第30話 マジックウェポンと競売出品
ついに公式ショップのほんの触りが明らかに。
「それではダッシュ様。ごゆっくりパッセンジャーを観覧してくださいねー」
バイバイの仕草まで可愛いミミー。
彼女のおかげでマジックウェポンについての詳細な情報が得られた。
マジックウェポンは文字通りに素材からしてマジック。つまり魔力持ちの素材から作られた武器。ここまでは想像も理解も容易。
マジックと名の付くようなアーマ類に関しては入手がしやすく、武器に関しては入手が困難。当然ながらこれはあくまで加工しやすい素材による防具のこと。
ではなぜマジックウェポンが入手し難いのか。
単純に魔力がこもった素材を加工しても、それはマジックウェポンにはならない。
武器とは人の手により握られるものであり、必ず持ち手がある。
持ち手より魔力を伝わらせて初めてマジックウェポンとして機能する、その仕組みを作らねばならないのだ。
防具類の大抵はその必要性が無く、自らの魔力を防具にまとわせることが容易である。
では、なぜマジックウェポンが重宝されるのか。
それは、マジックウェポンの種類によって専用の【マジックスキル】を習得できるというのだ!
これまで覚えたスキルが少なく感じたのは、このマジックウェポン習得でのマジックスキルが豊富にある影響だろう。
習得したマジックスキルは一度覚えてしまえばその武器を使い続ける必要はないようだが、コレクション要因としても有用。ベースポイントに飾り棚を設けてずらりとマジックウェポンを並べるのもおつのものだろう。
マジックウェポンには単純に威力が高いものもあれば、付加効果として攻撃のタイミングで燃え上がったり、氷結させたりする効果が出るものもあるらしい。
そしてさらに、マジックウェポンにはレア度が設定されている。
より上位のレアマジックウェポンは名称が変わったり、二つ名がついたりする。そして当然ながら、上位のマジックスキル獲得のチャンスがある。しかしこれがそう簡単には覚えられないようだ。
そしてさらに! マジックスキルの所持組み合わせ次第では、それらがキーとなりマジックスキル連携攻撃が単独で行えるという。
例えばワンツーとキックがマジックスキルだったとすると、ワンツーキックみたいなマジックスキル連携ができる……ということなのだろう。さらにさらに深いひねり要素があるとのことだったが、そこは伏せられていた。
このあたりは手に入れてからのお楽しみというやつかな。
さて……「ベッドとテーブル、椅子二つ。合わせて1万カーネ。これで準備は整った。まずはネーカを手に入れないと。返り討ちにして装備品も奪ったんだよな。インベントリ確認すっか」
まともに装備インベントリ確認すんの、初めてじゃね?
ついでに素材やらも確認しねーと。
※インベントリアイテム、装備※
強襲用リベラルツインダガー(MWーR)
強襲用リベラルツインダガー(MWーR)
強襲用サイレントダガー(NーH)
インスタントナイフ(N)
エッジランサー(N)
エッジランサー(N)
ヒットソード(N)
ヒットソード(N)
シンプルナックル(NーH)
準騎士用軽装鎧(N-H)
準騎士用軽装籠手(N-H)
準騎士用軽装佩楯(NーH)
準騎士用軽装靴(NーH)
槍士の服(N)
槍士の服(N)
槍士のズボン(N)
槍士のズボン(N)
槍士の靴(N)
槍士の靴(N)
サイバースーツ(N)
奇妙な仮面(※未鑑定※)
……ざっと見ただけで装備はこんなもんだ。
この奇妙な仮面、どうやって鑑定するんだ? この情報に関してもどうにか調べないとだな。
驚きなのがMWって表記の武器が二つあったことだ。これはマジックウェポンで、その後ろにはRの文字。つまりレアだ。
あのマギナってやつが持っていた装備だろう。
他のはN、ノーマル装備でHは上位ってことかな。
うん。全部売っちまおう。
俺はダガーなんて使うつもりはない。
正直スタイルについては悩んでいるが、短剣なんて似合うはずもない。
動き回りながら考えて行動すんのは好きだが、それと接近戦のみってのはちょいと矛盾してるんだよな。
遠距離武器が無いと赤鎧魔族野郎みたいに飛ばれると詰む。
そこも検討しねーとだが……まずは早速パッセンジャーの競売にアクセスして不用品の出品を試してみるか。
【Welcome、To、パッセンジャーオークション!】
備え付けられた機械のようなものに触れ、競売を選択すると、大きなロゴと共にホログラムのNPCが現れた!?
今度はターバンを頭に巻いた商人風の男だ。
「よう。新顔だな。オークションに出品するのかい?」
「ああ。次々人が出て来てびっくりするわ」
「はっはっは。そのうち慣れるだろうさ。出品したいものを並べてくれるか?」
「分かった」
ターバン男に言われたとおり全ての装備品を並べると、それぞれの最終落札価格が視覚的に表示された。
これは便利。値段をつけやすい。
ノーマルは二束三文だが、マギナの装備だけ5万ネーカもついてる!? まじかよ、すげえ……。
五万で二本売れれば十万か。
「こいつは高値で売れる上に在庫がない。値段はもっと上がるかもしれないが、いくらで出品する?」
「んじゃ六万で出してみるか。二本で十二万。手数料は六千カーネ。結構するな」
「では、この二つは直ぐに出品しよう。他のものは大体相場以下で売らないと売れないかもしれないな。装備しているものは売却できないぞ」
「分かってる。他の雑多なやつの値段設定を任せることもできるのか?」
「ああもちろんだ。残しておきたいものはあるか?」
「いや、無いよ」
「では全て預かろう……おや、六万ネーカで出したマジックウェポンは完売したようだ」
「はやっ!? 秒で売れるのかよ。もっと釣り上げてもよかったか。失敗したぜ」
「いいや、あまり欲張らない方がいい。入手経路が明らかになればMGーRクラスは値段も下がるだろうからな」
「そっか。素材も売ろうかなと思ってるんだけど」
「素材は競売に出すのもいいが、自分専用の武器を自分で造ったり、造ってもらったりすることもできるぞ?」
「んー、鍛冶をするかってことか? パスかな。誰かに造ってもらうならアリだけどさ。格闘、いいの売ってたら買いたいんだよ」
「格闘のラインナップを検索してやろう。要望はマジックウェポンか?」
「できれば」
「少し待ってな……ダメだ、現在パッセンジャー上に格闘用のマジックウェポン出品は無い」
それもそうか。なにせ二日目で、不人気武器。
簡単には手に入らないよな。
「それじゃ格闘武器を造ってる鍛冶士とか検索できたりする?」
「可能だ。少し待ってな」
当面困らないだけのカーネとネーカは手に入った。
ログアウト前に装備の手配だけ全て終わらせちまいたいな。
「4人検索に掛かったぞ。リストを掲示するから好きなやつを選んでくれ。ちなみにガイアへ所属していない者にも依頼を出すことができる。よく吟味して選んでくれ」
他プレイヤーとの交渉。
いよいよMMORPGっぽくなってきた。
どれ……。
マジックウェポン。
これは総称で、マジックウェポンだからといって強いとは限らない。
その種類はとても豊富で、例えば調理をなりわいとする者がただのフライパンとマジックフライパンを
使用すると、マジックフライパンは火のないところで炒め物ができる便利道具となる。
しかし外れのマジックフライパンを手に入れると、火で炒めるのではなく氷で炒めることになるのだ。
ようはぴんきり。そして氷で炒めるフライパンはお察しのとおり、マジックウェポンの部類から外れてしまう……という設定である。




