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ツーリングを少々(趣味は書道、クジラグッズ集め、それにツーリングを少々)

ツーリングを少々(趣味は書道、クジラグッズ集め、それにツーリングを少々)



1.

 岡本珠緒たまをは商事会社に勤める25歳のOLだ。父親の転勤に母親がついていったので去年から都内の一軒家に一人で住んでいる。趣味は書道とクジラグッズ集め。外見の方もだいたいこの説明を裏切らない、年配の方に人気があるタイプだ。

 そんな珠緒がある日突然バイクに乗ろうと決めた。しかし珠緒にはバイクに乗る友達がいなかったので、予備知識もないままに近くの教習所を訪れた。

 教官から「今までバイクに乗ったことは?」「じゃあスクーターは?」「四輪でAT車以外運転したことある?」と聞かれて、全て首を横に振り溜息をつかれた。「……じゃあこれ起こしてみて」と言われ、目の前に横倒しになっていたバイクを運良く起こせた時にようやく、教官がほんの少し眉根をひらいた。それがテストだったことは後から知った。


 学生時代からそこそこ優秀で我を張る性格でもなく文化部だった珠緒は、そのまま社会人になり総務部に配属になった。皆が珠緒のところに色々な申請用紙を持ってきては「よろしく」と置いていく。そうやってほとんど人に怒られることもなく和やかに生きてきた。だから実技の1時間目でいきなり教官に「何やってんだ!」と怒鳴られてひどくショックを受けた。何故怒鳴られたかも分からないし、お金を払って教習に来ているのに何故自分が怒鳴られなくてはいけないのだろうかとも思った。もうこのまま辞めてしまおうかとまで思いながらの帰り道、たまたま立ち寄った書店で初心者向けのバイクのハウツー本を手に取った。

 そこでようやく教習所に行くよりまず先に本を買えばよかったのだと悟った。最初に教習所でバイクを起こしたのが「見きわめ」といわれるもので、結果によっては自分が申し込んだコースをあきらめるよう説得されるところだったと知ったのもこの本からだった。そしてこの日に教官から怒鳴られた「シセン!」というひとことが、

「特に初心者のうちは視線の向いた方に知らず知らず進んでしまうので、コーナーの出口で外側を見るのはとても危険です。視線はこれから進む方へ向けましょう」

という意味だったことも知った。

(そんなの分かるわけないのに!)

 珠緒は内心憤りながら本を閉じた。しかし本を持ってレジに向かいながら、教習所を辞めるのは止めることにした。


2.

 二輪には路上教習がないので、教習所内で行われる卒業検定に合格すると放り出されてしまう。車の免許を持っている珠緒は筆記試験が免除され、運転免許センターで適性試験に合格したその日のうちに普自二の文字が入った免許証を受け取ることができた。

 これで400cc以下のどんなバイクにも乗れる。乗れることは乗れるのだが……真面目な性格が幸いしたのか珠緒は一本橋と侠路は教習でも試験でも問題なく通過したが、8の字走行とスラローム走行については教習中は必死でこなしたものの、今となってはもう二度とできないという妙な確信があった。

 でもその辺の道に8の字やスラロームがあるわけじゃないんだからきっと大丈夫、と町を疾走するスクーターのおばさんを見て自分を励ましながら、珠緒は初めてのツーリングの準備をした。


 出発は夏休みの二日目、あいにくの曇り空だった。

 朝6時、これは武者震いと自分に言い聞かせながら、珠緒はかすかに震える手でタンクバッグと防水のキャリーバッグをバイクに装着した。全部ピカピカの新品なのが更に不安をあおった。何故自分はバイクの免許さえ取ればどこにでも行けると思い込んでいたんだろう、もしかしてものすごく無謀な計画なんじゃないか、と今になって思い始めた珠緒だったが、それでもハウツー本に書かれた手順に従ってフューエルコックをオンにして少しアクセルを開け、セルのスイッチでエンジンを始動させた。

 一昨日の夜、バイク屋さんのお盆休み前ギリギリで納車されたばかりのバイクはトクトクと元気な音を立てて行く気満々という姿だ。珠緒もミラーにかけておいたヘルメットをかぶってストラップを締め、バイクにまたがった。

(ほとんど高速道路だし、急がなくたって絶対いつか着くんだから。JAFにも入ってるし大丈夫。)


 サイドスタンドを外すとリヤサスが沈んだ。取扱説明書を見ながらトリップメーターをゼロにしてミラーの位置を調整し、左手でクラッチを握り左足の先でギアを一速に入れた。教習所のバイクと違ってギアの入り方がずいぶん重たかった。珠緒はもしかしたら壊れているのかと一瞬不安になったが、新車だし大丈夫だろうと思いなおした。

 アクセルを少し開いて、そろそろと左手で握ったクラッチを離していった。「そんなに半クラ続けたらクラッチがすぐ滑るだろーが」という教官の怒声が耳によみがえる。

 もう一度クラッチを握りなおしてギアを二速に押し込み、珠緒のツーリングが始まった。


3.

