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パクリマスオンライン 六つの企業が協力して完成された、最先端のTRMMORPG  作者: 紫電のチュウニー
第2章 大陸への航路を求めて

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第58話 狩りの依頼

■デイスペル国、廃墟街■


「城は見えたけど、あれだよな……」


 奇妙な雲に乗り移動とか、そんなのありかよ。

 同じ方角を目指してたのに、あっという間に見えなくなったわ。


 

 急がねーと……ちょうど移動用にならないかと試しにセットしたのが、地底から拾ってきた新しいモンスターオーブだ。実はその中に、とんでもないものがあった。

 山竜マウントドラゴン。あの巨大な竜を俺はどうにかしたらしい。

 しかしだ。その山竜をセットする気にはなれなかった。

 なにせモンスターオーブは上書き式。

 仕様を完全に把握していない以上、使ってしまうのはもったいない。

 そこで、だ。地底での移動中襲われたテナガザルとマントヒヒを足しあわせたようなモンスターオーブをゲットしていたので、それを左足にセットしてみた。

 こいつは木の上から攻撃してきたので、トレントと相性がいいかもしれないと予測したのだ。

 木の上を軽々と移動していたし、なにせ見た目もテナガザルのようだった。

 まずは適当な木の上に登ってみよう……どうやら当たりだ。

 スルスルと足だけで木に登れてしまう。

 太い枝まで登ってみると、まるで地面の上にいるような感覚を覚える。

 ……こっから走り高跳びのような棒をトレントの力で作り、地面に突き刺して一気いっきに別の木へ向けダイブ! 飛び移れるという確信が持てている。

 ……こいつはいい。移動距離をかなり稼げる。

 木以外にも飛び移れるか試してみたが、なんのことはなくボロい屋根の上にも飛び乗れた。

 着地による衝撃も左足にはほとんど感じない。

 名前すら知らないモンスターだが、アデリーに乗っていなければやばい相手だったかもな。

 地底のモンスターは強い種が多いのだろうか。

 今のところ俺の能力は地味だ。

 だが、時間と研究を重ねれば急速に強くなれると信じている。

 まずは生活基盤の安定、そして俺の状況理解を優先。ついでに……カーネが欲しいなぁ。


■デイスペル、廃城周辺■


 ……言われたとおり北西に進めば進むほど、周囲の状態が酷い。

 大がかりな戦闘がこっちであったんだな。

 市場の人らを見る限りそんな素振りは見えなかったが……分離されているとか、関係性を持たないようにしているような統治だったのだろうか。

 城も近くで見たら、戦敗国のソレだな。

 あの魔王はこんな場所に住むつもりか? 

 ……ここからは歩いて向かおう。

 宿屋くらいはあるが、生活するには困難だろう。ようやく住民らしき人物をちらほら見かけるようになった。

 よく見ると手がまるで翼のようだ。あれはハーピィ? って種族じゃないか!? 

 その鳥のような種族に肩車される、ガチ目のウサギもいる。なんつーでかいウサギだよ。よく見たらその周囲にも同じウサギがごろごろいる。

 二足歩行で歩いていて服も着てる。目が……青いんですが。ちょっと怖いな。

 さすがは世界の中心地付近なだけあって、廃墟はいきょのようにボロボロでも結構な人がいるようだ。

 プレイヤーかもと思ったが……明らかに違うな。

 向こうもこっちを気にしてはいるが、今は城へ急がねーと。


■デイスペル、廃城内■


 城の中はもっと酷い有り様だ。

 モンスターの死体が半端じゃない。

 いくらなんでも死体の数が多すぎる。この城内でモンスターを飼いならしていたのかもしれない。

 これもあの魔王が仕留めたのだろうか。

 ところどころ無傷な場所もある。

 試しに入ってみたら、図書館? のような場所だった。

 すげー気になるけど、魔王がいるのはここじゃない。


 ……いくつか扉を開いていくうちに、ぼろくなったベッドがある部屋を見つけた。

 魔王はそこにいた。

 足音で俺に気付いたが、人差し指を口に当てて、静かにしろと合図をする。

 これまで見たどの表情より……優しい女神のような顔だった。

 どうやらミーコが寝付いたところらしい。

 子供好きなんだな。この惨状を見た後だが、ホッとしたわ。

 無言のまま魔王の後ろをついていくと、ボロボロな玉座の間に辿り着いた。

 魔王は少し汚れた玉座を払い、そこに腰を掛けた。


「ふう。……何から話そうかしらね」


 ゾクリとするような目でこちらを見る魔王。

 その視線で何から話すべきか考えていたことが吹っ飛んだ。


「なぜミーコを連れていったんです?」

「……あの子の生まれはどこかしら?」

「バルって爺さん(じいさん)の娘です。元々は孤児だったようですが」

「そう。あの子はあなたの妹ではないのね。安心したわ」

「それはどういう意味です?」

「あの子がわたくしと同じ古代種だからよ。もしあなたが実の兄なら、あなたも古代種になるから」

「古代種?」

「あの忌々しい娘に気に入られたのでしょう? わたくしのこと、何も話さなかったのかしら?」

「いえ、ヤトに気に入られたわけじゃないです。俺……っとすみません、敬語になれてなくて」

「いいのよ。あなたらしいしゃべり方で話なさい。わたくしは妖魔にとても寛大ですから」

「それじゃお言葉に甘えて。俺を助けてくれたのはリルカーンという妖魔です」

「あら、あなたリル君に助けられたの? そう。彼は元気かしら」

「はい。優しくていい奴でした」

「そうね。奥さんもとてもキレイで素敵なのよ。わたくしを恐れてしまっているけれど」

「そりゃあ、あんな力があれば……」

「雷撃の力、あなたにとっても怖いものかしらね」

「怖いというより、圧倒されますね。俺にもそれだけの力があればと思いますけど」

「それはあなた次第。だってあなた、人族でしょう? そして人族が妖魔の力を持つことになった」

「……俺、そう言いましたっけ?」

「言わなくてもわかるわよ。匂いで」


 ……まずい! 水浴びしかしてなかったから臭かったのか!? 

