《500文字小説》ブルームーン
二度目の満月の夜だった。電車を待っていると反対側のホームに懐かしい顔を見た、気がした。
中学生の頃、幼馴染みの俊哉は自宅より私の家にいる事が多かった。彼の両親の喧嘩が絶えないからだった。
その夜、私は夕食も食べずに部屋に籠もっていた。片思いをしていた男子に彼女がいる事が発覚したのだ。
「沙樹、空見てみろ!」
俊哉が部屋のドアをやかましく叩いて押し入ってきた。窓に目を向けると、ぽっかりと満月が浮かんでいた。
「一ヶ月の間に二回満月があるのは珍しくて、二度目の月をブルーム-ンっていうんだ。願をかけると叶わない願いも叶うらしいぞ」
「……じゃあ、俊哉の両親が仲良くなりますように」
私は柏手を打って、そう言った。
「何でそんな事願うんだよ」
「だって、どんな願いも叶うんでしょ?」
彼は呆れたように私を見ていたが、柏手を打つと
「沙樹にいいヤツが現れますように。これで+-0な」
けれど、結局俊哉の両親は離婚する事になり、彼は母親について、この街を去っていった。
私は電車がホームに入ってきたのも構わず、階段を駆け下りた。そこで人とぶつかりそうになり、慌てて顔を上げると
「沙樹!全然変わってねえな」
あの頃と、同じ笑顔だった。
8月31日に載せられたら丁度よかったのですが……暦の上では秋ですし、秋は月が綺麗に見える季節ということで