第31話 初めての依頼
本日は新たなキャラの登場です!
リストアップされた四人の名前はそれぞれ、エトネブルー。やんさか祭り。
ロッティ。ジョコビッチ。
下二人は危険な香りがしてならないので却下。
ジョコビッチさんが松岡さんだったら熱く武器を造ってくれそうだしアリだったかもしれない。
結局俺が選んだのは、もっとも無難そうなエトネブルーさんだ。
青色が好きなのかもしれないので、青好きな俺としては相性も良さそうだ。
このゲームを始めて未だに男性プレイヤーと接触する機会が無い。名前からして男性だと踏んでいるが、ターバン男に示された表記に性別欄は無い。
名前の他に種族と地域が表示されているが、俺と異なる血詠魔古里という種族らしい。
「エトネブルーさんにお願いしようと思うんだけど、どうしたらいいんだ?」
「直接交渉ができる設定だな。相手が近くにいない場合はサポート機能を利用する方がやり取りはスムーズだろう」
「サポート機能……俺がすっ飛ばしたやつだ。ついに利用するときが来たのか」
「連絡メッセージや使用する素材の配送はパッセンジャーをとおして行う。それもサポート機能から行えるだろう。フレンドではない場合、パッセンジャー内通信でなければメッセージを送れないから注意してくれ」
「分かった。持ってる素材を確認してから送信しよう」
素材確認をしなかったのにはわけがある。素材の入手が自動取得だからだ。内容をいちいち確認するのがダル過ぎるのと、使い道がよく分からない素材をしっかり確認したところで意味が無い。そのためずっと放置していた。
「インベントリオープンっと。どれどれ……おお、沢山あるな。リリが倒した奴も手に入ってるってことはパーティーメンバーが倒したものも勝手に入るってことか……んん? なんだこれ」
※インベントリアイテム、素材※
ゴブリンのくさい腰布x12
ゴブリンの腰布x12
リテンプションゴブリンの巨大腰巻
リテンプションゴブリンの壊れた膝当て
リテンプションゴブリンの壊れた肩当て
青の液体x6
ゲイルバットの翼x3
ゲイルバットの牙x3
ゲイルバットの血x4
牢獄のカギ束
光石
サファイアの中に宿るセファイア(上)
サファイアの中に宿るセファイア(通常)
ターコイズ(上)
ブルーアクアマリン(上)
オプシダンの大欠片(上)
オプシダンの大欠片(通常)
ギア・マドラ・ゲヘナ(通常)
しびれる宝珠(通常)
宝箱に巣くうノミx3
ノード赤霊鉱のかけらx4
ノード黒霊鉱のかけらx3
ノード青霊鉱のかけらx4
ノード白霊鉱のかけらx4
ノード銀霊鉱のかけらx3
ノード金霊鉱のかけらx1
サクラスネークの皮x25
サクラスネークの牙x22
サクラスネークの毒x15
サクラスネークの肉x40
セミのぬけがらx3
樹皮x4
「整頓してないから時系列だよな。ゲイルバットが国立駅だからだとすると……クラシッククエスト!? 宝箱のノミってなんだよ。その前のはあれか、レウスさんの宝箱に入ってたやつか!? これ絶対貴重だろ。あっぶねー、死んでたら奪われてたのか? そういやマギナの奴らを倒したけど、素材は手に入れてないな。全て処分した後だったのか。つまり素材は高く売れ……ネーカもカーネも十分に五あるし、これを武器や防具にしたら……うーん」
「素材を掲示して相手の興味を引き、交渉材料にするのは基本だ」
「そうか。んじゃ参考にしてもらおう。ブルーアクアマリン、それにターコイズ、宝石だけじゃあれだろうし、ノード青霊鉱のかけら? ノード黒霊鉱を入手したときに勝手にゲットしてたものだよな。これらを掲示してみよう」
「掲示素材としては三つもあれば十分だろう。相手に興味を持ってもらえるといいな。他に用向きはあるか?」
「いや、そろそろログアウトしたいしサポート機能についても調べないと」
「そうか。ゆっくり休めよ。それじゃあな」
ターバン男は決めポーズをしてふっとその場から消えた。
ホログラムNPC、すげーな。
こいつらはAIだから発言や行動は自立型で行われてるんだろう。
もはや人間だ。
「さて、今日はもう休んで明日返事があるのを期待して……?」
『ダッシュ様、メッセージが届きました』
「うお!? オメガさんか。久しぶりの登場だな。もしかしてエトネブルーさんから?」
『はい。文章を読み上げますか?』
「頼む」
『ダッシュさんへ。私なんかに返信ありがとう。えっと、素材見ました。受けたいと思うので返事を待ってます』
「おお! けんきょで素朴な内容。リリや幼女とは違うていねいさ! これはまともな人に違いないぞ。早速返信だ……ってパッセンジャーをとおして返信ってどうやってやり取りすりゃいいんだ?」
『ご安心ください。オメガがパッセンジャー用の端末に接続し、全て処理できます!』
「オメガさん、もしかして出番無くてやきもちしてない?」
『そんなことはありません。ですが、オメガを沢山頼って欲しいです』
「っていってもなぁ。オメガさん消えたり現れたりするから」
『ダッシュ様はオメガを上手く使えておりません。このテンプルヴァイスは特別なタイプですから、もっと多くのことができるんです』
そう言われてもな。今は……「オメガさんの運用方法については後ほどにして、今はエトネブルーさんとやり取りをしたいんだ」
『承知しました。現在ログイン中のようです。オープントークを使用して通話を行いますか?』
「できるの? 頼む。無理強いはしたくないから向こうが良ければで」
『オープントークを実行……展開。受諾されました』
「はっや! ちゅうちょのない性格の人か」
初めてのまともなプレイヤーさんとの会話だ。
少し緊張するな。
「あのー。突然依頼を出しちまってすんません。俺、ダッシュって言います」
「えっと……」
「あのー?」
「えっとね……私なんかで本当にいいの?」
……あれぇ!? か細い女性ボイスなんですけど。
しかも、私でいいの? って、けんきょな人が断るための初手か?
