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死神の制裁

闇の者全員がアルフォンスによって殺された。


最後の一人を殺したとき、アルフォンスは小さく静かに魔法を唱える。



死神トート制裁シュトラーフェ――……」



誰にも聞こえることなく唱えられたその魔法。


それによって、少年と騎士たちにとっての時が止まった。

正確には、周囲の時間が止まる。

体は動くものの、彼らを取り囲む世界が時を止めたのだ。その証拠に、宙を舞う木葉が落ちる気配がない。


「な、なんだ、これ……」


「何が起きてる……?」


この状況に訝しみ周りを見回す騎士たち。


「時間が、止まってるのか……?」


「そう、みたいだ」


一瞬。


たった一瞬だ。



そう話していた二人の騎士たちの身体が上半身と下半身、真っ二つに分かれた。


痛みを感じる暇さえない。



ふと目の前を見てみれば、そこにはアルフォンスの姿があった。

彼は態勢を低くして剣を横に薙ぎ払っている。

その口元には笑みが浮かんでいた。



「貴様ぁぁぁぁああああ!!!!!」


仲間を殺したアルフォンスに怒り狂った一人の騎士が斬りかかる。


だが――



「ざーんねん」



振り下ろす前に、その心臓はアルフォンスの剣によって貫かれた。


「くそっ……あいつ、味方じゃなかったのかよ――!!」


「ふざけやがって……!!」


再び別の騎士がアルフォンスに斬りかかるが、彼は今さっき刺し殺した騎士の体を盾にし、斬りかかってきた騎士は必然的に仲間を斬るような形になる。

驚く騎士を盾となった死んだ騎士もろとも蹴飛ばし、剣を抜いた勢いのまま横に振るった。

すると、また一人迫っていた騎士の首が裂かれ、その者もまたすぐに死んだ。

先ほど蹴飛ばされ死んだ仲間と一緒に倒れこんでいた騎士が起き上がろうとした瞬間、アルフォンスはその騎士を刺し殺す。


さらに6人の騎士がそんなアルフォンスに一斉に斬りかかった。


だが、アルフォンスは着ているローブに隠し持っていた小型ナイフを瞬時に6本取り出し、それを一気に投げる。


すると放たれた6本のナイフは、斬りかかる6人の騎士の喉元に突き刺さり、彼らはその場に倒れこみ息の根を止めた。




「嘘、だろ……」




この短時間で、既にもう11人がアルフォンス一人に殺された。


ただでさえ、多くの闇の者達との戦闘で騎士たちの数は少なくなっている。


残る騎士たちはもう体力も気力も残っていない状態だ。



「――弱いなぁ」



少年(アルフォンス)が呟く。



「これじゃあ殺すほうも全然楽しくないんだけど」



そう言って刺してあった自身の剣を抜き取ると、残った騎士たちを振り返った。

戦闘により乱れた髪が、少年の目を覆っている。


「ひっ……」


しかしその髪から覗く右目は、ドラゴンのように瞳孔が鋭くなり金色に怪しく光っていた。


騎士たちは恐怖に思わず後ずさりする。


「うっ……うわぁぁぁぁぁああああああ!!!」


半ば投げやりに剣を振り上げ泣き叫ぶようにして少年に斬りかかった。


だが、彼らもまたいとも簡単に殺されていく。



「…………」



──騎士全員が少年によって殺された。


死んだ彼らを見下ろす少年の目は、まるで蔑んでいるかのよう。



少年は目線をそらすと、そのまま歩き出す。



「――――解」



少年のその一言により魔法が解け、少年の時間も進みだした。





歩きながら頬についた血を拭いとる。


そうしていると、視線の先に火神がいることに気付いた。


「あーんな所にいた」


そう呟き、アルフォンスはそっちに向かう。



その時、彼女の背後に闇の者がゆっくりと迫っていた。


「あ、一人逃してたみたい」


しかしその存在に火神は気付いていない。


「あーそっか。……気配、感じられないもんな」


闇の者達は少年を除き、皆元々普通の属性の者達だ。

闇に堕ちた者は既に命を捨てた身。

死んだも同然なのだ。

そのため生気を失い、生きている者には感じるはずの“気配”はない。


アルフォンスは思わず舌打ちをする。


「――あーあ、めんどくさいな……ったく」


ゆっくり歩いていたアルフォンスだったが、歩みを速め火神のもとに向かった。











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