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パクリマスオンライン 六つの企業が協力して完成された、最先端のTRMMORPG  作者: 紫電のチュウニー
第5章 魔包学校 ロザリィ

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第314話 魔包学校ロザリィへ向けて。ダンジョンへの準備

■ララ・チルドの町 レンズ内■


 アンセムさんはレンズで依頼を見ていた。

 いや、自分たちが来るのを待っていたかのようだった。

 

「……いいだろう。ただし条件がいくつかある」

「条件ですか?」

「ああ。まず1つ。支度を整える必要がある。その恰好なら野党やモンスターのいい得物だ。」

「そうね。ロザリィまでは安全じゃないから」

「分かりました」


 バヨウも出るかもしれないし、だからこそアンセムさんの協力が必要だ。


「2つ。お前たちの性別は逆にしてもらう」

「ちょっとそれ、どういう意味!? 私よりクラリィの方が可愛いって言いたいの?」

「……まず女性から狙われるからですか」

「そうだ。女連れで旅をする場合、先に狙われるのは女だ」

「うっ……わ、私だって少しくらいは戦えるし」

「衣類が破れてもか? 男が集団で襲って来たら女は足もすくむ。鍛え抜かれた女戦士であっても恐怖すると言っていた」

「うう、怖い……です」

「旅の間だけなら構いませんよ。それでミルフィさんが安全になるなら」

「クラリィ……」

「3つ。道先は俺に従ってもらう」

「ルートは一本道いっぽんみちじゃないんですか?」

「お前は……そうか、記憶が無いんだったな」

「この町はね、崖の下にあるの。ぐるっと回ってロザリィに行く方法と、洞窟……ううん、ダンジョンに入ってロザリィへ向かう方法と2つあるのよ」

「ダンジョン?」

「そうだ、ダンジョンを通っていく。この大陸にはいくつかのダンジョンが存在する。それらはある期間ごとに内部構造が変わる」

「……まるでゲームみたいだ」

「ゲーム?」

「いえ、なんでもないです。そのダンジョンに入る? ……には」

『ファーヒー!』


 ……あれ、レンズの中なのに、この中で鳥のような鳴き声? 


「クラリィ。そのカバンの中から変な鳴き声したよ? 何しまってあるのか気になってたけど」

「え? この中は何も……わっ!」

「何か光ってるみたい。カーネが入ってるの? 100万カーネくらい入ってない!? 出してみようよ!」

『ファーヒー!』


 ……うわ。金色のカーネが10枚飛び出て来た。

 

