第82話 押し固められる者
なんと5時半ばに投稿。
※■※■※ザッハーク視点のお話です※■※■※
俺は生まれてからこれほどの恐怖を味わったことがねぇ。王子として生まれ、大抵の奴は殴れば直ぐに言うことを聞いた。カネもたんまりあって、近隣から馬という武力を買いあさり、周囲の国力を下げまくった。大人になってからは、気に入らない奴は殺し、埋めてしまえばなんでも解決する。それを繰り返すだけでさらに俺へ忠誠を誓う奴が増えた。
もっと力が欲しい。そう願うようになり、魔術の研究を始めた。長く生きる古魔術まで手に入れることができた。悪魔という存在まで呼び出す術も得た。
そんな俺に力を積極的に貸したのは他でもない、悪魔だ。
悪魔の意見を取り入れれば、世界を統べる王になるなどとほざく。
このまま殺しを繰り返せば、世界など簡単に手に入る。だが、面白い。そいつの口車に乗ってやった。度重なる助言を聞き、最後に民を助けるなどとほざく愚かな王を殺したところまでは上手くいっていた。
あの日、悪魔が邪魔に感じた俺は、始末するように告げたのだ。
悪魔の様子が違っていたことにも気付かずに。
悪魔を兵のひとりが殺したと知ったときは、満足だった。飯も上手く感じたし、俺の機嫌も良かった。
飯を作る係に褒美を取らせると言い、優越に浸っていた。
その飯係は、姿を変えた悪魔だった。奴が新しい食事を味見させることを褒美としろと言うので、毒見もせず受けてやった。俺の肩からは悪魔の悪意が具現化し、常に激しい苦しみを伴った。
その苦しみを止めるためには、蛇に生きた人の脳を食わせるしかないと、その悪魔は言った。
俺は苦しさから逃れるため、怒りに満ちながらも従った。
悪魔は日に一度食わせればいいと言っていたが、聞く耳持たなかった。
苦しみが収まるまで城の者を襲い続けた。落ち着いた頃にはこの力を理解した。
頭を食った奴はその頭から蛇が生えて暴れ回り始める。そいつらはもう人でもなんでもねえ動きをする化け物になった。
肩の蛇は腹が満ちていると命令を聞く。こいつに噛まれた人間は、時間経過で頭がもげて、そいつも蛇の頭になる。これまで調べ上げたどんな魔術より憎悪に満ちた力。だが、気に入らなかった。
蛇になった奴らは俺を襲わないが、言葉がしゃべれない。
とてもつまらなく感じた。結局城にいた奴は全て蛇にするか、噛ませてこのことをしゃべらないようにした。
もう間もなくジャムシードの国へ攻め込み、天女をさらい、末永く続く俺の帝国を築くはずだったのにだ。
どうせなら民衆共を巻き込み、全てを蛇にしてしまえ。
……そう思って進軍を開始したのに。
神の雷か。天の裁きか。突然起こった災厄に対し、両肩の蛇で防御させた。だが、潰れたのは俺の肩と両手両足のみ。蛇は腹を空かせているようで、その状態でも死なない俺を引きずっている。
「はぁ、はぁ。止まれ。止まれ!」
何度命令をしても動きを止めない蛇だが、突然動きを止めた。動くたびに訪れていた激痛も、それと同時に止まった。
蛇の先には変なやつがいた。
子供を頭に乗せたやつだ。
半分が黒いモヤに包まれている。こいつは人間じゃない。悪魔だ。
蛇は黒いモヤを発する木の根っこに絡まれて動かなくなっていた。
蛇を引きちぎる絶好の機会だと思ったが、体は動かねえまま。
俺の首にも根っこが巻き付いていやがった。
「……突然しゃべったと思ったら、こいつを殺すなってどういう意味だよ、ソルージュ」
その悪魔はブツブツと何かをほざいているようだった。
「ふーん。平たく言えば、こいつが死ぬとこの世界が滅ぶってことか。それ、なんかまずいのか?」
