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パクリマスオンライン 六つの企業が協力して完成された、最先端のTRMMORPG  作者: 紫電のチュウニー
第2章 大陸への航路を求めて

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第81話 天輪に映る笑顔

暖かくなってきて朝の目覚めが辛くなくなってきました! しかし寝ていたい。

 ブレスの跡が残る正面ではなく、焦げた民家の片隅かたすみにある木箱のに背を預けた。

 アイテムバッグをシャフナーに託しちまったから、オーブの付け替えができない。

 左の目がぼんやりと見えなくなってきた。


「ふう。全滅させた……よな」

「ゴホッ、ゴホ。誰か、誰かいるの? 助けて、助けて!」


 木箱の中から聞こえる声には聞き覚えがあった。まさか……「この声、小僧か!?」


 急いで木箱を開けてみると、他人の返り血か、血まみれですり傷がある小僧が中に入っていた。


「お前、無事だったのか」

「うう、父ちゃんがなにも言わず、無理やりこの中に。僕、捨てられたのかな」

「……お前」


 なんて声をかけりゃいいんだ。俺が、バッカを……。


「父ちゃん、なんかおかしかった。周りの人たちが化け物だって。水がね、いっぱいかかったの。ねぇ、父ちゃん何があったの? 父ちゃん、悪いことした? 苦しい声がいっぱい聞こえたよ」


 ……またはらわたが煮えくり返ってきたような感覚だ。

 でも、小僧は生きてた。俺にはこいつを助けてやる責任がある。


「……バッカは死んだ。そのバッカを利用するやつがいたから止めた。あいつは契約を、破っちまったんだ」

「そんな気はしてたの。うぐっ、うぐっ……お父ちゃん。ねぇ悪魔様。僕、これからどうやって生きたらいいの?」

「小僧。俺と契約しろ。お前を守ってやる」


 激しく泣き始めた小僧。それでもなお、頑張って俺と話をしようとする。

 絶望するのはまだ早い。


「えぐっ……契約って、なにをすればいいの?」

「お前を連れ帰る。そして勉強するんだ。世界から必要とされるようになるほど。できるか?」

「僕、目が見えないよ。ひとりじゃ無理だよぉ……」

「ひとりでやれなんて言ってないぜ。お前はバッカを失ったけど、新しい家族、そう。可愛い妹を得る。無事に戻ることができたら、説明してやる」

「妹? 女の子? 家族?」

「そうだ。だが、前にも言ったことを覚えてるか?」

「えぐっ……うん。自分で、考えて。助けられるだけじゃなくて、僕も助けないといけないんだよね」

「そうだ。お前がミーコを助けられるくらい強くなれ。お前を助けたバッカのように。それができるようになるまで、俺がお前を守ってやるから」


 そう言って小僧をかついでやる。

 まだまだ小さい。体もきたえねーとだめだ。


「う、うん。でもどうして僕を持ち上げるの?」

「野暮用さ。直ぐ戻る。ちょっとだけ待ってろ」

「置いていかない?」

「いかねーよ。契約したんだろ? 置いてったら俺が裁きを受けることになるだろ」

「分かったよ。泣かないで待ってる」

「いい子だ」


 ウスバカゲロウを構え、ブレスを放出した方角を見る。

 あれほどの攻撃で、まだ全滅ぜんめつさせられていなかった。

 正面にいるのは、怪物のような姿をしたリースだった。こいつは蛇っぽい感じじゃない。虫とトカゲを混ぜたような気持ち悪い魔族にリースの顔が生えている感じだ。相応のダメージを負わせたようだが、よく生きてたな。


「やられた、やられた。あんな強い攻撃を受けたのは初めてだ。お前、只者じゃないと思ったが、なぜ邪魔をした」

「お前に手柄を横取りされた仕返しかな」

「ギャッギャッギャ。あの程度のことでか。それなら取引をしよう。まぬけな王が他国を取る手助けをしろ。そうしたら、その国はお前にくれてやる」

「俺さ。見た目が派手とか地味とかそういうのは気にしないんだけど」

「何を言ってる? やるのか? やらないのか?」

「虫っぽかったりグロテスクなのは苦手なんだよ。あと、えらそうに上から命令してくるやつ。お前、ダブルでダメだわ。ついでに言うとお前、心根こころねくさってるんだ。だからそんな臭いすんじゃねーの」

「調子に乗りやがって、ぶち殺して……体が動かん!?」」

「お前、もう死んでるし」

「な……」


 やっぱり、トレントはどの部位でも便利そうだ。

 がっつりと地面から伸びた根っこでやつをがんじがらめにされ、動けなくなったリースの首を飛ばすのは容易かった。

 ……飛ばしてもまだ動いてるけど。


「こいつの体、どうなってんだろ。みじん切りにしないとダメなのか? うええ、気持ち悪ー。どんだけリアルだよ」

「あ、悪魔の力をなぜお前がはっ!?」

「うっさいしゃべんな。触りたくないからトレントの木で埋葬まいそうしとこ。周囲に火があるから土葬どそう火葬かそう同時にできるや」

「や、やめ、やめ……ぎゃあーー!」

「俺、悪魔だし。トラウマだわこの光景。うええっ、気持ち悪ー」


 こんなゴミに容赦ようしゃする必要はない。ただのしゃべるモンスターだ。つってもこんなのモンスターオーブになったとしても必要ないけど。

 少しだけスッキリしたわ。

 ゆっくり小僧を置いた場所まで戻り、焦げた民家付近で焼け残った布類を拝借してきた。


「小僧、終わったぞ。その体についた……水、拭いてやる」

「うん、ありがと。僕ももう泣かないよ。悪い奴、倒してたんでしょ?」

「ああ。まだやることはあるけどな」

「僕も、悪魔様みたいに強くなれるのかな」

「さぁな。ちなみにお前の妹になる予定のミーコは魔法が使えるぞ」

「本当に!? 悪魔様みたいなことができるの?」

「それは無理だな。何せ俺は特別だ。はっはっは」

「ねぇ、お父ちゃんって恰好良かった? 僕、お父ちゃんに似てる?」

「ん? そうだな……男の格好良さは見た目じゃねーぜ」

「どういうこと?」

「たくましさっつったらいいのかな。動じない強さっつーか。けなされてもバカにされても芯が折れない強さ。大抵のことは笑って流し、いざってときは恐ろしいほどたくましく強い。そういった意味でバッカは恰好良かったんじゃないか」


 バッカは無抵抗だった。俺に止めてくれるのを待っていたかのように。

 この場にとどまっていたのも、小僧がここにいたからかもしれない。


 小僧を肩車すると、俺はブレスを放出した先へと歩き出した。

 リースの野郎が生きていたなら、ザッハークだって当然生きてるはずだ。

 ここでの戦いはもうじき終わる。

 その先にあるもの……廻る天輪ってやつを探さないと。

 ……いや、それはもう、ここに見つけたのかもしれない。


「小僧、こんな状況じゃ無理かもしれねーけどさ。笑ってみてくれよ」

「こ、こう? 悪魔様の肩車、ちょっとふらふらして怖いよぉ」

「こいつ、言うじゃねーか。ほれほれー!」

「わわ、危ないよぉ……ふふふ、あはははは」


 青い空に映る小僧の笑顔はまぶしかった。

 失った者の代償。どうかせめてもの救済をこいつに与えてやってくれ。天使ソルージュよ。

小僧のルオ君は無事でした。

もうじき長いクエストも終わり。

どんな職を得るのでしょうか。

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