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パクリマスオンライン 六つの企業が協力して完成された、最先端のTRMMORPG  作者: 紫電のチュウニー
第2章 大陸への航路を求めて

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第63話 城の改良案と特秘以上の依頼書と

まだまだ朝は寒いですね。

■デイスペル、城内■


 廃城の中を片っ端から見て回ると、職人ぽいような道具を持つ人がいることに気付いた。

 名前が分からないから廃城と呼んでいるが、そこそこの規模だ。

 平地にある平城ってやつだが、歩き回ったら地下もあるし上の階にも行けるみたいで、ぐるっと回るだけでもそれなりに時間はかかる。

 城内を脳内マップで想像してみよう。俺とミーコが寝室として利用する図書館は城に入って東側に進んだ奥の方。いくつかの空き部屋が近くにある。

 城内に入って西側に進めば、昨夜利用した水場へと通じる道がある。

 城の中央には玉座の間へと繋がる道だ。ここまでは頭に入っている。

 

 そして現在地は玉座の間をぐるっと回った最奥へたどり着いたところ。

 ここは一目ひとめで問題ありだと分かる。俺じゃなきゃ見逃しちゃうねなんて台詞は必要ない。

 二名ほど人がいるので、ちょいと話を聞いてみることにした。


「お二人さん、少し話を聞いても?」

「ミーコの兄ちゃんじゃないか」


 ってなんだ。市場の奇妙な果物くれる人と、その隣によくいる小太りの人か。


「兄ちゃん、こんなとこで何してるんだ? ミーコとバルの爺さん(じいさん)は?」

「ええっと変な果物くれる人。名前すら聞いてなかったっけ」

「変なとは酷いな。ここの名物カシオの実だ。美味かったろ? ちょうど持ってるんだが、また食うか?」

「う……確かに腹は減ってるけどもらってばっかで悪いし」

「構うことはねぇよ。あんた、城に仕えることになったんだろ? それなら今後ひいきにしてくれれば十分だ」

「それじゃ有難く……って、そうじゃなくて。このでかい穴、どうするんだ?」


 そう。ぼっかりと空いた巨大な穴があったのだ。

 高さといい幅といい、素人の俺には修繕方法が分からない。ガムテープでふさげ、みたいな穴とはわけが違う。


「ルーン国から壁専門の職人が来るらしい。なんつったかな。ウォー……ウォーなんとかって名前だ。俺らはここが危ないからってんで、立ち入り封鎖にしておくだけだよ」

「城の補修を手伝ってくれてたのか」

「おうよ。ようやく俺たちもここいらに戻ってこれたんだ……あいつらとも仲良くしないとな」

「あいつら? ……ああ、やっぱ仲が悪いのか」


 アゴを向けた果物のおっちゃんの先にいたのはガチウサギだ。

 壁の穴から遠くに見える先だから、こっちには気付いていない。

 どうやら外の補修をしてるようだ。

 

「仲が悪いわけじゃないが、文化が違い過ぎるんだ。ただ、お互い魔王様に助けられたことに違いは無いってんで協力することにしたのさ」

「そっか。絶魔王って人気があるんだな」

「兄ちゃんは魔王様のこと、よく知らないのかい?」

「全然知らないよ。でも、時折ときおり見せる優しい表情は好きかな」

「はっはっは。ま、俺たちゃ雷帝様よりその惚れた相手にこそ感謝してるんだけどな」

「惚れた相手……?」

「おっと口が滑っちまった。作業作業っと。そんじゃな」


 気になることを言い残してどっか行っちまった。

 なんだよ、魔王の恋話コイバナか? それなら男がひそひそと話すことじゃねーな。

 穴の修復に当てがあるなら、ここには土のうでも置いておけばいいのかな。

 ひととおり見て不足してるのは、布類、細かい穴を埋めるための砂利や粘土か。それに火起こしをする場所に木材……うーん。日本に慣れ親しんで住んでいたせいか、城ってのはどうも配置がバラバラで不便だと思ってしまう。ボロボロの廃城ならこの際もっと改良すべきじゃないか? 例えば水場側に火起こしの設備があれば風呂を作ったときに便利だ。