いやいや、そうだ。緊張してるんだ。
ここは緊張を解いてやるべきだ。もっとフレンドリーに!
「もちろんオッケーっす。こっちからお願いしてるわけだし、いいに決まってるというか頼みたい。別の大陸の情報とかも交換できたらなー、なんて。ははは……」
「私はしがない魔族。えっとね。私ゲームとか下手だし、可愛いキャラで選んだだけなの。こんな私じゃ戦ったりできないし、生産でもしていればいいかなって。でも世界観がよさそうで、私なんかプレイしたら迷惑だよね」
「さ、さいですか」
「えっとね。依頼、本当に良いって言ってくれてありがとう。でも私なんかが造った装備じゃ明日も見えなくなるかもしれないよ」
……そのとき俺は確信した。
名は体を現すということを。
この人はエトネブルーさん。
ブルーが好きなんじゃない。
えっとが口癖なブルーな人なんだ。
これはいかん。回避すべきか?
「あ、あんまり乗り気じゃないなら無理して造らなくても、なんてなー……」
「えっとね。そうだよね、私なんかに頼むくらいならゴブリンにでも造らせた方がいいよね。うん、私なんかゴブリンに食べられればいいよ。そう、ダッシュさんの武器もまともに造らせてもらえない私なんて、ただのゴブリンのエサ。ゴブエサだよね」
ゴブエサってなんだよ! つーかどうすんだこれ。
収集つくのか!? エトネブルーってよりマジブルーだよこの人。
いや、人ってか魔族だからこの魔族? 魔人? 分からん!
こっちまでブルーになりそうだわ!
「いや、俺としてはぜひ、そのぜひにでも造ってもらいたいんだけど、その、お願いいたします……」
「えっとね。依頼を出していたのは格闘武器だけど、どんなものを造りたいのか教えて欲しいの。その、格闘とか人気が無いから私にぴったりだなって」
その発言には少しばかりカチンとくるぜ。
こっちは格闘で難局を乗り切ってるんだ。弱点こそあるがな。
「……格闘が弱いとは、俺は思わないけどな」
「そうなの?」
「ああ。それにエトネブルーさんだって戦い慣れたらとても強くなれるかもしれないだろ?」
「……えっとね。そんなこと言われたの初めて。うん、決めた。ダッシュさんの武器、頑張って造ってみる」
「おう! それで素材はどれを渡せばいい? どんな武器ができそうだ?」
「私の造れる武器なんて、みんなゴブエサ程度だよ」
秒でまたブルーモードに戻るんかい!
「ゴブエサを要望しているわけじゃないんだが」
「頑張って造ってはみるけどゴブエサになったら大変。だから最初はゴブエサみたいな素材がいいかな」
「ゴブエサみたいなのって。待てよ、ゴブリンのくさい腰布とかいう装備が余ってる……」
「本当!? それで練習させて!」
今日一番の食いつきがゴブリンのくさい腰布ってやべーぞおい。
俺はまたまずい奴と知り合ってしまったようだ。
この素材に関しちゃ売ってもきっと二束三文だと思っていた。
使ってもらっても構わないが……「エトネさん。武器以外も造れたりする?」
「えっとね。数次第ではできると思うよ。こんな私だか……」
「オウケイオウケイ! エトネブルーさんを信じる。俺が持ってるゴブシリーズ全て、それからゲイルバットシリーズも全部託す。宝石類や鉱石類も大体渡そう。それでエトネさんには現状作れる最大の武器と防具を製作して欲しい」
「うん。格闘武器と防具だね。でも格闘って遠くの敵を攻撃できないよね。だから死んじゃうよね」
「ぐっ……そこは気にしていたところだ。盾も使ってたんだけどロストしちまったし」
「それなら。遠くを攻撃できる遠隔武器と盾をまとめた装備、造ってみていい? ゴブエサになるかもしれないけど」
「遠隔攻撃と盾をまとめた装備!?」
まさかのブルーキャラ! 著者の過去作品ではすべて合わせると総計400人ほどの登場人物がいそうですが、その中でもブルーキャラは初登場です!
エトネブルーさん。
最初の名前で想定していた人がいたら神。




