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パクリマスオンライン 六つの企業が協力して完成された、最先端のTRMMORPG  作者: 紫電のチュウニー
第5章 魔包学校 ロザリィ

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第312話 戻ってきた手紙

 アンセムさんは少し怖い表情でこちらを見ている。

 あんな動きをする人と自分が手合わせ? 

 ……なぜだろう。

 体は戦いたがっているような気がしてならない。

 どうやって? 自分は、バヨウに飲み込まれて武器を体内に放置したんだ。

 だから戦うための道具も持ってないのに。

 

「どうして自分なんかと?」

「お前の力を知っているからだ」

「どういう意味ですか?」

「最初に見た時から只者じゃないと分かっていた。お前の髪からゴミを取る時に、魔包力を測らせてもらった」


 ……それであの時。

 けど、魔包力が高いとあんな動きができるのだろうか。

 無理だ。自分は何もできない。

 

「前にもお伝えしましたけど、自分は記憶を失っていて。とても戦える感じではありま……」


 言い終わる前に剣を振るってきた!? 

 とっさのことなのに、身を交わして、気付いたらアンセムさんから遠く離れた位置にいた。


「何をするんですか」

「寸止めのつもりだったが、あれをかわすか……だが、悪かった。どうやら勘違いだったようだ。レンズへ戻ろう」

「……はい」


■ラテ・チルドの町 門前■


 町の門前まで戻ると、心配そうな顔で隊長さんが駆け寄って来る。

 アンセムさんは礼をするからレンズへ来るようにと告げて、先に行ってしまった。


「戻ったか。遅いから畑まで見に行ったんだ。誰もいないから心配したぞ」

「すみません。アンセムさんの手伝いをしていたもので」

「アンセムの手伝い? お前さんが?」

「はい。チョコレさんに薬草を届けた後、自分もレンズへ向かいます」

「ああ……しかしあのアンセムがねぇ」


 剣を向けられたのに全然怖くなかった。

 それどころか、高揚感を得ていた気がしてならない。

 それもまた、自分を思い出すヒントなのだろうか。

 でも、バヨウの呪いをどうにかしないと元には戻れないのかな。

 そう考えながらチョコレさんの家に辿り着き、薬草を詰めた箱をテーブルの上に置く。

 どうやら留守のようだ。

 そのままレンズへと、ぼーっとしながら歩いていく。


 自分は……何をしようとしていたのだろうか。

 怪物に食われていたのなら、死のうとしていたのか? 

 それとも、倒れていたところを食われたのか。

 他に同行者はいたのか。

 誰か頼れる人は? 