 何度か車で走った経験があったので、首都高までのアクセスは比較的スムーズにいった。しかし普段何も考えずにナビの指示で走っているのとは違い、バイクはまるっきりの孤独だ。高速道路上でおぼろげな記憶と表示板を頼りに車線変更を続けながら珠緒は後悔した。せめて車で一度ルートを確認してから来ればよかった。

 左右から車に追い抜かれるたびにスリップストリームに吸い寄せられた。補修を重ねた古い道路は継ぎ目だらけだし、合流で前が詰まって停車すると高架になった道路自体がうねるように揺れていた。緊張して全身に力が入っているのが自分でも分かった。乗る前からずっと続く身震いもまだ収まっていない。

(用賀……東名……)

 ようやく見覚えのある分岐と案内板を見つけて、珠緒はほっと息をついた。


 東名に入って最初の港北パーキングエリアに寄りそこねた珠緒は、次の海老名サービスエリアでやっと休憩をとることができた。バイク用のパーキングに入ってギアを抜いてエンジンを切り、サイドスタンドを降ろしたところで転げるようにバイクを降り、近くのベンチにへたり込んだ。

「一人?」

 まるでナンパのような台詞だったが、話しかけてきたのは女性の声だった。珠緒が顔を上げるとライダージャケット姿の女性が珠緒の横に立っていた。

「はい」

「初めてのツーリング?」

「どうして分かったんですか!」

「なんとなくねー」

 珠緒より年上らしい女性が笑みをうかべた。片頬にえくぼがうかんだ。


4.

「やっとここまでは来たけど、本当に行けるか不安になってきました」

 肩を落とした珠緒を見て女性が声を立てて笑った。

「ここで帰ったっていいのよ。別に『何キロ以上走ったらツーリング』って距離で決まってるものじゃないんだから。一人でツーリング来ようと思っただけ偉い」

「全然偉くないです。友達が誰もバイクに乗っていないだけです」

「いいじゃない。一人は好きなペースで走れて無理しないから楽よ」

 そう言って女性がまた笑った。いかにも一人で何でもできそうな女性だった。

「ずっと乗ってるんですか?」

「そう、20年くらい」

「えええっ!」

 思わず叫んだ珠緒の前で、女性はおおげさにうなだれた。

「しまった。引かれた」

「そんなことないです! すごいです!」

「すごくない。長いだけ。私も乗り始めた時はこんなに長い間乗ってると思ってなかった」


 その女性は珠緒にペットボトルのお茶をおごってくれた。そして暖気をしながら自分のバイクでさっきまでの珠緒の乗り方を実演してみてくれた。

「こんな感じで入ってくるの見てて全身緊張してるなーって感じで微笑ましかった。腰が反り返って顎が上がってるでしょ。肘も伸びてるから手首に負担がかかるの。もっと背中を丸くして顎を引いて、体重は手首じゃなくて膝と腰で支える。前に大きなボールを抱えてるつもりで肘を外側に向けて、手はハンドルにしがみつくんじゃなくて軽く握る感じ」


5.

「こうですか?」

 珠緒が立ったまま少し前かがみになって真似してみると、女性が楽しそうに笑った。

「そうそう、速そうになった。ここでしっかり腹筋使うとお腹たるまないから。あとね、歌」

「うた?」

「そう。歯を食いしばってると体の力が抜けないから、何でもいいから歌うたってみて」

「はいっ」

 真剣に答えた珠緒に、女性はもう一度笑って言った。

「ほら、また力入ってる。力抜いて。じゃあ気をつけてね」

「はい。お気をつけて」

 ヘルメットをかぶった女性は最後にシールドの奥から目で挨拶を送り、スタンドを上げた。ちらっと後方確認をしてから片手を挙げてアクセルを開け、クラッチをつないでスムーズに出て行った。


「うわー、かっこいい」

 さっそうと出て行った女性を見送って(出発がもたついて恥ずかしいから先に行ってくれと頼んだのは珠緒だった)、珠緒もヘルメットをかぶって自分のバイクのエンジンをかけた。 が、荷物にかけたバンドを確認したりタンクバッグに入れた地図のページを開き直したり、一度キーを抜いてタンクを開けガソリンの残量を覗いてみたりと、さっそうと出発するには程遠いあれこれを経てやっと再出発となった。


6.

