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パクリマスオンライン 六つの企業が協力して完成された、最先端のTRMMORPG  作者: 紫電のチュウニー
第5

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第43話 恩返しは護衛で

本日分は少々ボリュームがあります。

 ……まさか走ってきてフライングクロスチョップをされるとは思いもしなかった。

 魔法の命中はからっきしだったが……。

 そもそも不審者だと思ったんなら近づいちゃ危ないだろう!? と考えてたら、突撃したはずの少女が見当たらない。 

 付近を探ると少し離れた木の上にいて、果物をかじっていた。

 素早いってもんじゃない。どうやって移動したんだ? 

 只者じゃねー……違うな。ただのおてんばじゃねえ。

 あいつの発言も気になるところだ。なぜ親父世代のネタを知ってやがるんだ。

 果物をむさぼりながらも見下ろすその姿は様になってやがる。

 しかし口を開けば……「変態。変。恰好も変。見た目も変。全部変」

「初対面で変を連呼すんじゃねーよ。ハートが傷付くだろ」

「奇妙。危険。奇人? 奇々怪々」

「どこで覚えたんだそんな言葉。なぁ、あんた誰だよ」

「こっちの台詞。誰? 侵略者? 強盗? 暗殺者?」

「こんなゆう長に話す暗殺者いるわけねーだろ」

「いる。だます。手段だもの」


 などと言ってはいるが、あまり警戒をしているようにはみえない。

 しかし俺が不審者であるのは間違いない。

 泉で歌うコイツに見とれていたのは事実だ。


「まぁ、勝手に歌を聞いたのは悪かったよ。上手かったから」

「なにを要求しようかな」

「え? もしかしてクロスチョップされた上にカーネまで巻き上げられんの?」


 考え込む桃色髪の少女。しかし、なんて見た目と言動が噛み合わない奴なんだ。

 リリや幼女の方がまだ可愛げが……無いな。

 こいつもリルカーンと同じく護衛者ってやつなのか? 

 なら、もめるのは無しだ。いちおう世話になったわけだし。


「……分かったよ。どうすりゃ許してくれるんだ」

「三回回ってパミュって言って」

「……お前普通にしゃべれるじゃねーか」

「早く、早く、早く」


 くっそ、木の上で手を叩いてあおりやがる。三回回ってパミュってなんだよ。ワンじゃねーのかよ。

 

「はいはい、やりゃいいんだろ。オラオラオラ! パミュ!」

「可愛くない。投げやり、やり直し」

「そもそもパミュなんて叫ぶ生物なんざ知らねーぞ!」

「無知、無力、勉強して。今すぐに」

「無知で悪うございました。それじゃこれで。リルカーンがそろそろ戻ってくるだろうし」

「リル? どうして? リルも不審者?」

「違うわ! 俺が不審者でリルカーンは俺を助けてくれただけだから」

「不審者。認めた。でもリルが助けた?」

「あっ……いや違くて。別にお前らの護衛を邪魔するつもりなんてねー……?」


 あまりに叫び過ぎたのか、いつの間にか周囲にぞろぞろと他の護衛っぽいやつらが集まってきた。やっべえ……。


「姫様、ご無事ですか!? 何やら騒ぎ声が聞こえたのでかけつけましたが、コイツはいったい誰です!?」

「怪しい奴め! 貴様、そこで何をしている」

「わっちゃー」


 ……てか、姫様って言ったよな? どこにいるの? 俺には見えないよそんな存在。

 断じて初対面の俺にフライングクロスチョップをしてくる桃髪の悪魔的言動をするコイツじゃないことは確かだよな。


「遊んでた」

「……姫様、また木になんて登って! 女王に怒られますよ!」

「木、好き。メルちゃんもやるもん。でもメルちゃん、へたくそ。落ちる。無様に」

「……なぁ、これが姫様ってマジなのか」


 あまりの発言に指を指して護衛に質問してみる。

 不審者と決めつけているこいつらdめおため息をこぼしているのが伝わってくる。

 信じたくは無いが、どうやら桃色髪の少女は姫様……という存在らしい。

 ワンチャン俺の世界でいう姫様と認識が違う可能性もある。しかし期待はできない。

 

「とにかく貴様は大人しくついて来い」


 大人しくしろって言われても、こっちは薄い布切れしか装備してない無力なプレイヤーだぞ。槍先を向けるのは止めてくれませんかね。

 この護衛たちは顔立ちからしてリルカーンとは違う種族のようだ。

 地底には妖魔以外も多く住んでるのだろうか? 

