第66話 逆刃陽《サカバカゲ》・炎《ロウ》
締め切った部屋で蚊取り線香を使い続けるのは大変危険ですので換気をしましょう(今時はさすがに燃焼タイプは使わないですね)
ミンニャから渡されたのは、先端が270度ほどの曲円を描いている謎の武器だ。長さは槍より短く剣より長いくらいか。
なんといっても特徴的なのが、刃が曲円の内側についてることだ。
先端の形は、言うなれば……じいちゃんの家にあるような、デカすぎる蚊取り線香の外周部分。長い持ち柄がついたようなギャグ武器に思える。さすがに本物と違い、燃焼させるとPM2.5を撒き散らすような効果はないだろうが……タバコ130本分ものPM2.5効果があれば猛毒武器として使えるのにな。
「なぁ、これでどう戦えっていうんだ? 蚊取り退治者にでもなれってか?」
「蚊取り退治者ってなんですか? 持ち手の中央部分を握って柄のようなところを右に回してみてください」
「……こうか? おお、刃が逆転した!?」
「それは逆刃陽・炎という、過去の大会で優勝賞品に指定されたことがある業物の鎌なんです。今の私が鑑定してもその程度のことしか分からないのですが、きっと役に立つと思います」
……ウスバカゲロウ(アミメカゲロウ目ウスバカゲロウ科 の昆虫でアリジゴクの成虫)みたいな名前だな。こいつは今日からウスバカゲロウと呼ぼう。
大会優勝賞品てなら相当の値打ちものか。
持ち手を握ってみて早速感じることがある。この武器……「鎌なんて使ったことないけど、軽いな。逆に回すとどうなるんだろ」
持ち手の上にある柄の部分がやたらと回る。変身ベルトみてーな回転の仕方でなかなか楽しい。
「ちょっと。回し過ぎると壊れ……」
やべ、回し過ぎた!
ガチャンッという音がして、形がすげーねじれた剣のようになっちまった。
「……俺のウスバカが壊れた」
「だから言ったのに! 私、知りませんからね!?」
「ま、待て。弁償するカネが無いんだ。ええと、ここをこうして、こうだ……もも、戻った!」
「他の形にも変わる武器だったんですね。と、に、か、く! 壊さないでくださいよ」
「分かってるって。剣にも鎌にもなるなら、どっちの練習もできる。普段はねじれた剣にして持ち歩くことにするよ」
「でしたらこれを。背中で吊るすタイプの、汎用性の高いソードベルトです」
「腰にぶら下げるには長いもんな。武器を装着したらこのまま例の場所に向かう。後のこと、よろしくな」
「必ず無事に戻って来るんですよ? 戻らなかったらただじゃおきませんからね!」
「……無茶苦茶言うなぁ。親父に似たせいか、こうみえても約束は守る方なんだ。期待して待っててくれ」
背中で武具を固定するためのベルトをくくりつけてもらい、ついに準備万端。さて……目的地へ行くとするか。
このままミーコに説明すると泣きつかれそうなので、ミンニャにお願いすることにした。
クエストってくらいだからいろんなもん拾ったりできるよな? ミーコの誕生日プレゼントになるようなものがあればいいけど。
目的地の説明なんかを簡単にして、ミンニャとは地下から上がったところで別れを告げた。
いよいよ……ソロ活動開始。
■デイスペル、北の森■
やってきたのは先日訪れたばかりの森で、手にはイブリースの鍵を握っている。
森の草花をかき分けながら、三枚目の資料に書いてあった文面を思い返していた。
【その道はどこにでもある猛毒である。情を飲めばその心を押し開くこと叶うだろうが、気を付けるがいい。それは悪魔の心でもあるのだから】
この文面の意味するところがクエストの開始位置を示すものだと確信が持てたのは、ミンニャが地下の扉を開いたときだった。
鍵穴が無くても扉を開くことができる。
それならば、例え単なる木であっても、扉として機能するのではなかろうかと思った。
俺なりにこの文面を文節にして解釈してみた。
まず冒頭。その道はどこにでもある猛毒、とあるが、何かしらの毒に関連するものならなんでもいいのではと捉えた。
そして次の節。情を飲む、つまり錠を飲ませればその先への道を開くことが叶う。
あくまで単純な読解をしただけなので、その後に続く文節の意味は不確定だ。
イブリースの鍵自体が悪魔の心を持つとするならば、俺の所業、つまりダンジョンキーで道を開くこと自体が悪魔の心を持つってことか?
……どのみちもう、後には引けない。
■北の森、紫色の木前■
紫色の木は、まるで俺を待ち構えるように薄気味悪く葉を揺らしていた。
こんなことに利用するとは思いもしなかったし、本当にどの毒でもいいのかは使ってみないと分からない。
……覚悟を決めてイブリースの鍵を木に刺すと……推測は正しかったようだ。
いや、間違ってくれていた方がよかったのかもしれない。
地下の扉のような鍵穴ではなく……心臓のようなものの中に鍵が吸い込まれていった。
ホラー系のクエストかよ。頼むからゾンビとか、でてこないでくれよ……。
……ゆっくりと紫色の木が左右に分かれると、俺を飲み込むように奥へ奥へと引きずり込まれていった。
■グボァ、ンゲゲ■
「……なんか見えたような……またバグか? くそ、まぶしい、何も見えねー……」
激しい閃光の後、今度は深い闇が続いた。
周囲の光景が徐々に落ち着いてきて、目視できるようになった。
……転移したのか? 明らかにデイスペル国とは思えない場所だ。
気候も、周囲の雰囲気までもが変わった気がする。
ここは……どこだ?
いよいよクエスト、廻る転輪が開始されます。
色々と気になるポイントが、このクエスト以外にも蓄積されていますよね。
・ジャッジメントどこいった
・リリと幼女はよ出せ
・俺のエトネブルーちゃんはまだか
・ハイレグさっさと着せろ
・おい主人公覚醒しないの?
・主人公の状態どうなってんだよ
等々、引っ張っているコンテンツもまたお楽しみください。
(ほうっておくと次々にキャラ描いちゃうので本物語ではかなり我慢している作者です)