 家を出たときは曇っていた空もいつの間にか晴れていた。珠緒は教習所で習ったとおり長袖のジャケットを着ていたが、半袖のTシャツや袖なしの革ジャンを来たライダーをたくさん見かけた。ペースの遅い珠緒はどんどん抜かされながら、慎重に走行車線を走り続けた。首都高と違ってただまっすぐ走るだけだし信号もなければ歩行者もいないし、ギアも6速のまま走り続けるだけなので、慣れてみれば高速道路は一般道よりも走りやすかった。お盆で車の流れがゆっくりなのも、珠緒にとっては逆にありがたい。さっきの女性のアドバイスどおり思い出せる限りの歌をうたっていたら、身震いも少しおさまってきた。

(このまま走れば、九州までだっていけちゃうんだ。何時間くらいで着くのかな。)

 調子に乗った珠緒がそう考えはじめたころ、雲行きが怪しくなってきた。


 ぽつん、とヘルメットのシールドに水滴がついた。あわてて次のパーキングで合羽を着たが、その間にも雨脚はどんどん強くなってきた。再び走り出してほどなく道が川になった。

 雨がばちばちとにぎやかな音を立てているがヘルメットのおかげで頭と顔は濡れないし、合羽とブーツカバーのおかげで体も濡れない。雨用グラブは手に合うサイズがなくて買わなかったので手首から先だけは濡れていたが、想像したほどつらくはなかった。ただ車の跳ね上げる水しぶきとシールドにかかる雨で周りがよく見えないのが怖かった。ハイドロプレーニングという言葉を思い出して珠緒はそろそろとアクセルを絞っていった。

 どこかで一度休みたい。それに給油もしなくてはいけない。珠緒が待ちかねた浜名湖SA入口の表示が近づいてきた。左にウィンカーを出し、雨に煙る湖面に突き出すように建てられたサービスエリアに入った。


 ヘルメットをかぶったまま屋根の下に入り、革製のグラブを外した珠緒は声を上げそうに驚いた。

(わっ、手が真っ黒!)

 革製のグラブから手に色移りしていた。びしょぬれのグラブを雑巾のように絞ると黒い水が滴り落ちた。続いてプラセームを出してヘルメットからブーツカバーまで全身を拭いた。途中で何度かセームを絞りながら拭き上げてようやくヘルメットを脱いだ。


7.

 ヘルメットを脱いだ珠緒は笑顔だった。この状況で何で笑っているのか自分でも分からない。上から下までびしょぬれでトイレに入るのさえ身ぐるみ脱いでの大仕事だし、誰かと会話できるわけでもない、この状況がおかしくてたまらなかった。実は先程の緊張からアドレナリンが出すぎてハイになっているだけなのだが、珠緒本人は気付いていなかった。

 熱いココアを飲むとハイな気分も落ち着いてきて、濡れた合羽をもう一度着ることにためらいが出てきた。ひつまむし*に惹かれつつこの姿ではレストランに入れないとあきらめ、うなぎの押し寿司を買った。食べながらしばらく様子をみていたが、雨足のおさまる気配はない。

「行くか!」

 声に出してそう言うと、珠緒は再び合羽に袖を通し、ひやっとするヘルメットのストラップを首の下でもう一度締めなおした。


 伊勢湾岸道路は雨で普段より更にSF映画めいていたが、珠緒は路面と前を走る車の赤いスモールランプ、それに自分のスピードメーターからほとんど目を離すことなく通り過ぎた。

 四日市で伊勢自動車道に入ってすぐ光が差した。路面も白く乾き雨が降った様子はなかった。サービスエリアに入って合羽を脱ぎながら、ふと目を上げると空に大きな虹がかかっていた。

(やっぱり来てよかった。)

 さっき雨の中を走っていた時にはいったい何の修行だと思ったが、この虹はつらい修行に耐えた珠緒への神様からのご褒美のような気がした。

 虹に向かって伸ばした自分の黒く染まった手と、グラブと上着の袖口のすきま分一筋細く日焼けした手首を眺めて珠緒は笑った。黒いのは落ちるとしてもこの変な日焼けは会社で何て言われるだろう。そう思ってまた一人でにやにやした。


 再びバイクにまたがった珠緒は更にいくつかの有料道路を経由して海沿いを走る国道に降り、やがて日焼けした案内板の立つ海沿いの横道へ入っていった。トンネルというよりは昔風に隧道と呼びたい、大きな岩に手で掘ったらしい穴を抜けて小さな町営のキャンプ場に着いた。


*「ひつまぶし」は「あつた蓬莱軒」さんが商標登録されているそうなので、「ひつまむし」で書いています。


8.

