第16話 ノード黒零鉱
積雪の地域が多いようです、ご注意くださいませー!
俺のインベントリ内に収納されたそれは、さっきまで隣で話していたあいつのものだろう。
召喚……ってのは、魔法で指定したやつを呼び出す能力だよな?
……また一人になっちまって少しだけ心細かったが、このクエストをさっさと終わらせたい。
さっきの話を思い返しながら、ここがどこなのかを探ろう。
見張りの赤鎧魔族野郎は俺を探すんじゃなく、あいつらの話していたものを用意するために準備をするはずだ。
まずは見張りを探して跡をつけていけばノード黒霊鉱が手に入るかもしれない。
牢屋の中はどこも骨だらけ。
捕まった学生の成れの果て……か。
政府は捕らえられた者を助けることは無い。お得意の遺憾砲を発射するだけだろう。
そんな背景すらにおわせる、リアルな地下牢だ。
■牢獄、?F階段付近■
道なりに進んでいただけだが、道中警備兵が全くいなかった。
行き止まりに階段を発見し、登り終える頃に遠くから足音が聞こえた。
■牢獄、?F採掘場■
上階へ出て、警備兵が見当たらない理由が分かった。
ここは鉱山の地下牢だったんだ。
と言っても、ここも何階かは分からない。階段を出たら何かを落とすような穴が空いており、そこから上空がちらりと見える。
今は夜の模様。周囲に明かりは少なく、作業をしている者は誰もいない。
足音のする方へ向かうと、あの見張り……赤鎧魔族野郎を発見。こちらに気付かずに鉱山の中を進んでいる。
途中にトロッコがあり、その中に手を伸ばすと懐にそれをしまうのが見えた。
俺もその後ろに続いてトロッコの中を覗くと、不気味な雰囲気のある黒い金属がいくつか入っている。
これ、か? お……。
『ノード黒霊鉱を入手しますか?』
インベントリに収納するかどうかの選択肢が出た。
間違いない、これだ。
入手制限がないならいくつか持ち帰……どこにだよ!?
帰還方法は?
手に入れたら自動的に終わるんじゃねーの?
まさかさっき言ってたベルなんちゃらをぶっ倒せとか言うんじゃないだろうな。
冗談じゃねーぞ……だがこのままじゃらちがあかねーし、仕方ねー、出口探すか。
あの赤鎧魔族野郎の跡をつけること位しか案が浮かばない。
奴は坑道の中をうろうろして……行き止まりの前に立った。
なんだ? もよおしてんのか?
「フルフライト」
って、あの野郎、空を飛びやがった!? 魔法使いだったのか。
逃げ道が無いってのは空を飛ばないと外には出られないぅて意味か?
今あいつを見失えば手がかりが無くなっちまう!
「おい待ちやがれ赤鎧魔族野郎!」
「……! 貴様、脱走した異星人。こんなところまで来てやがったか! 始末してやる!」
よし、挑発は成功。
だが、地の利は向こうにある。
俺は格闘野郎で空中の敵じゃどうにもならねー。
「どうした! 貴様らのお得意武器、鉄砲とやらを撃って来ないのか?」
「悪いが鉛玉には無縁でね。代わりにこいつをくれてやるぜ!」
シールドを思いっきり奴めがけて投げる。
やっぱ装備を見直しとくべきだったわ! これも全部リリのせいじゃねーか。
つか、異星に攻め込むのに鉄砲がネタバレしてるじゃねーかよ地球人さんたち!
あの様子じゃ全然効かなかったのかな。
いや待て。AKやらを持ち込んでぶっ放した奴らもいるんじゃないのか。
それで効かないってんなら、魔法の防御か?
『スキル、スローイングシールドを獲得しました』
そんなスキルあるんだ。
ちょっとラッキーな気持ちになったが、ピンチには変わりない。
俺の投げた盾はあさっての方向に飛んでいっちまった。
あれ? 盾、ロストした!?
……これ、捨てただけじゃね?
「はっはっはっは! 異星人のやることはわけが分からんな。貴様など助けを呼ぶまでも無い。串刺しにしてやる!」
「やっべ、武器持ってるじゃねーか! しかも槍かよ」
奴は槍を持ち空中から俺めがけて突き下ろしにかかる。
直ぐ近くにあんのは……これだ!
「おら、お前の大好きなノード黒霊鉱さんだぞ!」
「バ、バカ野郎! それがなんだか分かってやって……」
俺は構わず奴めがけてノード黒霊鉱をぶん投げた。
奴は身を挺してノード黒霊鉱を受け止め、落とさないようにする。
……ははん。こりゃいい。
くっくっく。マイターンキタコレ!
「オラオラ、お代わりだコラァーー!」
「ば、よせ! 止めろ!」
ついに奴の顔面へヒットしたノード黒霊鉱が、奴と共に地面へ落ち……その瞬間、半透明な白い何かが飛び出て来たように見えた。
それはみるみる薄気味悪い形に変化していく。
リアル過ぎるお化け。
誰だこんなもん作ったの!
別に俺はお化けなんざ信じちゃいない。
迷信だ。いや、そもそもリアル過ぎるだけでゲームだろ? ゲームをしてる俺に見えるお化け? いや違う、落ち着け!
今しがた骨と相棒契約を交わした俺だ。
骨の方がお化けとしては上の存在だよな……骨は平気だったんだ。
これは……「怖ええええええ!」
その形は絶妙にシミュラクラ現象(三つの点が顔に見える)を形作り、口部分から薄気味悪い紫色の半透明なものを吐き始める。
そして四か所に青白い炎が灯り、それらを周囲に撒き散らし始めた!
「く、大レイスが作動してしまった。応援を呼びに……」
「……フォオオオオオオオオオオオオオオ!」
赤鎧魔族野郎が起き上がり、レイスとか呼ばれた半透明の化け物の上空を飛んで逃げようとしていた。
だが、半透明の手が奴をつかみ地面へ叩きつけると、赤鎧野郎はみるみるうちに燃え上がり、その炎は奴の全身から吹きだした。
殺しやがった……こいつら仲間じゃねーのかよ。
「……フォオオオオ」
「おいおいおい、これピンチだろ。どうしろってん……いや、半透明には半透明を、か?」
相棒よ。早速頼むぜ。
こいつは俺の手には余る。
つか、せめて飛び道具を手に入れねーとどうにもならねーのがよく分かった。
「インベントリアイテム、召喚、バシレウス・オストーを使用する。俺と一緒に戦ってくれ、相棒!」
ノード黒零鉱。
文字通りに零が詰まっていました。
しかも怖いやつです。
クラシッククエストも大詰めですね。




