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エヴァンの場合

日頃のエヴァンなら絶対に行けない蟹料理の店でクリスは上機嫌だった。


「ビジネスの話で申し訳ないが、今回のDELUGEの誕生は本当に奇跡だったんだ。あちらさんもよくバネッサを落としてくれたよ。感謝だよ。前のボーカルと同質のイメージを求めすぎたんだろうけど、ファンは決して同じものを求めているわけじゃない。進化を求めていたと思うんだ。その意味では失策とも言えるね」


バネッサを褒められてエヴァンもラルフも素直に嬉しかった。バネッサが手の届かないところへ行ってしまったのは正直寂しかったが、それも彼女が望んだ世界。

ジョージアではバネッサの父親がDELUGEのCDを知り合いにばらまいているらしい。


「ところで写真は見たかい?」


「はい、父の若い日の姿を見ることができました」


本当はもっと言いたいことがあったエヴァンだったけど。


「本当にレイクは実力もルックスも申し分なかったんだ。ずっと一緒に演りたかったよ」


「あの、ロートレックのメンバーはみなさん健在で?」


「ああ、亡くなったのはレイクが緊急参加するきっかけになったボビーだけであとはしぶとく生きてるよ。みんなほどよく枯れてはきたがね。それでね」


「はい?」


「今、おもしろい計画があるんだよ。レイクにも近いうちに連絡するつもりだが」


そこでクリスはワインをぐいっと飲んでいたずらを計画する子供のような口調で言った。


「ロートレック再結成」そして「期間限定」と続け、ウィンクした。


ホテルのベッドで今夜はラルフがエヴァンを抱いていた。いつもの逆。


「まさかだったよな」


ため息とともにエヴァンはつぶやいた。


「そうよね、まさかアタシたちと同じだったなんて」


「まあ父さんの場合はゲイじゃなくてバイだろうけどね、結婚して僕とイーサンが生まれてるんだから」


「ゲイじゃなくて感謝しなきゃ。あなたに出会えなくなるところだった」


「それにしてもクリスはよく全部の写真を見せてくれたよな、普通隠すだろ?」


「たぶんお父さんとあのドラムの人はメンバー公認のカップルだったのよ。それが当たり前すぎてやましいこともなかったんじゃない? うらやましいわ」


「僕たちがカミングアウトした時の父さんの態度もこれで説明がつくよ」


「アタシたちは自分たちのことだけしか見えてなかったけど、お父さんには違う意味で衝撃だったでしょうね」


「ふう、これからどうしよう? とりあえず」


「とりあえずなに?」


「キミを犯したくなってきた」


「エヴァンったら」


ギルバート家にひっそりと棲んでいた40年越しの亡霊と戦うための前哨戦だった。

ラルフのハガネの肉体を攻略したあとで


「明日、キミだけ帰ってくれないか? 仕事もあるだろ。僕はちょっと会いたい人がいる」


恋人の髪をなでながらエヴァンは計画を話した。


翌日、病院のカフェでエヴァンは伯母のスーザンと待ち合わせしていた。レイクの姉である。


「エヴァン、久しぶり! 小説読んだわよ、おめでとう」


母が亡くなったあと弟家族を献身的にサポート、ケアしてくれた大好きな伯母である。


「婚約者は? 一緒じゃないの?」


「ラルフは僕と違って忙しいんだ。今度正式に紹介するよ」


「楽しみだわ。で、相談って? 電話ですむ簡単な話じゃなさそうだから今夜うちくるでしょ? 急患でもない限り18:00には帰れるわ。はい、鍵。先に入ってて」


白衣をひるがえして颯爽と職場に戻る伯母をエヴァンはかっこいいなと思って見送っていた。と思ったら急に戻ってきて


「みんなにはナイショなのね?」


と確認した。


「今はまだ……」


「オーケー!」


ウィンクして再び職場に戻って行った。こんなかっこいいスーザンがどうして独身なんだろ? 父さんに似てるし美人だし。エヴァンはいつもそう思うのだった。



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