「ダメだよ悪魔様。この国以外の人は蛇になってないんでしょ?」
「そっか。俺はクエストで立ち寄っただけだから、この国以外のこと、よく知らないんだよな。それで、俺にどうしろって?」
こいつ、子供と何の話をしている? 世界を滅ぼすだと? そんな力を持ってやがる悪魔なのか。なら……話は簡単だ。
「聞け、そこの悪魔。俺を助けろ。なんでもくれてやるぞ。どうしてもというならジャムシードの天女の片方を貴様にやろう」
「……なんだ? まだしゃべるだけの力はあるのか。人身売買の相談か? 漫画にでてくるマフィアかよ。おーやだやだ、こっちは高校生だぜ」
「高校生? それが悪魔である貴様の能力か?」
「高校生が能力て……まぁある意味能力だけど。職業か? ああ! そーいや職業、高校生だわ。これから違う職業になるだろうけど」
「……? 何を言っているんだ貴様は。とにかく貴様の力で俺を癒やせ」
「うわ。この長髪野郎、やっぱ俺のこと覚えてねーわ。さすがは王様殺しの大罪人だ」
「なんだと?」
こいつ、なぜそれを知ってやがる。
「戦うことを想定してたけど、そうでもなくてよかったよ。おいソルージュ、今いいとこ……なに? 槍と刺突剣を支配してるから手元に呼べる? そんな便利機能あるなら最初から教えてくれよ」
俺の言葉を無視だと!?
「右手を掲げろって……やるけどさ。このために力を温存していただと?」
「だから貴様は何を言っている!? さっさと助……」
「助かるわけねーだろクズ。お前は未来永劫、ここの観光地になるよう審判が下された。下したのは俺だけどな」
「ふざけ……!?」
言いかける前に異変に気付いた。
空がおかしい。あれはジャムシードの天女! そうか、俺の求愛が届いて迎えに……。
『殲滅の槍をここに』
『支配者の刺突剣をご主人様へ』
【蒼色の空矛】
違う、この二人……人間じゃなくなった俺なら分かる。もう人間じゃない!
「よせ、止めろ。止めろ!」
「うわ、ソルージュの力って結構グロイな……」
か、体が蒼色の何かに包まれ固まる!
おのれ、おのれ、おのれ、「おのれええええええええええ!」
「やかましいわ。もっと小声で叫べ」
「本当に我が君は英雄、フェリドゥーンの再来なのね。見て、この蛇の像」
「木といっしょに固まっちゃったけど平気なの?」
「さぁ? 少なくともソルージュに逆らわなかったからいいんじゃねーの。クエストも終わったはずだ。廻る天輪ってのは結局なんだったんだろ」
「これをグルグル―って回すんじゃない? ほらほらー!」
「そりゃ回る違いだろ……。ほら、ぶん回すと倒れるぞ。もっと根っこと枝で固めておくか」
「ふふふ、なんか面白いものになったわね」
「僕には見えないから分からないよぉ。それより悪魔様。おじいちゃん見なかった? 僕、心配してたんだけど」
「いっけね。じいさんは招集できなかったんだ。二人ともじいさんどうした?」
「城にいるわよ。そうそうあっちの報告もしないとね。宝物庫の中身は全部このアイテムバッグに入ったわ。返しておくね。ヨルダート様は最高の仕掛けを動かすって言ってたけど」
「宝物庫にいい物があったんだって。置いてかれて怒ってると思うから早く行きましょう?」
「僕、お城に行っていいの?」
「ああ。さぁ凱旋と行こうぜ。落ち着いたら激ムズ難易度クリア報酬、超お宝パーティーを開催だ!」
……体が動かねえ。しゃべれねえ。意識と苦痛だけが残りやがった。
覚えてやがれよ。その顔、絶対忘れねえぞ!
さて、82話とちょっとだけオーバーしてしまいました。
もうじき報酬、職業ゲットとなりそうです。
さてさて……。