 炊事を行う場所も合わせてその周囲に寄せて作れば火を起こす場所を集中できる。空調の設計を考える必要はあるが、そこら中で火を使うよりはいいだろう。

 城内の配置はそれぞれ役割を決め、適所に配置すべきだ。

 ……ダメだ、脳内でまとめることはできても説明するとなると図案が必要か。

 いちど図書館まで戻ろう。


■城内、図書館兼寝室■


 図書館まで戻ると、ミーコが本を読んでいた。

 部屋もかなり片付いているし、ちゃんと勉強してるみたいだ。


「お兄ちゃんお帰りなさい。どこに行ってたの?」

「仕事だよ。随分片付いてるじゃないか。偉いぞミーコ」

「えへへ。いっぱい働いたよ」

「腹は減ってないか?」

「うん。ミンニャさんに食べ物もらっておいたの」

「そっか。少ししか入ってない本だなってどこかにあるか?」

「こっちだよ。どうするの?」

「テーブルが無いから横に倒してテーブル代わりに使う。ここは紙は沢山あるが、書く道具は無かったか?」

「あったよ。片付けてるときに見つけたの。はい」


 まさに猫の手も借りたいこの状況で、なんて偉い子だ。八歳にしておくには勿体ない。

 十年後にはもっと美人になって、気が利く器量の良い娘になるに違いない。


 ミーコからインクとペンを受け取り、付近にあった不要そうな紙にさらさらと図案を書き始める。

 城内をひと回りしたから構図は頭の中にある。

 部屋の模様替えをするのが好きで、よくこうやって書いてたな。俺の部屋なんて比じゃないくらいでかいけど。


「これ、なあに?」

「城の地図だ。幅や長さをどう表すかだな。メートルじゃ通じないだろうし……」

「ポミュオ」

「……お前の体の大きさで表現してみるか。あの場にいた人ならサイズ感は想像つくだろ」

「わっ。お兄ちゃん絵が上手。これ、レンだよね?」

「こいつの単純構造をよく見て見るんだミーコ」

「ポミュオー?」

「あはは。でもミーコはこんな風に書けないよ」


 さらさらとレンの似顔絵を描いて、こいつの長さを単位に幅を描く。1レン(単位)はペットボトル1本程度だろう。

 玉座を中心に城の入口を南とし、東西南北それぞれに必要なものを記していく。レン基準なら扉の配置や幅も描きやすい。


 城の奥である北側には穴があり、土のうが必要。東は図書館があるので燃えやすいものの配置は全て東に。西は炊事、水場をまとめて配置して欲しい。火を扱う場所は火災が発生しやすい。細心の注意を払うべきだ。城の入口付近にあたる場所へは武器庫を移動させるべきで、風通しが良くないと錆びる。塗布油なども置いておくべき……と書いた。

 上階と地下はまた今度だな。後は必要物資を目安で書いて……と。ここから先は提出して必要なら助言程度でいいだろ。


「お兄ちゃんって元々お城に仕えていたの?」

「いいや? お兄ちゃんは……そうだな。元々学者様だ。はっはっはっは……」


 単なる高校生です。高校を卒業しても学士バチェラーではないです。

 

