放課後 2
月志摩の目を、俺は真っすぐと見ることが出来なかった。
しかし、このまま月志摩がボクシング部に行ってあのキャプテンなりに話を聞いてしまったら俺の事がばれてしまう。
おそらくだが、あのキャプテンは鉄兄から俺が着ぐるみを着ていることを知っているはず。だから今日の朝、キャプテンは執拗な勧誘をしてきたのかもしれない。
「その…… ボクシング部に行くなら俺も付いて行ってもいいですか?」
「あなたもボクシング部に用事がおありなんですか?」
月志摩はきょとんとした顔で小首をかしげた。
「まあ、勧誘されたので一応見学をしに行こうと思って」
「そうなんですか! でしたら一緒に行きましょう」
はにかんだ顔を俺に見せつつ、月志摩は一旦前に向き直ると再び俺の方を向いた。
「ちなみにボクシング部の場所はわかりますか?」
「いや、分からんっす」
月志摩は俺が場所がわからないことを知るやいなや、目の前を通るバスケ部に場所を聞いていた。さすがの行動力だ、その行動力のお陰で俺は少しピンチなのだが……
「あっちから下へ降りれるそうです」
「うい」
金魚のフン同様に月志摩についていく。薄暗い階段を降りるとそこにはボクシング部とウェイトリフティング部が汗を流していた。周りは鉄筋コンクリートの壁に囲まれていて、なんとも武骨なトレーニング場というのにふさわしい場所だった。壁には過去大会で優勝した時の賞状や新聞などが額に入れられ飾られていた。
「すごい熱気ですね!」
月志摩は興奮気味に口を開き、ボクシング部と書かれた簡易的なパーテーションの前までやってきた。
「あのー、ごめんください」
月志摩が部内に響く声を出す。すると、ボクシング部のほぼ全員が俺ら二人を良い言葉で言うと見つめてきた。こんな人たちに見つめられてはさすがに怖いって。
「ああ鼓太郎君とうとうきてくれたんだ、今日は来ないかと思ってたよ。その子は?」
キャプテン先輩は俺を見た後に月志摩に目をやった。勘違いされたくないのは俺が部活の見学で彼女を連れてくるような人間だという見方をされたくはないからだ。
「この人はある人にお礼がしたいらしくて、でもそのお礼相手がわからないそうなのでここに来たみたいっす」
「どうもはじめまして、月志摩京子と申します。今日はいきなりのお伺いで申し訳ありません」
「月志摩?ってあの月志摩家の?」
キャプテンも鉄兄と同じリアクションを取っている。月志摩もこんなのが毎回あるとさすがにめんどくさいだろう。
「知ってくださっているんですね。ありがとうございます」
月志摩は深々とお辞儀をした。
「それで、どうして名家のお嬢様がうちなんかのむさくるしいボクシング部に?」
月志摩はさっき俺にしたようにキャプテン先輩にもお同じように経緯を説明した。月志摩の話が進むたびに、徐々にキャプテン先輩の目がこちらに向いているような気がした。
これは、まずい。先輩は確実に知っている感じだ。
「ということがありまして、何か心あたりがあったりしないでしょうか?」
「それなら、今横にい……」
「あっ!とっ、先輩! ゴホン、いやーそんなもの好きが世の中にはいるんですね。大事な部活の時間にお邪魔してすみません、見学もできたのでそろそろ帰りたいと思います。ちなみに入部はしないので勧誘はもうやめてください」
俺は先輩の言葉を遮り、これ以上話を進めないようにした。先輩にするのは失礼だがやむを得ないだろう。
「そうか、入部はしないか。まあ気が向いたらいつでもここへ来てくれ、いつでも俺らは君を迎えるよ」
「ありがとうございます。っじゃあ月志摩行こうか」
「え? あ、は、はい」
俺は月志摩を連れてボクシング部をあとにした。
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話数の分け方がへたくそで申し訳ないです。




