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BOOK-ON 鍍金の刃事件

掲載日:2026/07/14

 少し昔。

 私が古本屋で、アルバイトをしていたときのお話。

 扉が開いたままの、事務室。

 店長が私にスマホを渡して、

「いいか、俺の顔だけだぞ。録画するのは、こいつの顔は写すんじゃねえぞ」

「音は?」

 スマホを受け取り、私は尋ねる。

「録音はOKだ。くそっ。忌々しい。なんで、犯罪者にこんなに気を遣わなくちゃならねえんだよ」

 後半のセリフは、他の人に聞こえないよう。

 小さく、けれど、力強く。愚痴る。

「分かりました、店長の顔だけ写せばいいんですね」

 事務室の開いたままの扉を背景に。

 椅子に座る店長が画角に収まるように。

 私は、カメラを。まわした。

 机には、ワゴンセール五十円の。

 古い漫画が、十冊以上重ねられていた。

 そして、机の向こう側。

 店長の反対側に。

 ランドセルを背負った。

 小学生の男の子。

 おっと、危ない。

 スマホを店長の方に向ける。

「お店がね。本一冊を売ると。いくら儲かるか。分かる……」

 店長は子供に。

 よく聞く、本屋が一冊万引きされると、その損害を埋めるために、何冊の本を売らなくてはいけないか。

 という話を説教した。

 本屋と古本屋じゃ。

 利益率が全然違うのだけれど。

 という考えは、もちろん私は、言わなかった。

「……分かってんの? 君」

 少年は何も言わず、ただ不貞腐れたように。

 小さく頷いただけだった。

「正直ね。君がただ、万引きをしただけだったら。まだ良かった。でもね。今回は手口が手口だから。簡単に、(ピー。編集にて。)すれば、見分けられるんだけれど。模倣犯が出たら困るからね。通報させてもらうよ」

「そ、そんな、だって、盗んだわけじゃ」

「盗難じゃなきゃ我慢できる? 示談だって我慢できねえよ!」

 店長は机の上に置かれた漫画たちの。

 ワゴンセール五十円の値札が貼られた。

 カバーを外していく。

 中からは、大人気漫画。

 『鍍金の刃』

 一巻二巻三巻………



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