第38話 アルカランの審判《ジャッジメント》
360度くらい急激な展開、スタート。
『 while True、抜け出せません。再実行します。 while True、抜け出せません。再実行します』
「騒々しいぞ。異界の道具よ、我を受け入れよ。我が名は審判。その能力を我だけのために使え。永遠なる束縛」
『ガガ、プログラム応答不能、スタンドアローンヘ変更。氏名ヲ入力。氏名ヲ、入力。氏名。四文字、ダッシュ、カラ、ジャッジ、ヘト変更シマシシマシマシマシシシ……』
「ふむ。実に面白い道具よ。さて……」
体が言うことを効かぬか。
不完全な抜け出し方法であったな。
『リトルガイアイーターAは震えている、リトルガイアイーターBは逃走を試みている』
「……ゴミが。散るがいい。武技、闇烈審闘」
『リトルガイアイーターAは引き裂かれ闇に飲まれた。リトルガイアイーターBは引き裂かれ闇に飲まれた』
そうか、この体を縛っていたのは状況か。
さて、我の武技ひとつでそれを感知し、母なる星から迫る者。
白のアルギアを纏いルインブレードを持つその容姿……やつか。
「ペイジよ、よく来た。クイーンが早いと思ったが」
「気配だけでは信用に足り得ません。ですが本当にアルカランのジャッジメント様でしょうか」
「我の姿はお前にどう映っている?」
「漆黒に包まれています。ただそれだけです」
「アルギアへの変貌はまだ叶わぬか。だが、見ていろ。武技、闇動裂衝!」
ふん。媒体が身に着けていたものは粉々になったか。
もろすぎるな。
「……カルメルタザイトチェーンが切れた!? し、失礼しました。その絶大なる力はアルカランのジャッジメント様で相違ないかと。他の支配者方は?」
「知らぬ。この世界が本物かどうかも含めて、な。だが、奴が復活していたならば、改変は進んでいるかもしれぬ」
「しかしジャッジメント様。どうにも人の匂いがしてなりません」
「……媒体の匂いだ。ある血を引くものの、だがな」
「左様ですか。これからどうなさるおつもりですか?」
「復活した者に招集をかける。ペイジよ、アルカランは何名確認したか」
「……ひとりも確認できておりません」
「我が最初の復活だと?」
「はい」
ふむ。妙だと思った。クイーンすら来ぬのはなにか事情があるか。
「母なる星は我がいない間に大きく変わったか」
「そのとおりです。アルカランはもちろんのこと、アルアンダーも身動きができぬほどに。詳しく事情をご説明しましょうか?」
「必要無い。まずはコスモからゲンドールへ移動する。ついて来い」
「そのまま地上へ降り立つのだけはどうかお待ちください! カルメルタザイトチェーンを瞬時に切り裂くお力はすさまじいと思いますが、もうカルメルタザイトチェーンは再生を始めています。かつてほどのお力をジャッジメント様から感じません。どうかここは地上ではなく地底へ」
「タルタロスにでも会えというのか。今更だろう。冥府の門番は眉ひとつ動かさず、魂を刈り取りに来るだろう」
「いいえ、向かう先はフェルス皇国と呼ばれる国。その場にて母なる星の現状を説明いたしますゆえ」
「よかろう。我の状態が不完全なのは事実だ。急ぐぞ」
数千年ぶりの目覚めになるか。
闇におおわれたこの体は要所で制限がかかる。
鎖に繋がれていたあちらの青い星は拾い物か何かか。
どす黒い闇は感じるが、世界の光景に闇が足りぬ色だ。
「石棺の法、星を砕きに行け」
……四つの石棺しか出せぬが、古代種のゴーレム入りを四つ、送りつけてやった。あれに勝てる者がいるか分からぬが、根絶やしにするのも悪くはない。
空の大地からは良質な糧が手に入る。
ククク、再び審判を下すときを待っていた。
抗う意志を砕き平伏させ従える。
これほどの至上など存在はしない。
まもなく母なる星だ。いるぞ、強者どもが。血を流す争いがここまで感じ取れる。
それでこそだ。
せめてマルギア……武装武変は行えねばなるまでは動くまい。
「ゲンドールよ。我は帰ってきた! 災厄を引き金に大災厄を引き起こし、それをも審判してやる。世界よ、波乱に満ちるがいい。ふははははははは!」
『おに、……きて』
「む……な、んだ?」
『きて! にい! して!』
「くっ……! ペイジよ、我の体を目的地へ運べ!」
まさか、完全に奪えなかったというのか。
力が、まだ不足していたか。
「もう地底へ入ります。しかし、その強大な闇を運ぶのは難しいかと」
「時間が無い。この肉体を半分に切断する」
「よろしいのですか?」
「構わぬ。半分もあれば時間をかけて再生するだろう。急げ!」
「ですが、残りの半分にもジャッジメント様の闇は残ってしまいますが?」
「捨ておけ。どうせ助かりはしまい」
「はっ……ではお覚悟を。忠実なる一撃!」
ピスティス。あらゆる闇を切り口無しで払う忠剣。ペイジは衰えておらぬな。
……復活したばかりでさらに力を削ぐことになるとは。
やはりしばらくは身を伏せねばならぬか。
だが、ククク。ペイジとこの道具は我のものだ。
媒体よ。短い間だったが大儀であった。
死に体の貴様と会うことは無いだろうがな。
いや、我のことなど認識すらしておらぬか。
ククク。
星は血に飢え、殺し合い、奪い合い、欲と嫉妬にまみれ己だけが助かりたいとすがり、そして裁かれる。圧倒的な欲望の肉塊を粉々に破壊することこそ至福。
我はジャッジメント。22のアルカランがひとりにして、神をも凌駕する者だ。
アルカランとアルアンダー。
アルカランには22のメンバーがおり、ジャッジメント以外は誰も視認されていない状況のようです。
アルカランの下位にはアルアンダーというメンバーがいる模様。
そして彼らはアルギア(武装武変)と呼ばれる形態へ変貌できる。
ここまでが今話でのさらっとしたまとめです。