 まずは家で何度か練習したとおり持参のツーリングテントを張って荷物を置き、併設された温泉に行った。鏡を覗くと排ガスで薄汚れどこかやつれた自分の顔が映っていた。じゃぶじゃぶと洗面器で顔を洗って体を流し、少し熱い湯にずっと同じ姿勢で固まっていた体を沈めたら気持ち良くて鳥肌が立った。

 温泉にゆっくり浸かって体をゆるませ、休憩室の自販機で買った冷えた牛乳を喉を鳴らして飲み干してから、珠緒はここが地元だという会社の先輩、大里にメールをした。

「無事着きました。温泉気持ちよかったです」

「いらっしゃい。後で顔出すよ」

 すぐに戻ってきた返事を見て、珠緒はひきつった顔で周囲を見回した。この風呂上りのすっぴんを大里に見せるわけにはいかない。来る前に化粧をしようと立ち上がった。

 大里は同じ会社の二年先輩だった。今までほとんど喋ったことがなかったが先日若手だけで集まった飲み会でたまたま隣になり、珠緒がクジラグッズを集めていると聞いた大里が実家近くにある博物館の話をしてくれた。

「こんど実家帰ったら何か買って来てあげようか」

「いえ! 私、自分で買いに行きます!」

 ちょうどもうすぐ卒検というタイミングに、アルコールが入って気が大きくなっていたのもあったのだろう。珠緒はそう宣言していた。その場で手帳を取り出しルートとお勧めのキャンプ場を大里から聞き出していた。

 その時にメールアドレスを交換していたから一言報告しようとメールしたものの、珠緒は大里に会いに来たつもりはなかった。でもこんな近くに知り合いが来ていたら顔くらい見にくるものなのかな……化粧を終えてそんなことを考えていた珠緒は、どうやら座ったまま少しうとうとしていたらしかった。


「たまちゃん」

 声をかけられて顔を起こすと、いつ来たのか白いTシャツ姿の大里が横に立っていた。

「せっかくテント建てたとこだけど今晩雨降るっていうから、テントやめてうち来なよ」

「えっ!? いえ、いいですよ」

 驚いた珠緒はいっぺんに目が覚めた。たまちゃん、と親しげに呼ばれたのはきっと、飲み会の席で皆が珠緒をそう呼んでいたからだ。部署の違う大里が珠緒の名前を前から知っていたとは思えない。そんな遠い関係で泊めてもらうわけにはいかない。それより何より、大里の実家に泊まったりしたら職場の同僚達に後で絶対恨まれる。

「濡れたテントは撤収大変だし帰ってから荷物開いてブルーになるよ。家はしょっちゅう友達泊めてるから慣れてるし大丈夫だって」


9.

 何度か辞退を続けたものの大里に心配をいちいち笑い飛ばされ、珠緒は何が正しいのか段々分からなくなってきて最後には説得されていた。珠緒のテントを手際よく畳んで積んだ大里が車で先導を務めた。

 珠緒はそれでもまだくよくよと思いながら後について大里の実家へ向かった。しばらく走ると先を走る大里が道端に車を寄せてウィンカーを出した。手で珠緒を呼ぶので少し前に出て並んだ。

「この店のわらび餅、うまいから」

 さっき手ぶらでは絶対に行けないと言い張った珠緒は、お願いだから途中で手土産を買いに寄らせて下さいと頼んであった。珠緒の遠慮をグラム換算したわらび餅は、ずいぶんと持ち重りする包みになった。


「ただいま。連れてきた」

 大里は引き戸になった玄関を開けて、珠緒がタンデムシートに載せていた荷物を玄関のあがりかまちに降ろしながら奥に声をかけた。

「いらっしゃい……あらっ! バイクっていうから、また男の子だとばっかり!」

 出迎えにやってきた大里の母が驚きの声を上げた。珠緒は『たまを』という名前の響きから男と間違えられることも珍しくない。反射的に謝った。

「すみませんっ、岡本と申します。突然お邪魔してしまってすみませんっ」

 すみませんを連呼する珠緒より早く、大里の母が立ち直った。

「いえいえ嬉しいわ、来てくれて。こんな近くでキャンプするって言うから水くさいわねえ、家に泊めてあげなさいよって私が言ったのよ。大したおもてなしもできないけどゆっくりしてって」

「お世話になります」

「あら、それわらび餅?」

「はいっ、お好きだと伺ったので」

 珠緒が手土産を差し出すと大里の母は笑い出した。

「これ雄二が選んだんでしょ。ここのわらび餅、一人で抱えて食べるくらい好きなのよ」

「大里さんっ、私、『ご家族の皆さんがお好きなもの』訊きましたよね?」

「俺もご家族の皆さんだよ」

 大里のいいわけを聞いて大里の母が更に笑い、珠緒も渋々笑いに加わった。笑っているうちに緊張がほぐれてきた。


10.

