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編成試験

「貴様……馬鹿にしているのか……」


執務室に入ったアルフォンスを見て、アレックはそう言い怒りの表情を見せる。


「馬鹿になんかしてないよー。ただあんまりきっちりしたのが好きじゃないだけ」


少しだるそうにそう言うアルフォンス。


「それで? なんでまたここに呼んだわけ?」


そう問う彼に、火王は言った。


「ちょっと騎士団のことで話があってな」


少し間をおいて、火王は魔法でもう一人の自分を作り出す。

分身の魔法でつくりだされたもう一人の彼女は、椅子に座る本体の横に立ちアルフォンスを見ていた。

そしてそのもう一人の火王が言う。


「私についてこい。騎士団まで案内しよう」


そして扉のほうへ歩き出した。


「アレック。お前もついてこい。ただし分身な」


「はっ」


彼女は変わらず微笑を浮かべる。

しかしアルフォンスは見逃さなかった。

アルフォンスの横を通り過ぎた瞬間、その顔がわずかに険しくなったのを――。






「ここが騎士団の訓練所だ」


そこは競技場だった。

広い円形のフィールドの周りを囲むように座席がいくつも並んでいる。

そこにはすでに騎士団の騎士たちが集まっていた。

騎士たちは火王が来たことに気付くと、動きを止め彼女の周りに集まる。


「訓練中に悪いな。……改めて紹介しよう。新しく騎士団に入った、アルフォンスだ」


火王がそう言ってアルフォンスを紹介した。

アルフォンスに向けられた騎士たちの目線はどこか鋭く、まるで敵に向けるそれのようだ。


「よろしくー」


そんな目線を少しも気にすることなく、アルフォンスはいつも通り笑みを浮かべてそう言う。


「早速だが、訓練を始めるとしよう。……といっても今回は編成を考えるための、いわば試験だな」


その言葉に騎士たちの表情は僅かに暗くなり強張る。

元より編成はちゃんと考えてあった。

だが闇との戦闘により騎士団は大きな痛手を受け、そのせいで元々考えてあった編成が意味をなさなくなったのだ。

そのため今回試験を行い、再び編成を考え直す必要がある。

騎士団にいる者達はそれがわからないほど馬鹿ではない。

今まで騎士としてやってきた経験があるのだから。


「……忘れろ、とは言わない。ただ、引きずるようなことはするな。今後の闘いに差し障る。……それを死んだ者たちも望まないだろう」


火王が騎士たちにそう言うと、彼らは一瞬表情を歪めた。

そして僅かに息をつくと気持ちを持ち直したのか、その表情は凛々しいものへと戻る。


火王はそんな彼らを見て微笑を浮かべた。

そして、試験を行うべく指示を出し始める。


大体の指示が終わると、最後にアルフォンスに言った。


「アルフォンス、お前は一番最初から闘え」


「あー、もしかして、ボクだけ一人?」


「そうだ」


編成をし直さなければならない者達だけで三人一組のチームを作り戦闘を行い、それ以外は見て学ぶ。

そんな中アルフォンスだけが一人、それも最初から闘うという。


「随分な鬼畜仕様だね」


「どこがだ……。お前には丁度いいだろ」


アルフォンスの顔には、どこか残酷な笑みが浮かべられていた。





火王含めた見学する騎士たちと順番待ちの騎士たちが観客席へと行き、一回戦目に闘う者達がフィールドに残る。


「相手が新人、しかも一人か……」


「俺たちもなめられたもんだな」


「……まぁアーデント様が言うに強いらしいし、一応気を付けておこう。軽んじるのはどの闘いにおいてもよくない」


アルフォンスが一回戦目に闘う相手の三人はそんな会話をしながら、フィールドの中心に歩いてきた。

アルフォンスは変わらず、あの読めない笑みを浮かべている。


「よろしく。……ボクを、楽しませてね?」


その言葉に三人の騎士たちは眉間に皺を寄せた。


「お前こそ、俺らを退屈させんなよ」


三人のうち一人がそう言う。


そして騎士団長でもある火王アーデントが作り出した分身が審判となり、アルフォンスと騎士たちの間に立った。


「両者、位置へ」


その言葉を合図に、両者とも正反対のほうへ行き定位置まできて向き合う。


「戦闘――――開始っ!!」



そうして戦闘が始まった――――。















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