「これって文官様が書くようなものだと思うよ?」

「そうなのか? 俺の世界じゃこれくらいなら誰でも……」

「レンを見て長さを説明したりとか、誰でも思いついたりしないよー」


 それはこの世界でも通じそうな単位を知らないからだけど、八歳の子にそんな説明しても仕方がない。

 ここは頭を撫でてごまかしておこう。

 少しくすぐったそうにしているミーコ。どうやらうまくごまかせたようだ。

 子供の返答に困ったら、頭を撫でるは正義である。


「さて。そろそろ出かけるか。これでも食って、いい子にしててくれ。食事はどうにかするから」

「うん! ご飯なら大丈夫だと思う。市場の人たちも沢山いるし」

「それでも、小さな子供に腹いっぱい食わせられないようじゃ、十七歳としちゃ失格だ」


 日本じゃ17歳を子供扱いしてるが、時代を考えりゃもう大人だっての。

 見分がすくねーかもだけど、そんくらいの良心は持ってるわ。


「お兄ちゃん、初めて会った日に十七歳って言ってたもんね」

「ああ、そうだ……な?」


 会った日? 確かあの日でミーコは八歳になったって言ってたな。

 俺が寝る部屋をきれいにしてくれたんだし、誕生日プレゼントくらい上げないと。

 カプセルトイの空だけじゃ心が痛む。

 レンズへ向かいながら考えておくか。だが、カネが無いんだよなぁ……。

 市場で売ってるもんがレギオンってので買えるなら、何か売るものでも用意してみるか。


「そういや、図書館の隣の小部屋って空いたまんまだけど何の部屋なんだ?」

「好きに使っていいって言ってたよ。元々は司書さんのお部屋なんだって」

「ほう……ミーコよ。ちょっとだけ待っていなさい」

「なぁに?」


■図書館部屋、隣室■


 取り出したるは短いトレントの枝である。

 こいつをローブについていたが使わなくなった仕込み剣でささっと加工してっと。

 今できるもんはこの程度だが、夜までのつなぎだ。


 ■城内、図書館兼寝室■


「もう戻って来たの?」

「ほら。これを」

「なぁに? 小さな棒?」

「ポミュオー」


 小さなミーコの指よりもっと小さいトレントの枝。

 その先を少し丸くしたものだ。やすりが無いから枝先なんかで手を怪我しない程度にしか加工できなかった。その枝に、レンが反応した。


「レン、これ好きなの?」

「ポミュオー」

「そいつはトレントみたいなもんだろうから、その枝を仲間だと思ってるのさ」

「そうなんだ。これがあればレンともっと仲良くなれる?」

「ああ。なるべく早く戻るから、レンと遊んでてくれ。何かあったら魔王様や市場の人らを呼ぶんだぞ」

「うん。行ってらっしゃい」


 ……行ってらっしゃい、それにおかえりか。

 ミーコ以外から、久しく聞いていなかった。

 孤児だったミーコには今の俺が孤独に見えたのかもしれない。そして俺も。生きてるのか死んでいるのかも分からない状況で、不安を紛らわしたくて……やめだやめ。今できることをすることに、変わりはないんだ。


■市場、レンズ■


 三往復目ともなると、もはや目をつぶっていけるんじゃなかろうかと思えるほど、素早く市場まで到着できた。

 レンズ内へ入ると、ミンニャさん以外誰もいないのは相変わらずだった。


「ジャッジさん。もういらしたんですか? 先に見つけておいてよかった」


 ミンニャもまだ到着したばかりのようで、身だしなみを整えている最中だった。

 城付近あっちにレンズができるまでは、ミンニャもここを利用するのだろうか。でも、俺の指示も出すって言ってたよな? 


「早速ですが、お見せいただいた依頼書をもういちどこちらへ」

「構わないが、何も書いてない依頼書なんてどうするんだ?」

「この四角い部分に、こうするんです」


 そう言うと印章ハンコ? のようなものを依頼書に押し当てるミンニャ。

 すると……文字が浮かび上がってきた!? 


「やっぱり。間違いなく特秘以上の依頼書ですね。私も見るのは初めてです。受領印を押した者、それを持ち寄った者にしか見えない術式が施されています。この魔印章を押した者は内容を口外できませんから、安心してください」

「そうだったんだ。頼んだのがミンニャで良かったよ」

「こっちは仕事が増えるだけなんですけど?」

「ははは……けど、大事なことだろう? その依頼書が、この国所属の傭兵初仕事になるわけだしさ」

「それはそうですが……まさか特秘以上のクエストをいきなり開始するつもりですか!?」

「そのつもりだったんだけど、その特秘とかってなんなんだ?」


 ……って聞いたら頭抱えちゃったよ。

 無知で悪かったな。こちとらネットで調べる環境すらねーんだわ。


「分かりました、ご説明しますから。幸いここには私とあなた二人だけです。このクエストの内容も含めて話し合いましょう」

お城っていいですよねー。日本には残存するお城が少ないのが残念です。

近年ではVRで世界の有名城を巡るツアーなんていうのがあるそうです。

3千円くらい取られるんですけど……やってみようか悩み中です。

世界旅行行くより安いですが……どんな風に歩き回れるんでしょうね? 

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