「ほ、本当に100万カーネが出て来た!? なんだぁ、クラリィってお金持ちだったんだ」

「それは魔道具か。それだけあれば十分な支度ができるな。これは魔族が作ったものか。少し見せてくれ」

「はい……どうやって出て来たんだろう?」

「言葉に反応するタイプだ。疑似生物の類か。声がする前の言葉をいくつか連想して試してみろ」

「ええと……」


 その後いくつか試した後、ルーニという言葉に反応したことが分かる。

 眼の光った状態で金貨を入れてみると、振っても戻ってこなくなった。

 またカーネを要求すると出してくれる。


「便利な魔道具だね。これなら食事とかも沢山詰められそう」

「荷物はお前に預けよう。楽な旅路になりそうだ」

「あはは……でもダンジョンに行くんですよね。武器も防具も何もないから揃えないと」

「まずは買い物だね。私も可愛い服、着ようかなー」

「お前は男装だ」

「はっ! そうだった……じゃあクラリィに可愛い服、着せよっと」

「戦いやすいのにしてください。スカートは絶対に履きませんからね!」

「足が見えた方が可愛いのに」

「ダンジョンに入る恰好にしておけ。中は寒いこともある。俺の知っている店に向かうか」


■ラテ・チルドの町 市場内 戦具アーモンド■


 アンセムさんに案内されて訪れたのは、市場の奥の方にある小さな店だった。

 ボロボロの看板があるだけで、外には何も飾られていない。

 たてつけの悪い扉を開いて中に入ると、少しホコリっぽい感じがする。

 音に気付いたのか、店の奥から1人の老婆がやって来る。 


「誰だい、こんな時期に。今日は休みにしようと思ったんだけどねぇ」

「そう言っていつも休もうとしているな」

「なんだい、オーバーキルか。また武器の手入れにケチつけようってのかね?」

「客を連れてきた。旅道具を3人分、6日分のランタンオイル、それから火薬もだ」

「出かけるのかい? 遠出は珍しいね。しばらくはここにいるんじゃなかったのかい?」

「用事ができた。そっちの男には女装を、そっちの女には男装を仕立ててくれ」

「そいつは面白い注文だ。ふむ……そっちの若いお兄さん」

「はい?」

「……あんた何者だい? 只者じゃないね」

「ええと……」

「クラリィは記憶がないの。でも舐めちゃいけないわ。お金持ちなのよ」

「……この婆さんにそれは禁句だ」

「なんだって!? そいつはいい。ひゃっひゃっひゃ、安くしとくからたんまり買っていっておくれ」


 ……自分の頭の中は、話を聞いているようで聞いていないような、ぼーっとした感覚がずっとしている。

 やっぱりよく眠れてないのかな。

 それとも武器と防具を見ているせいなのか。

 ここには盾や剣、木細工でできた胸当てなんかも売っている。

 その中の、金属の武器を手に取ってみるが、自分にはしっくりこない気がする。


「気に入らないかい? そいつは魔銅性だね。悪い品じゃないよ」

「自分には合わない気がします」

「ふうん。ガタイはがっしりしてるね。相当鍛えてたんだろう?」

「分かりません。覚えていなくて」

「あんたは魔戦士タイプだったのかもしれないねぇ」

「魔戦士?」

「自分の魔力を使いながら戦う者のことさ。武器や防具に強化魔法を付与して戦うから、あんまり武器にこだわりがない」

「魔法のみで戦ったら魔法使いですか?」

「そうさねぇ……いいや、魔法や能力で武器を生み出して、さらにそれらを強化して戦う者もいる。そいつらはエンハンサー。出会うことは稀だね」

「……あの魔包力計測が本当なら、クラリィはもしかしてそういう戦い方なんじゃない?」

「俺はお前がエンハンサーだと思ってここへ連れてきた。エンハンサーはどの武器を使用しても馴染まないらしい」

「ま、その感じじゃ自分の能力も忘れちまってるんだろうさ。せめて護身用にこれなんかどうだい?」

「おばあちゃん、乗せ上手ね」

「ひゃっひゃっひゃ。エンハンサーなんてこっちの商売あがったりの相手だからね。ほれ、握ってみな」


 そう言われて渡されたのは短剣だ。

 サヤに収められていて、そこから引き出すと……サヤも短剣になった!? そのまま短剣を戻そうとするとまたサヤになる。


「これは?」

「ダブルダガーと言ってね。サヤから抜くと2本の短剣になるのさ。軽く振るってみな。いいかい、軽くだよ?」

「こう? あっ」


 片方の短剣をゆっくりと軽く振るうと、びゅうという強い風の音がして、近くにいたミルフィさんの髪が揺れる。


「そいつには高い魔包の力が宿してある。値段は張るが良い魔道具さ」

「どれどれ、クラリィちょっと貸して……えい!」

「あっ」

「……弁償だねぇ、こりゃ」

「ご、ごめんなさい」


 ミルフィさんが思い切り振ると、真正面にあった鎧が壊れてしまった。

 でも、パーツが分かれただけだから、それを買って身に付ければいいかな。


「それじゃ他には、これとこれとこれと……よしよし、こんなもんか。お嬢ちゃんのその服もいれて、と。計算するよ」

「ランタンと旅道具は俺が払う」

「いえ、いいですよ。カーネは持っていたみたいですから。お願いする立場ですし」

「そうそう。だからダンジョンで手に入るものも山分けよ?」

「分かった。そうしよう」

「お嬢ちゃんの方の男装服もそこそこの値段がするけどいいのかい?」

「ええ。構いません」

「それなら、全部で50万カーネってとこだね」

「高っ! いいのクラリィ?」

「いいんじゃないですか? 高そうな短剣だし。はい、カーネです」

「ひゃっひゃっひゃ。いい買い物したよ。確かに。ほれ持ってきな。着せるのを手伝うのはサービス。可愛くしてやるよ」


 ……お金は結構使ったけど、護身用には十分かもしれない。

 商品を身に着け、お店を出る間際にアンセムさんがぼそりと呟いた。


「その短剣、ルーン国で売れば倍はする」

「ちょっと、なんだって!? オーバーキル、そういうのはもっと早く言わんか!」

「おばあちゃん、ありがとねー!」

「ありがとうございました!」

「もっと踏んだくればよかったわ! この商売上手共。気を付けて行ってきな!」

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