪人”のようなヤツなどいない。
──それなのに、ただ“闇”だということだけで、殺される。
一人として。
生き残った者はいなかった。
────ただ一人。
────僕を除いて。
何故僕が生き残ったのかはわからない。
僕のほうが知りたいくらいだ。
僕は独りだった。
そんな僕を救ってくれたのが、彼女だった。
髪も瞳も黒く、悪魔とさえ呼ばれていた僕と。
金色に輝く髪に、宝石のように綺麗でやわらかな薄桃色の瞳の、天使と謳われた彼女。
――僕と彼女は正反対だった。
それでも、ずっと独りだった僕に唯一手を差し伸べてくれた存在。
――唯一の、光だった。
何よりも、大切だった。
自分の命よりも。
この、世界よりも。
ずっと、ずっと大切だった――――。
彼女は僕にその手を差し伸べたがために、その手は……その真っ白な手は穢されてしまった。
――“闇”に味方する者。
すなわち、その者もまた“闇”だ――
光が絶たれた瞬間だった。
人々は、自分たちが天使と呼んだ彼女を、いとも簡単に裏切った。
“悪魔の仲間”“魔女”と呼び、恐れ、そして――
――殺した。
――――あいつらのほうが、ずっと――――
――――ずっと――――
――――罪人らしいじゃないか――――
こうして僕はまた
独りになった。
独り
世界への
神への
憎悪を抱えて。
――――「罪なる者には、それ相応の罰を」――――
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