 そういやあの姫? も妖魔って感じとは少し違う気もする。そればかりかオッドアイ? 瞳の片方がくぐもって見えた。


 しかしなぁ。少し勝手に動くだけでハプニングだらけだよ、異世界ってやつは。

 無抵抗アピールに両手を挙げておくか。さっさと連行してもらおう。


「そこの変態。名前、なに? 変態?」

「そんな投げやりな名前つけるやついるわけねーだろ。俺はダッシュ……じゃなかった。ジャッジだ、ジャッジ」

「ジャッキー?」

「ジャッキーじゃねえ! 鼻が気になるような人に勝手にすんな!」

「ふーん。私、カルネ。名前、覚えておけ」


 カルネ、か。そっちも変わった名前じゃねーか。

 カルネ姫とでも呼ばれているんだろうか。

 もしカーネを巻き上げられたらカーネ姫と呼んでやるから覚悟しとけよ。


「おい、姫様と気安く会話をするな。さっさと歩け」

「へいへい。そういやリルカーンが果物取りに行ってくれてるんだけど、お前ら聞いてない?」

「何を言っている。どこから入り込んだかも分からない不審者が、リル様を呼び捨てにするとは何事か」

「そのリル様に助けられたんだけどねぇ。まぁいいや、さっさと連行してくれよ。ついでにその場所で暖かい衣類が欲しいな」


 そう言うと俺を連行しようとした奴は怒鳴りちらしてきた。

 悪かったって。こっちは異世界初心者なもんで。煮るなり焼くなり好きにしてくれ。


 連行されながら周囲を観察すると、かがり火がいくつかあるのに気付く。

 つまり地底にも夜はあるのだろう。しかし火を灯してるんじゃない。

 灯ってる火に目みたいなのがある。すげえ、これ生物かなにかだ。


 連行されながらただ歩くのもつまらんので、その間は俺が得意なことをしよう。それは記憶を思い返したり、地形を記憶したりすることだ。

 ジャッジメントとやらに殺されかけたあたりから思考してみよう。

 俺はリルカーンという男に助けられて、そいつの叔父が統治しているという、ノース雪山って場所のふもとにいる。

 リルカーンの叔父であるフェルドナーガというのは、邪眼という力があるらしく、その力は恐ろしいほどに強いそうだ。

 リルカーンはこの野営地にいると思われる重要な……あのおてんばって言葉が可愛く思える姫をノースフェルド皇国へ連れて行く最中? に俺を助けたと思われる。

 リルカーンの兄はいつぞやに会ったことがある、アルカーンという時を止める空間能力を持つ? かもしれない男の弟。俺はこいつに借りを返さないといけない。

 そういえば牢獄で助けられたベルローゼって奴とその男がいっしょにいたはずだが……ももしかして近くにいるのか? 

 なら、リルたちの向かう先って牢屋に放り込まれたあの場所じゃないか!? 

 もしそうなら俺は脱獄したわけで……嫌な予感がしてきた。

 