 笑いが収まったところで大里は珠緒を誘った。

「夕飯までちょっと近所回ってみない? いい道があるんだよ」

 『今日のノルマはもう全部走りましたが』という珠緒の思いはそのまま顔に出たらしい。大里が重ねて言った。

「ニケツでいく?」

 『にけつって何』という珠緒の疑問もまた顔に出たらしい。

「ああ、えっと、俺が運転するから、たまちゃん後ろ乗りなよ。……ごめんな、俺バイク乗る友達って野郎ばっかりだから。たまちゃんのバイクでいい?」

にけつ……にケツ……2ケツ……

「ああっ!」

 ようやく意味が分かった珠緒は激しく頷きながらそう叫んだ。

 大里が玄関脇の靴箱を開けるとヘルメットとグラブ、それにブーツが出てきた。ブーツの左足甲にはシフトアップでできたらしい傷が無数にあった。


 教官の後ろに乗って教習を受けたことがあるからタンデムは初めてではないが、大里の後ろに乗るのはなんだか気恥ずかしかった。これも職場で知られたら恨まれるだろう。自分でここまで運転してきたのに、後ろに乗るように言われてほっとしている自分を、珠緒はほんの少しふがいなく思った。

(まだ免許取ったばかりで二人乗り禁止されてるし、しょうがないけど。)

 先に乗った大里に続いて珠緒もまたがり、寄り添わないようできるだけシート後方に下がって背後のバーを握った。前の大里がミラーの角度を変えながら訊いた。

「まだ馴らしだよね。あんまり回転上げない方がいいよね?」

「あ、お任せします」

「準備オッケー?」

「はい」

 親指を立てた大里に同じ合図を返すと、大里が左足でサイドスタンドを外した。タンデムステップに足を乗せた珠緒も、膝に力を入れた。周囲を確認した大里がウィンカーを出して走り出した。


11.

(大里さん……うまいんだ。)

 エンジンの音に追い立てられるようにすぐシフトアップしてしまう珠緒と違い、大里のシフトアップは落ち着いてスムースだった。信号で止まった大里がヘルメットのシールドを上げて珠緒に呼びかけた。

「たまちゃん、ちゃんと乗ってるー?」

「乗ってますよ?」

「タンデム慣れてるの?」

「いっ、いえっ。全然。教官にも言われましたけど、二度目です」

「全然荷重が移動しないから乗ってないかと思った」

 信号が変わって大里はいったんシールドを降ろして前を向いたが、次の信号でまた上げた。

「後ろに人乗せるとよく変速ショックで後ろから頭突きくらうんだけど、たまちゃんはほんと乗せやすい」

「ありがとうございます」

「もうすぐ山道入るから。楽しみにしてな」

「えっ?」

 また大里が前を向いた。ウインカーを出して左の細い道に入っていった。前後に車の姿がなくなると、いきなり大里がアクセルを開いた。ぽんぽんとシフトアップし、コーナー手前でがんがんと勢いよくシフトを落とした。珠緒はエンジンの振動を全身で感じた。

(ムリ、絶対ムリ!)


12.

 珠緒の内心の叫びは届かず、大里はそのスピードのままコーナーに入っていった。珠緒にはありえない進入速度だが大里はなんなくコーナーを抜け出口に向かう。傾いた車体が真っ直ぐになるところでまたアクセルを開く。

(私のバイクーッ!)


 山頂近くに見晴台があった。大里がウィンカーを出してするすると駐車場に乗り入れ、エンジンを切ってヘルメットを脱いだ。

「結構走るなぁ。いい道だっただろ?」

 大里は楽しそうに言った。後ろの珠緒は返事をしなかった。大里が振り向いた。

「怖かった?」

「怖かったは怖かったです。私じゃ絶対曲がれない速度で曲がるから」

 あははは、と声を上げて大里が笑った。

「……でもくやしかったです。私のバイクなのに、大里さんの方がうまくて」

「ごめん。ちょっといいとこ見せちゃったな」

 大里が全然すまなそうでもなく謝り、すぐに男の子の顔になった。

「馴らしだから3千くらいまでしか回してないけど、今のミドルクラスって性能いいな」

「そうですか?」

「俺も何か鍵差したままでも盗まれないような奴、足代わりに買おうかな。今住んでるところあんまり治安が良くなくて、ずっとバイク実家に置きっぱなしなんだよね」

「大里さんは、いつからバイク乗ってたんですか?」

「高校の時から。そろそろ10年か」


13.

