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パクリマスオンライン 六つの企業が協力して完成された、最先端のTRMMORPG  作者: 紫電のチュウニー
第2章 大陸への航路を求めて

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第79話 安息なる終わりはあり得ない

珍しく朝に投稿できました。。

 どのくらい眠っていたのだろうか。モンスターオーブを外した影響か、右半身と左手以外ほとんど動きそうにない。うっすらと目を開くと、美しい声で歌っているシャフナーの顔があった。

 ……戦いの後に刺激が強い膝枕ひざまくらの目覚め。なるほど、すごいリラクゼーション効果だ。最後に見せたソルージュの力よりよほど、俺には効果があるよ。 少し離れた場所にいるアルナーが俺の方へ駆け寄ってくるのが見える。もう少しこのまま眺めていたいが……そんな時間、無いよな。


「姉さん、そろそろ私が代わるね」

「いいわよ。だってあなた、飲み物を……ああっ!」


 そう、アルナーは駆け寄っていたんだ。ここがどこだかは知らないが、狭い空間で。走る必要なんてあるはずもない。そして飲み物を俺の下半身目掛けて全てぶちまけた。


「いやーん」

「……女に手を挙げたりしない主義だが、さすがにこいつ、引っぱたいていいか?」

「あら、起きてたのね。それとも今ので起きちゃったのかしら。うふふ、刺激的な目覚めだったわね」

「ご主人様、脱がせてキレイにします……」

「自分でやるわ! ったく天女のような声で目が覚めたと思ったのに……あっ」


 余計なこと言っちまった。シャフナーの顔が真っ赤だ。でも歌が上手かったのは事実。地底にいたあいつとコンビを組めば、歌姫アイドルとしてデビューできると思ったくらいだ。

 っと、ズッコケ女が俺の話を聞いてねぇ! 


「おい、考えごとしてる間にズボンを降ろそうとすんな!」

「えへへ……」

「えへへじゃないだろ、ったく」


 酒を飲まなきゃまともなシャフナーと違い、妹の方には苦労させられる。つか、交換用のズボンなんて持ってたっけ? 

 結局最悪な目覚めだったが、こいつらが無事でよかったよ。


「体はもう動けるようになったの?」

「いいや。動かすためにも俺の背中からバッグを取り外してくれないか」

「分かった」


 アイテムバッグを受け取ると、二人の視線がソレにくぎ付けになる。

 下半身の方じゃねーぞ、アイテムバッグにだ。

 こっちに引っ掛けられなくてよかったよ。


「それ、中身なにも入って無いわよね」

「うん。どうやって食料品を入れてたのかも全然分からなかった」

「ルーニー、モンスターオーブを全部出してくれ」

「ホロロロー」

「なに、今の声!?」

「不思議ね。鳥みたいな声だったわ」


 ぶっちゃけルーニーのことは俺にもよく分からない。アデリーといい妖魔の力といい、地底は不思議に満ちていた。

 地上にも雷帝という、ワイバーンの群れを滅ぼす力を持つ魔王がいた。

 この世界はクエストの世界だからか、あれほどの存在は見ていない。

 異能力に関しては……最後に見たソルージュの力は明らかに越えた能力だったが。

 

「……どうしたの? バッグの中ってそんなに面白いの?」

「見せてよぉー、ご主人様ぁー」

「お前に見せるとカバンの中にリバースしそうだから絶対に見せない」

「ケチー!」

「ほう? お前はコーヒーまみれの姿をした俺を見てケチというのか?」

「じょ、冗談です。あははは。こぼしちゃったから、コーヒー淹れてくるね!」

「悪いと思ってんなら薄めで俺の分も淹れてこいよ」

「はぁーい」


 アルナーの良いところは自発的行動が活発な点かな。気も利くんだろうけどいかんせんズッコケだ。それも現代社会じゃ個性のひとつ。貴重だと思うが本当に狙ったかのようにズッコケる。

 まぁ、じいさんと俺が苦労する分には……っとじいさんはどこだ? 

 ここには俺とシャフナー、アルナーしかいない。


「じいさんやバッカはどうした? 小僧も見当たらない。まさか巻き込んだか?」

「バッカって人と偵察しに行ったよ。ついでにあばら家の中に置き去りにしてた食料品も取りに行ってるわ。もう何度か往復してるんだけど」

「ここはどこだ?」

「ふふふ。自分を見失った人みたいなこと言わないでよ。おかしいわ」


 ……なんか妙にシャフナーが可愛く見えるんだけど。これも膝枕効果なのか。

 いやいや、こいつは元からスゲー美人だった。少し離れてさっさとオーブ付けよう。新しく付けないといけないオーブは三カ所。次はきっとザッハークと戦うことになるだろう。

 それならいっそ、山竜を付けてみるか? だが、どこにだ? あのクラスのオーブが手に入るなんてそうそう起こらないだろう。やっぱり胸か? モンスターオーブをひとつずつ確認していると、シャフナーが人差し指でそのひとつに触れて転がし始めた。