「おい何をしてる。さっさと入れ」

「……ん? ああ。到着したのか」

「貴様、随分と余裕だな」

「余裕っていうかそろそろ戻って来ると思ってたから」


 俺を連行中の奴にくいっと空を見上げさせると、リルカーンがちょうど飛んで戻って来るところだった。


「リル様!?」

「ふう、ただいま。あれ、もうみんなと仲良くなったの? これ食べなよ。スーベの果実っていうんだけど甘くて美味しいよ」

「ちょうど連行されて取り調べを受けるところだぞ」

「そうなの? なにかやっちゃった?」

「歌を聞いたお礼にフライングクロスチョップをもらった」


 そう告げると目を丸くするリルカーン。

 俺を連行してたやつは驚きと不信感を抱いた表情でにらみつけてくる。 


「リル様、こんな怪しい奴とお知り合いなのですか?」

「お知り合いっていうか僕が助けたんだよ。先日の落下してきたアレからね」

「まさか、生物がいたと!? 報告を受けておりません!」

「そうだっけ。まぁちょうどいいや。外は寒いし中で食べよう。君はしっかりと見張りの続きをしてて。彼は大丈夫だからさ」

「しかし……」

「僕の言うことが聞けないの?」

「い、いえ! 失礼しました!」


 そう言うと、再度ギロリと恨めしそうにしながらも、そいつはどこかへ走って行った。

 やっぱリルカーンは偉いやつじゃないか。


「ふう。みんな真面目だね」

「お前も真面目だろ?」

「そうかなぁ。僕は適当だよ。中には誰もいないみたいだ。強制的に自白させる薬とかもあるから、飲まされなくてよかったね」

「別に飲んでも吐くものすら胃袋には無いけど」

「そういう意味じゃないよ。はい、これ」


 渡されたのは半分が若草色、半分が紫色の奇妙というか毒っぽい色合いの果実二個。

 どんなエキスを吸えばこんな色に育つんだ……けど、ナスとかアボガドもこんな色か。背に腹は代えられんとはこのことだな……。


「ええい、ままよ!」

「決死の覚悟で食べなくても平気だよ。少し甘酸っぱくて美味しい。半分ずつ味が違うんだ」

「……確かに美味い! なんだこれ、現実の果物みてーだ!」

「変な言い方だなぁ。でも美味しいでしょ?」

「ああ、若草色の方はキウイみてーな味だ。紫色の方はザクロにぶどうを混ぜたみたいな味だな。もうひとつもいただくぜ!」

「ねぇ、これから妖魔のことを教えようと思うんだけどさ。その前に君はこれからどうしたいのか。それを聞いて尊重したいんだ」

「モゴ?」

「……ごめん。食べ終わってからでいいよ。なんか懐かしさを覚えるなぁ」


 まるで子供を見るような目をされた。

 こっちは丸二日食ってないんだ。例え腹が膨れなかったとしても食事を取れと本能が欲してる……ってちゃんと腹が満たされているような気がする。思い込みの力、すげー。

 ふう。腹にものが入ると次に気になるのは恰好だ。

 このまま外をふらついてたらますます不審者扱いされそうだし。

 エトネブルーさんにもらった装備、全部壊れちまったんだよな。

 なんてお詫びをしたもんか。必ずブルーな内容をぶつけられるだろう。

 それにリリや幼女のこともだ。

 あいつらとエトネブルーさんの場所まで向かう予定だった。

 それは約束に近いかもしれない。約束は破りたくないな。

 腹は満たされた。そしてどうするかも決めるには決めた。義理だけは果たしたいが……「美味かった。ご馳走様。俺の行きたい場所を尊重してくれるのはありがたい。だからはっきりと言うぞ。さっき話してたリリと幼女のことは覚えてるか? あいつらが向かう予定の場所、そこへ向かいたいと思ってる」

「そっか。君は地上に行きたいんだね」

「そうなるのかな」

「報告がてらヤトカーンには会わせた方がいいかな。分かったよ、話をしてみる」

「地底から地上に向かうのって大変なのか?」

「昔に比べたら全然だよ。ただね、地上と地底を繋ぐ場所が、僕らが向かう場所と真逆の方角なの。地底のアトアクルークっていう中央付近の場所と、地上のデイスペル国っていう場所が繋がっててね。神殿から地上へ出れるんだ」

「それじゃあここからは相談だ。俺もお前の護衛を手伝わせてくれよ。それでお返しが全て済むとは思ってないけど、多少の足しにはなるだろ?」

「本当かい? ちょうど護衛が不足してるところだったんだ。でも君、ちゃんと戦えるのかな?」

「さぁな。分からないけど戦い方も教えてくれるんだろう? この場所にはいつまで滞在する予定なんだ?」

「んーとね。実は山を越えないといけないんだけど、その山に厄介なモンスターがいてね。それをどうにかするために偵察をしている最中なんだ。それくらい自分たちでどうにかしないと笑われちゃうし」

「厄介なモンスターでもいるのか? ゴブリンとかオークみたいな」

「だったらまだよかったんだけどね。もっと大きなやつ。マウントドラゴンだよ」

さて、いよいよ妖魔の解説がありそうです。

主人公君にはどんな能力が備わったのでしょうか。

というか主人公君の状況はどうなっているのでしょうか?

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