 珠緒は思わず大きなためいきをついた。

「途中でバイク暦20年以上の人に会ったんです。私よりバイク暦が短い人はまずいないと思いますけど、皆さん10年20年乗ってるんですよね」

「これからだよ、たまちゃん」

大里はそう言って慰めてくれたが、珠緒はまだしおれていた。大里がバン、と珠緒の背中を叩いた。

「元気出せよ。最初聞いた時はちょっと意外だったけど、結構さまになってたし。バイクなんて2、3年で降りちゃう奴がほとんどなんだから、すぐたまちゃんだって追いつくって」

「バイク乗ってる方って皆さん前向きですよね」

「バイクにはバックギアがないからさ」

「――そうですね! そうですよね!」

 大里の方に身を乗り出した珠緒に、大里が笑いながら手を横に振って見せた。

「冗談だよ。笑ってよ。それに最近のビッグバイクにはバックギアついてるし」

「そうなんですか」

 また真剣に頷く珠緒を見て大里が笑い出した。

「たまちゃん一生懸命で面白いなあ」


 横の自販機でペットボトルのお茶を買って、ベンチに座って飲みながら珠緒は大里に言った。

「途中であった人にも似たようなこと言われました。でも私は早く一生懸命とか言われないようになりたいです。もっと余裕で乗ってる感じになりたいです」

「ある程度緊張してた方が事故らなくていいよ。気がゆるんだ頃に気をつけた方がいいよ。ツーリングで事故起こすのもたいてい行った先じゃなくて、あともうちょっとで家ってとこだから」

 大里はフォローしたが、珠緒の気持ちは晴れなかった。サービスエリアで会った女性も大里も、本当に楽しそうに軽々と乗りこなしていた。自分が乗っている姿はきっと楽しそうには見えないだろうと、珠緒は悲しく思った。


14.

 見晴台から眺める海は穏やかだったが、空の端には薄黒い雲が現れていた。珠緒に大雨と虹をもたらした雨雲がここにもやってくるらしい。

「大里さんはバイクでどこまで行ったことあります?」

「一番長いのは日本一周」

「えー、凄い!」

「たまちゃんもできるよ」

「そうですか?」

「うん。気合があれば体力はそれほど要らないから。何がつらかったって、途中で『フェリー乗り場はこちら』って看板が出るのが一番つらかったな」

 珠緒が声を立てて笑った。大里が続けた。

「『長距離走者の孤独』って本があって。中身は読んだことないんだけど」

「アラン・シリトーですね」

「知ってる?」

「中学の時、図書委員だったんです。黒い表紙の文庫本」

「そうそう、それ」

大里が嬉しそうに答えて続けた。

「よく走りながらあの題名をよく思い出した。何で俺は馬鹿みたいにこんなとこ一人で走ってるんだろうって思いながら、でも走り続けないとそこでもう終わっちゃうんだよね」


15.

 今、大里さんは私と同じ言葉で喋っている。珠緒は不意にそう思った。珠緒も何でこんなことしてるんだろうと何度も自問しながら大雨の中を走ってきた。

 本当につらくて馬鹿みたいだった、でも馬鹿なことをしている自分が本当に楽しかった。

 珠緒はあの本に本当は何が書いてあるのか知っていたけれど、それでも大里があのタイトルに感じたことの意味は心に響いた。そんなことを言うとまた笑われそうだから口には出さなかったが。

「たまちゃんは何で突然バイク乗ろうと思ったの?」

 大里にそう聞かれ、珠緒は飲み会の席では言わなかった理由を話してみようという気になった。

「長いわりにたいした話じゃないんですけどいいですか?」

「うん」

「大学の時、ちょっといいなと思ってた同級生の男の子がバイク乗ってたんです。その子に『今度後ろに乗せてあげる』って言われてたんですけど、いつ誘われるのかなって思ってる間に、女の先輩と付き合い始めたんですよ」

「狭い世界ではよくある話だ」

「後で聞いたらその先輩は男の子の家に押しかけたんですって。『あいつ岡本のこと好きだったのにな』って他の男の子に聞かされて、好きな子がいても押しかけられたら押し切られちゃうんだとか、その子が私のこと軽く無視するようになったのとか、なんだか納得いかなくてずっともやもやしてたんです」

「しょうがない男だな。情けない」

 大里が笑った。珠緒は大里の顔を見て訊いた。

「大里さんだったらどうしたと思います?」


16.

「うーん。嫌いじゃなければ悪い気はしないだろうし、男として恥かかせちゃいけないみたいな気にもなるし、葛藤はするだろうね。他の子をこれから口説くより自分のこと好きって言ってくれる子を好きになる方が楽かなとか考えちゃったら、弱ってる時だと俺もふらっといっちゃうかも。男って結構ずるいんだよ」

 数年前の珠緒ならきっと大里の正直な返事に傷ついていただろう。でも珠緒は笑った。

「女もですよ」

 大里が意外そうな顔をしたが、珠緒は話を続けた。

「そしてここで突然話が変わるんですけど、この前ある人から付き合ってくれって言われたんです」

「えっ、そうくる?」

「ええ。その時私も思ったんです。好きって言ってくれる人がいるなら付き合っちゃおうかなって。相手の学歴とか会社とか結婚向きだし、確かお兄さんいるって言ってたな……なぁんて思ったら、ずっともやもやしてたものが急にぱあっと晴れたみたいになって、『そうだ、バイク乗ろう』って」