 分からない。思い出せない。


■傭兵所レンズ前■


 無駄な考えを思い浮かべていると、レンズに辿り着いていた。

 重い扉を開くと、中にはアンセムさんはおらず、しかめっ面をしたミルフィさんだけがいた。


「遅いよクラリィ。それにその恰好」

「ええと……そっか、自分の名前」

「もしかして忘れてたの!? 昨日決めたばかりなのに」

「なんか馴染めてなくて。まだミルフィさんにしか呼ばれていませんし」

「それもそっか。そうそう、せっかく来てくれて悪いけど、その服じゃ受付は任せられないよ。制服じゃないし」

「昨日のって制服だったんですか!?」

「そうよ。それとね、アンセムさんのお手伝いをしたんだって?」

「ええ。待ってくれてると思ったんですが」

「照れ屋なのよ。はいお駄賃」

「こんなに!?」

「それと伝言。銀貨1枚で依頼をひとつ受けてやる。ですって。何なのかしら? まさか、デートの依頼とか!?」

「男同士でですか? そんなことしませんよ」


 もらったのは銀貨4枚。

 ウルフを台に乗せただけなのに。


「気に入られたんでしょ。もらっておきなよ。それとこっちはチョコレさんに」

「手紙? もしかしてもう折り返しの連絡が?」

「ここから魔包学校まで歩いたら遠いけど、手紙ならアレを使えば直ぐだから」

「へぇ。どんな方法なんです?」

「見たら驚くよきっと」

「自動車やバイクとか?」

「じどう、しゃ? 何それ」

「車輪がついててエンジンがあって……」

「??? なぁにそれ。もしかしてクラリィはすっごく遠くから来たの?」

「分かりません……でも、そんな乗り物があったはず」

「面白そう。でも違うわ。ここら辺にはね。大人しいラテ・ワイバーンというのが生息しているの」

「ラテ・ワイバーン?」

「そう。それに手紙を運ばせれば1日で十分手紙の往復はできるわね」

「へー。面白い運び方ですね」

「あはは……本当に記憶が無いと大変ね。明日はレンズ、お休みだからあちこち案内してあげる。今日は頑張ろー!」

「はい、分かりました。男性用の着替えは?」

「無い! ということで今日も女子服でお願いします!」

「嫌です」

「うっ……だって可愛いじゃない。良いから着てよ、お願いよぉー!」

「い・や・で・す。もう女装はしませんからね」

「えーんせっかくもう1人の女子受付が増えたと思ったのにぃ」


 それって結果的に女子の受付は増えてないんじゃ。

 それなら女子受付を雇えばいいのに。

 あれ? そういえばミルフィさん以外の受付の人、まだ会ってない。

 どこかにいるのかな。


「ミルフィさん以外の受付の人ってどこにいるんですか?」

「今、バヨウの報告をしにロザリィへ呼び出されてるのよ。だから今日は2連勤なの。本当なら休みだったのに。早く戻って来ないかな」

「でも昨日、仕事を代わりにさせてましたよね」

「ぎくっ。あははー、ちょっと私、お掃除してくるねー。クラリィは仕方ないからこの前掛けつけて待機!」

「……ピンクじゃないですか。はぁ、女装よりマシかぁ」


 その後、幾人かの受付をすることになり、その前掛けのことで少しだけからかわれた。

 昨日とうって変わって訪問者が多く、レンズの受付にも慣れてきた。

 依頼の受注から完了、料金の支払い等一通り(ひととおり)のことを覚えた。やってみると結構面白い。


「終わったぁ」

「盛況でしたね。いつもこれくらいの量を?」

「ううん、今日は多かった。バヨウが倒されたから外でこなせる依頼が増えたのよ」

「そんなに危険なんですか、あのバヨウって」

「ええ。警告が出ている間、町からは一般いっぱん市民全員、外出禁止令が出るの」

「外に出ていたのは?」

「警備隊、それからレンズの傭兵でもC級以上。この町にはB級までしかいないから、数は少ないわね。ルーン国の首都まで行けば、Sランクなんてのもいるわよ」

「Sが最も高ランクなんですか?」

「噂だと、Sの上、Lがあるらしいのよね」

「へぇ。そんな依頼、この町には無いですよね」

「当然よ。Sランクが受ける依頼って、相当な怪物だもの。大型のサイクロプス討伐とかね」

「っ!」

「大丈夫!?」

「は、い。大丈夫です。そろそろ帰りますね」

「うん。明日迎えに行くから……っと、これは今日の分。アンセムさんのと合わせて、これで銀貨8枚かな?」

「いいんですか?」

「ええ。良く働いてくれたもの。そうだ、明日はそのお金で買い物もしてみない?」

「そうですね。チョコレさんは受け取ってくれないし。これで何かお礼の品物でも買おうと思います」

「決まり! っていうか欲が無いなぁ。でも、そういうトコ、良いね。お疲れ様!」


 お金か。持っているだけじゃ何の意味もないものだ。

 生活には必要なものだろうけど、今の自分には……。


■チョコレの家■


「ただいま戻りました」

「おやお帰り。悪いね、薬草ありがとうよ」

「いえ、そのくらいのことしかできなくて」

「何言ってんだい。大助かりさ。直ぐに食事の用意をするよ」

「ありがとうございます。これ、ミルフィさんから預かってきた手紙です」

「早いね。どれ……ふむ。こいつは困ったね」

「どうしたんですか?」

「実はねぇ……」

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