第71話 何に使うのか分からなかった道具類
二日目の雪です。
しかしこれはまだ冷たい息程度で凍える吹雪でも輝く息でもありません。
いいとこ10ダメですね。
10ダメですがひん死です。
掃除係のナンナをヤムの部屋に連れていき、いっしょに掃除をしながら上手く情報を引き出しにかかる。子供を使ってる理由は明白で、物の価値に欲がくらんだりしないのと、悪意を持って行動する可能性が低く、しつけもしやすい。それだけのことだろう。
「わぁ。沢山こぼれちゃったんだね」
「困ったもんだぜ。床に飲ませたらなんでも毒だろうに」
「ふふふ、ダメだよ。ヤム様はとても優しい人なんだ。僕にもお菓子をくれたりするんだよ」
菓子で手なずけるってのもまた、悪い大人だ。権力があるなら兵士が子供に暴力を振るったりしないようにしろってんだ。
あらかたぶちまけたものを片付けたあたりで、ナンナは俺への警戒を解いたようだ。
上階については見張りも緩く、掃除さえしっかりすればちゃんと賃金は支払われて……いたらしい。しかし王が死に、今後どうなるのか分からず不安がっている。
次の王はザッハークだ。奴について聞いても怖がって答えることができないでいる。
「もういちど確認するが、西の奥が前王の部屋で間違いないんだな?」
「うん。三日前に掃除をしたんだ。今日が清掃の日だったんだけどやらなくていいって言われたよ」
「中に変わったものとか無かったか? 鏡とか、絵とか」
「うーん。鏡はあったけど、絵なんてあったかなぁ」
「そっか。掃除中に危ないものがあったら撤去してもらうように相談してみようと思ったんだけど、ないならいいさ」
「そんなことまで心配してくれるんだ。ジャッジさんって変わってるね」
「俺は世話焼き好きなだけだ。よし、十分きれいになっただろう。もういいんじゃないか」
「ううん。もう少し掃除してみるよ」
まぁ分かってて言ってるんだけどな。コーヒーの染みはまじで取れないから。掃除係は帰れないだろう。
「したら俺が二階の掃除の続きをしてやろう。なに、兵士に見つかったらヤム様の部屋が大変過ぎて、代わりにやることになったと上手く伝えるから」
「でも……」
「心配すんなって。さっきの兵士のときも上手くいっただろ。俺に任せておきな」
「分かったよ。それじゃ奥の部屋手前までお願いするね。後で確認はするから適当でもいいよ」
「おう。任せておきな」
子供をだましているようで悪いが……掃除をするつもりはない。
そもそもそんなハイペースで掃除してたら、やったかやらないかなんて自己満足レベルだ。
物を動かして掃除すんならまだしも、それが禁止されてるなら尚更だ。
「このほこり落としでも借りてくわ」
「うん。よろしくお願いします」
「んじゃ、また後でな」
さて、ここからは調理人ジャッジじゃなく掃除人なのに掃除しないジャッジさんの時間だ。
二階へするすると上がり、東側の兵士がこっちを見ていない隙を見て西通路へゴー。音を立てないように進んでいくと、立派な部屋が見えてきた。
今のところ周囲に人の気配は無い。扉が開くかどうか試してみると、音を立てずにゆっくりと開いていく。
ここからは時間との勝負だ。
■王城二階西、前王の部屋■
さすがは王の部屋だ。天井部分にも色々と豪華な飾りつけがあり、設置されている家具類も豪華。ベッドは当然キングベッドだ。少し暗いが窓はあるし、この明るさなら探し物はできるだろう。あちこち整理されていて、荒らされた様子はない。ゆう長にしている時間もないので直ぐに探し物へと移ろう。
真っ先に調べたのは鏡だ。枠を外した中にあるものを確認したいのだが……外し方が分からない。
すごく細くて引っ掛けるような……そう。猫の爪みたいな形をした何かがあれば。
……そういや魔チャポンで出てきたクエスト用のアイテムの中に、なにに使うか分からない道具が詰まったものがあったな。
アイテムバッグから掘り出して確認すると、まさにそれっぽい道具があるじゃないか。装着してみると、見事にはまったぞ!?
これ、もしかして入手するための別のクエストをすっ飛ばせるから魔チャポンに入ってたんじゃ。他の道具もここで使えるのかもしれない。
どれ……ゆっくりと音を立てないように鏡を取り外すと、その中には指輪二つと紙が入っていた。まずはひとつ目回収完了。確認は後回しでアイテムバッグに放り込む。
続いて確認したいのは本だなだが……この部屋にある本だなはひとつだけで、壁と一体化している。本だなの裏をしらべたいのだが、裏なんて確認しようがない。
何冊か本を抜いてみるが……裏はやはり壁だ。
だが、待てよ……裏、裏か。この本だなはせり出た壁の部分に設置してある。つまり柱の影響で側面がある形だ。その側面部分には何もないようだが……なるほど見つけたぞ。
極小さなだ円形の穴。これまた道具袋の中にある、なにに使うのかさっぱり分からない小さな棒状の物を差し込むと、ぴったりとはまった。そのままそいつをハンドルのように回してみると……本だなに並べてあった本のうち三冊がドサリと落下した。
ブリキ仕掛けの何かが封鎖していた壁を動かして、隠してあるものを押し込んだのかな。
出て来たのは小さな小箱。王族ご用達っぽい入れ物だ。
それもアイテムバッグにしまい、配置を元に戻す。
問題はここからだ。部屋に入ってから直ぐに気付いたが、ナンナが言っていたとおり絵が見当たらない。まさか、絵だけ移動させられた?
どうしたもんかな……ゆっくり探している時間も無いし。
ん? ……部屋の外から足音としゃべる声が近づいてきてるような。
「ったく、どうせお前の聞き間違えだって。誰もいるわけないだろ」
「確かに小さくドサって音が聞こえたんだって。もしかしたらってこともあるだろ。念のため確認しておくぞ」
やべえ、兵士来んのかよ! 隠れねーと……ってどこにだ? まさかベッド? カーテンの裏? 絶対ばれるだろ。どうする、どこに隠れる!?
やべ、見つかった! さぁどうする! どこに隠れる!?
あなたはどこ派ですか!?
作者はクローゼットなどの衣類の中派です。
だって外、雪降ってるんですもの。(現実的思考)