 大里が珠緒の隣で噴きだした。

「なんだよそれっ。全然つながってないだろ。どっかで聞いたようなコピーだし」

「いえ、ですからっ」

 珠緒も笑いながら言い訳をしようとしたが、大里に遮られた。

「分かるよ、何となく分かるけど、そこで普通は『バイク乗ろう』にはならないだろう」

「自分でもそう思います」

「それで付き合う話は?」

「お断りしました。もう私、バイクのことで頭がいっぱいになっちゃって」

 笑い続ける大里と一緒に珠緒も笑った。トラウマというほど大げさなものではないが時々ちくりとするトゲのように、あの時乗れなかったバイクの後ろに、何もしなかった自分に、何となくずっと心残りがあった。圧縮された混合気のような珠緒のもやもやにあのとき火花が飛んで『後ろに乗せてもらうんじゃなくて、前に乗ればいいんだ』とひらめいた。その爆発が珠緒を前に進ませた。


17.

 笑い疲れた頃に、大里が言い出した。

「ところで因縁のバイクの後ろ乗ってみてどうだった?」

「悔しかったです。同じバイクじゃないみたいだった」

「たまちゃんやっぱりタンデムシート向きじゃないな。あれだけ後ろ乗るのうまいのに惜しいな」

 そう言って大里はまた笑った。珠緒も大里に同意した。

 乗せてくれた大里には申し訳ないが、たとえ下手でも楽しそうに見えなくても、自分で自分のバイクに乗る方が楽しいと、人の後ろに乗ってみて初めて分かった。


「本当は」

 急に大里が真顔になったので珠緒はちょっと身構えた。

「さっき乗り味が違ったのは二人乗ってたからだよ。あのバイク、たまちゃんにはサスが硬すぎる」

 告白でもされるのかと一瞬でも思ったことで珠緒は少々恥じ入ったが、大里が何を言い出したのかと首を傾げた。

「どういうことですか?」

「入口でフロントに乗った荷重を後ろに移動させながら、リアに荷重が乗ったサスのボトムあたりでタイヤをグリップさせるのが理想のコーナリング。サスが硬すぎるとトラクションがかからないんだよ」

「……全然分からないです」

 さっきは大里は確かに自分と同じ言葉で喋っていた筈なのに、今度の大里の話は外国語のようだった。片手をバイクに例えて説明する大里を、珠緒はじっと見つめた。

「まあ上手くなりたいなら考えながら走ることだよ」

 珠緒と目があったとたんに大里はいきなり話を切り上げ、珠緒は目の前で扉を閉められたような気分になった。なんだかもやもやした。


18.

 大里と珠緒が戻った時には夕飯の支度は整っていて、珠緒は手伝いができなかったことを詫びて席についた。

「珠緒さん、たくさん食べてね」

「ありがとうございます。頂きます。――おいしーい!」

 珠緒は両親の都合で一人暮らしを余儀なくされ、他人様に作ってもらったものは何でも美味しいと思えるようになった。しかしそれだけでなく大里の母の手料理は本当に美味しかった。お盆で漁が休みじゃなければもっと美味しいものがあるのに、と大里の母はしきりに残念がったが、東京から来た珠緒にとっては想像のつかない領域の話をしているようだった。

 大里と大里の母は競うように珠緒を笑わせ、大里の父はあまり喋らないが一緒に笑っていた。非常識だと思われたら嫌だとか社交辞令なのじゃないかとか変な気を使いすぎてご好意を無にするところだったと、珠緒は今になってとても反省していた。

 まだ寝るには早い時間だったが、珠緒が疲れているだろうからと気を使った大里の母が早々に客間に案内してくれたので、珠緒はありがたく敷いてあった布団に横になった。窓の外ではとうとうやってきた雨雲が降らせる雨の音が響いていた。

(ご飯美味しかった……大里さんの言ってること分かるようになりたい……)

 そんなことを考える珠緒のまぶたの奥には、中央に白いラインが引かれてた道路が見えた。どこまでも続くラインを追いかけながら珠緒は眠りについた。


 翌朝、見知らぬ天井に混乱した一瞬後、大里の実家にいることを思い出した。身支度をして廊下に出ると、階段を降りてきた大里に出くわした。

「おはようございます」

「おはよう。たまちゃんが家にいるのって妙な感じだな」

「布団カバー外しちゃったんだけどよかったですか?」

「ああ、いいんじゃない。そのままで。たまちゃんすぐ出発したい?」

「え?」

「バイク調節してあげるよ」


19.