 さすがに反省しているのか、それ以上のことはしていない。していないというより、同意を求めているようだった。


「これが力の源なのよね?」

「ああ。モンスターオーブって言うんだ。今度は勝手に使わないんだな」

「うん。私ね、空に浮かんでたあなたを……いえ、我が君を見て確信したの。私たちはきっと、力になるためにここへやって来たんだって」

「もう力になってもらったろ。あのまま落下して放置されたらどうなってたか。牢屋にだって助けに来てくれたし」

「違うの。私たち姉妹、二人きりで本当に不安だった。リースは表面だけいい人そうだったけど、信用できなかったもの」

「リース! そうだ、あいつ……ザッハークの下にいるんだよな。ザッハークより危険な気がするし、やっぱり覚悟を決めるしかないか」

「……その力、やっぱり私には扱えないのかな。少し残念だわ」

「シャフナーに宿った力はまだよく分からないだろ? それにお前には槍がある」

「消えちゃったのよ。ううん、吸い込まれたって言う方が合っているのかも」

「吸い込まれた? 刺突剣レイピアの方も?」

「うん。私たちの指輪の中にね」


 そう言って、薬指にはめた指輪を見せる……この国では違う意味だと信じることにしよう。

 指輪の中に槍の模型のようなものが確かに見えた。ソルージュ同様この槍も、支配のなんちゃらって力だったか。相変わらず指輪には触れない。

 指輪に保管されてるみたいだし、こいつはきっとバッテリー切れみたいなものなんだろう。


「使用するとチャージが必要なタイプかも。あれだけの威力だし、連発できたらチートだわ」

「よく分からないけど、他の戦う方法が欲しかったな」

「気持ちは嬉しいけど、リースにしろザッハークにしろ戦うのは俺だ。どっちにも借りがあるから。それよりさ、シャフナー。お前の体にある白い部分でアイテムバッグの印に触れてくれ」

「ここ? こうでいいの?」

「そのままルーニーにトレントの枝を出してくれと言ってみてくれ」

「ルーニー、トレントの枝を出して……あっ」


 どさりと落ちるトレントの枝。やっぱり取り出し可能みたいだ。

 

「中身も見えたか?」

「うん。私はこれを使えるのね?」

「ああ。妖魔の力が宿った証拠だろう」

「私も悪魔の仲間入り?」

「そんなところだ」


 なぜか嬉しそうにしているが、悪魔っつーか美魔女的な意味に聞こえなくもない。

 さて、ザッハークの狙いがこいつら姉妹なら、矢面やおもてに立たせるわけにいかねー。

 そのための準備だ。しかし……「使い勝手がよかったクモと同じようなモンスターオーブは無さそうだ。赤いイノシシみたいなやつに……もういいやこれで。モンスター研究者みてーなのいないと全く分からんわ」

「そんな適当でも作用するものなの?」

「ああ。体が動かないから代わりに付けてくれよ。足にトレントのスペアを付けようと思ってたんだ」

「こう……かしら?」

「そのまま持ってて。こうすると……」


 モンスターオーブをシャフナーに持ってもらったまま装着すると、一瞬いっしゅん足が鉛のように重く感じて、すぐに動かせるようになった。

 相変わらず装着にはだるさが伴う。

 

「本当だわ。面白い……次はどこに?」

「……やっぱ同じ種はリンクしないな。次は胸か眼の下。どっちをどうするかまだ迷ってる」

「それなら……私の好みでいい?」

「いいけど、早くしてくれよ」


 と、二人で会話していると、慌てた様子でじいさんが上から降りてきた。

 ここ、地下だったのか。


「大変じゃ! おお、主君。目が覚めたか」

「じいさん。心配かけたな」

「それよりもじゃ。バッカと偵察に行っていたんだが、急に化け物のようになってしまったんじゃ!」

「バッカが、化け物に!?」

「首からこう、にょろっとしたものが生えて……それにじゃ。王の本隊がこちらに迫っておる!」

「偵察が戻らないから、その始末ついでに敵国へ攻め込むつもりか」

「急いで逃げるぞ!」

「……逃げねーよ。十分休んだ。後の始末は俺がつける。シャフナー、アルナー、ヨルダートに頼みがある」

「なぁに?」

「はい、コーヒー淹れたよ?」

「なんじゃ? あらたまって」

「他国に攻め入るならチャンスだろう。城に行き、宝物庫から宝を持ち帰ってくれないか?」

「……ひとりで戦うつもりなの?」

「大事の前の役割分担さ」

「分かったわい。王女たちのことはわしに任せい。戻って来んかったらわしが可愛がって……ほげぇ!」

「大丈夫。分かったわ。でも、戻って来なかったら必ず行くから」

「ご主人様の命令って本当に逆らえないんだ。でも、身の危険にはきっと反応できるよね?」


 俺はクエスト受注時の意味をずっと考えていた。

 廻る天輪まわるてんりんに触れ、繰り返される与奪よだつ儚さ(はかなさ)を知るがいい。そして3つ目の資料にあった【その道はどこにでもある猛毒である。情を飲めばその心を押し開くこと叶うだろうが、気を付けるがいい。それは悪魔の心でもあるのだから】


 この意味を考えるなら、ソルージュに救われ、ザッハークを倒してハッピーエンドなんて安易に終わるはずがない。

 じいさんたちを城に行かせたのは……俺がひとりで乗り越えなきゃいけない現場がある、そう思ったからだ。


 アイテムバッグをシャフナーに預け、宝物庫の鍵をじいさんに託す。


「全員、命を最優先に。危険だと思ったらすぐ逃げろ」

「安心せい。誰にも指一本ゆびいっぽん触れさせはせんよ」

「気を付けて。必ず生きて戻って来てね」

キレイなズッコケ。それはとても魅力的な行動です。

二重に美味しい目覚めのジャッジさん。それでは良い一日をお過ごしください。

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