 風呂だ。風呂をこの世界に造らねばならない! 


「……すみません」

「謝ることなんてないわ。血詠魔古里という太古の種族であるわたくしはね。短い時を生きる人に憧れるの。そして何より、彼らの血に魅了されるのよ。うふふ……」


 血? もしかしてあの牙……ヴァンパイアの種族なのか!? それより……血詠魔古里ってどこかで。そうだ! エトネブルーさんの種族じゃなかったか? 


「あの、魔王……様? お尋ねしても?」

「あなたはまだわたくしに仕えているわけではないから、へりくだる必要なんてないわね」

「では単刀直入に聞きます。血詠魔古里という種族はシフティス大陸に多くいるのでしょうか?」

「……研究者、というのは知っているかしら?」

「はい。ヤトがそうですよね」

「彼らの働き、そして賢者の石の力によって、死した魂が復活したの。それらの魂は依り代(よりしろ)を得て各地に住む根強い種族の下に具現化したわ。わたくしの種族は絶滅寸前だった。復活した者たちはみな、自分勝手に行動し始めたの。わたくしが領土を離れる理由のひとつが彼らかしらね」


 それってつまり……領土を出るきっかけは、プレイヤーの身勝手な行動か!? 

 だとするならやはり、そのエリアにはプレイヤーがいて、エトネブルーさんもそこに。


「その場所を訪れることってできますか?」

「この島へ来ることはできても、海流の影響で東へ進路を取るのは難しいわね。空路は神風も起こる死、竜により阻まれることもあるわ。戦力を持たなければ困難な道のりですわね」


 そんなやばい航路を突っ切って来たのか。

 もしかして大船団で来たのか!? 


「魔王様がいた場所でも争いごとが起きてたんですよね?」

「そうね。無用な争いが絶えず起こり始めたわ。わたくしに無礼を働こうとする者もいたわね」


 無用な争い……PVPが認められていて、領土が荒れたって可能性もあるか。

 大分情報が集まったな。

 

「……少し、血が足りないわね。それで、まだ話はあるのかしらね」

「聞きたい話は沢山ありますが、具合が悪いならまた今度でも。今は魔王様の話を聞いて、この国に仕官することを前向きに考えています」


 そう告げると、具合の悪そうな顔だが表情は和らいだ。

 妖魔の戦力ってのはそんなに貴重なもんなのかね。

 そうだ、先にひとつだけ聞いておこう。


「ひとつ、重要なことを尋ねても?」

「いいわよ」

「実はヤトにも解けない呪いが俺に掛かっています。それがお見せした手紙に印されていた図のようなものです」

「ヤトに解けないならわたくしにも解けないと思うのだけれど? それでもわたくしに手紙を渡せと言ったなら……そうね、そうよ、そうに違いないのだわ。あなたが欲しいのはわたくしの持つ古の知識。違うかしら?」


 鋭い。皆まで言わずそこまで分かるか。

 

「わたくしの配下が到着すれば、城から持ち寄った本が届くわ。あなたがもしわたくしの出す課題をこなしたら、しばらくは書庫整理の仕事を依頼しようかしらね」

「つまり、好きなだけ知識を付けてもよいと?」

「条件が二つあるわ。この城を北上すると森があるの。そこにいるモンスターを狩り、材料を集めてきて欲しいの」

「モンスター討伐ですか」

「ちゃんとお礼もするわ。欲しいものはあるかしら?」

「……実は三万ほどカーネが必要で」

「分かったわ。それなりの額だから素材の量次第で支払うわね。それともうひとつ。こちらは拒んでもいいのだけれど……もし許可するならあなたと……そうね、あの子、そして育ての親を書物の管理役として雇ってあげるわ」

「……内容は?」

「わたくしに少し、血を飲ませて欲しいの。そこまで多くは頂かないわ。痛みも怖いことも無いのよ」

「それって俺がヴァンパイア(吸血鬼)になったりしません!?」

「ならないわ。わたくしを飢えた血族と同じ目で見ないでもらえるかしら?」


 ……って言っても血が欲しいには違いないんじゃ。

 そうか、あのとき見せたあの表情はそれなのか。

 まぁ、血を吸うくらいならだって吸うわけだし、特に何もないなら構わないけど。


「念のため最初は何かに移して……とかダメですか? 」

「本当は直接がいいのだけれど、仕方ないわね。さぁ、こっちへいらっしゃい……」


 恐る恐る近づくと、長い間待っていましたと言わんばかりの表情をする魔王。

 ……息が荒い。

 つか、近づいてみるとやっぱりただのゴスロリの美少女に見える。

 目をつぶっておこう。血詠魔古里か。高校生には刺激が強すぎるぞ、運営! 


「はぁ、はぁ……いただきますわぁ」

ついに主人公の拠点となるか。

明日から早速お仕事モードなジャッジさんです。


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