 朝食の後で大里は庭先に工具箱を出した。樹木や石でしつらえた眺めのよい庭で珠緒は、軍手をはめた大里がバイクを調整する様子を手も出せずに眺めた。庭の隅には不似合いなかまぼこ型のバイク用ガレージが設置されていた。珠緒は大里がどんなバイクに乗っているのか少し興味が湧いたが、昨夜聞いたバイクの名前を思い出せなかったのでその話題には触れないことにした。

「ちょっと握ってみて」

 珠緒が手をかけるとレバーは指先ではなく第一関節に届いた。握ってみると昨日より明らかに楽だ。

「純正より社外のパーツに変えた方がいいと思うけど、とりあえず帰るまで。海沿い走るんだったらクラッチ握る回数多くなるから」

「ありがとうございます」

「サスもちょっとだけ柔らかくしといた。最初は乗りにくく感じるかもしれないけど」

「はい」

「帰りはどうするの?」

「まだ考えてません」

「鳥羽からフェリーで伊良湖に渡るといいよ。今日ならフェリー乗れると思うから」

「はい」

 バイクを挟んで会話を交わしながら、ふと不思議な気持ちになって大里の顔を見た。いつも職場で見かける大里はスーツ姿で営業鞄を持って目の前を通り過ぎるだけの存在だった。それが何故か家に泊めてもらい一緒に食事をし、今はTシャツにジーンズで軍手をした大里にこうしてバイクを調整してもらっている。現実じゃないみたいだった。今朝、大里が言ったとおり『妙な感じ』だ。

「たまちゃん、聞いてる?」

「はっ、はい」

「あの道は景色見ててはみ出してくる奴とか突然停車する奴とか多いから、気をつけて。家に着いたら何時でもいいからメールか電話して。心配だから」

「はい」


20.

 出発の時には、大里と大里の両親が揃って見送ってくれた。

「じゃあ珠緒さん頑張って。また近くに来たら泊まりにいらっしゃい」

「またいらっしゃい」

「お盆はスタンド休みのとこが多いから、早めに給油しなよ」

 思い思いの言葉をかけてくれる一家に、珠緒はあのサービスエリアで会った女性を真似てなるべく格好よく片手を挙げて挨拶し、大里家を後にした。


 念願の博物館で珠緒はクジラの起き上がりこぼしや箸置きなど、他では見かけないちまちましたクジラグッズをたくさん手に入れた。目的を果たした珠緒は満足してそこから折り返し帰途についた。鳥羽で水族館に行こうと思っていたが、フェリーの時間までそれほどなかったので素通りしてフェリーに乗った。

 海路は行きの大雨の行程とは比べようがないほど快適だった。フェリーの中で赤福を買って食べながら浜松でうなぎを食べて帰ろうかとのんびりと考える余裕まであった。

 向こう側に着いて走り出してみると渥美半島は延々と長く、なかなか浜松にたどり着かなかった。うなぎ屋さんに入ったら料理が出てくるまでに1時間もかかった。しかしやっと念願のひつまむしを食べられて珠緒は満足だった。


 予定していたよりはずいぶん遅くなったが、途中でキャンプするにはもう都会に戻りすぎていたし、知っている土地だったので珠緒は少し無理をして走り続け、深夜2時に帰宅した。疲れていたものの、まだ気分が高揚して元気だった。

「無事帰宅しました」

 大里にメールを送ったら、すぐに電話がかかってきた。

「よかった。お疲れさま」

「お世話になりました。明日にでもお家の方にお礼の電話入れますね」

「あれからどこまで行ったの?」


21.

 珠緒は残りの行程を話した。大里はときに相槌を打ち、ときに自分のエピソードで珠緒を笑わせながら聞いてくれた。

「ああ、俺もツーリング行きたくなってきたな」

「行って下さい! 私、次は岩手に行きます!」

「岩手? 一人で?」

「ええ、岩手にもクジラの博物館があるらしいんです!」

「俺が小さいの買ったら、一緒にどこか行かない?」

 珠緒の頭に最初に浮かんだのは――またもや『職場の皆に恨まれる』だった。でも考えるより先に口は答えていた。

「はい。ぜひ」

 皆に恨まれることなんて、大里と一緒に走れることに比べたら全くたいした問題じゃない。答えてしまった後で、珠緒は自分にそう言い訳をした。

「楽しみだな。何買おう――あ、そろそろ3時だ。疲れてるのに長電話させちゃってごめん」

「誰かに喋りたかったので聞いてもらって嬉しかったです。また大里さんの話も聞かせて下さい」

 電話を切った珠緒は大里はどういう意味で誘ってくれたんだろうかとちょっとだけ考えたが、今日はもう頭が回らないので突き詰めないことにした。

(今日のノルマはもう全部走りました……)


 荷物の整理は明日するとして、ともかくシャワーだけは浴びないと寝られない。大きなあくびをひとつして、珠緒は昨日の温泉から400キロ以上離れた自宅の浴室へと向かった。

 

end.(2010/04/22サイト初出)

「ツーリングの二本目」に続きます

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