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パクリマスオンライン 六つの企業が協力して完成された、最先端のTRMMORPG  作者: 紫電のチュウニー
第5

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第13話 クラシッククエスト

国立駅は南口エリア。

その真正面に伸びる道には桜の木が立ち並び、南武線谷保駅へと続いています。

さらに谷保駅を越えると、菅原道真をまつる谷保天満宮があります。


■エリア、国立ステーション■


 ハンドフープに乗り速攻でたどり着いた国立駅。

 線路から駅に上がって直ぐ、奇怪な黒い鳥が飛んでいた。

 それは餌を追い求めるかのようにふらふらと……襲い掛かってきやがった! 

 いや、鳥じゃねー。

 コウモリか? それにしちゃ……「ゲイルバットよ。おかしいわね。このモンスター、非アクティブのはずなのに。しかも四匹も」

「ゴブリンくらいのサイズのコウモリとかきもいわ! 何喰ったらこんなでかくなりやがるんだ?」

「ゴブリンじゃないの? 確かそう聞いたような……余計な戦闘は避けたかったけど、ここは私の出番よね」


 ……おい、なんでそうなる。

 俺にも戦わせ……大変なことに気付いてしまった。

 

 空中の敵、どうすんだこれ!? 

 リリの持ってる大剣なら、上空の奴とも少しは戦えそうだけど。

 だがしかし俺は格闘野郎。

 拳を振り上げてもリーチは手の長さだけ。

 俺の手は器用に伸びたりしない。

 上から突かれても手を振りかざして怒るだけ。

 空中のモンスター、詰んでね? 


「はぁっ!」……などと言いながらリリは楽しそうに戦っている。

 そうだ。この守銭女を観察しパクリマを研究しよう。


「旋風斬……三日月!」

「……楽しそうだなぁ」


 リリが大剣を円弧のように振り払うと、ハンドフープと同じように発光が見られた。三日月をかたどるようにゲイルバットへとその発光が飛んでいく。

 あの大剣、おかしいと思ってたんだよ。

 序盤から手に入る武器か? 

 つか、魔法じゃねーのかよ今の。

 ……黒く長い髪は動きに合わせて青いワンピースと共に揺れる。

 鋭い目は誰も寄せ付けない、信用もしていない。そんな印象を受ける。

 現実はどうか知らねーけど、キャラメイクってのは性格が出る。俺なら血走った目でゲームをやってる危ない野郎だ。

 ゲームでヒューマンを選ぶなら、顔は自分に似せるか理想的な自分を描きたくなるはず。

 リリはなんつーか、まんまだな。

 しっかしこいつの動き……すげえ。

 ゲーム慣れなんてレベルじゃない。

 純粋に上手すぎる。四匹いたデカコウモリを引き付けながら全て切り伏せやがった。


「ふう。レベル15達成っと」

「もう15? 冗談だろ?」

「ううん。本当よ」

「なぁリリ。配信してるっつったけど、お前プロゲーマーだよな」

「……そうね。本当に私のこと知らないんだ」

「ああ。そんなお前がなんで俺なんかと遊んでるか聞いてもいいか」

「君が特典で得たリリの通信機。それはね、私がしこんだものなの」

「テンプルヴァイスの初版品には全て特典がついてるんだろ? それってランダムじゃないのかよ」

「私とあなたのテンプルヴァイス以外はランダム。ライセンス試験首位の報酬ほうしゅうで用意する予定だった特典アイテムはこの大剣三日月よ」

「……んだとぉ!? ならそれは、俺の装備品じゃねえか!」

「何言ってるのよ。私とパーティーが組めるのよ? こんな剣なんかより何倍も価値があるじゃない」


 なんという理不尽。

 こいつはプロゲーマー。何を言ってもそのナーガとやらの初期ぶっ壊れアイテムは手に入らないだろう。

 

「そのナーガみてえな武器、どうやったら手に入るんだよ」

「そうねぇ。これは特典としてはさほど強いとは思えない程度のものだけど……ううん、まだ言わない方がいいわ。コウモリも倒したし、先に行くわよ」

「お、おい待てって」


 リリは呼び止める俺を無視して先に歩きだした。知りたいことが多すぎるが、そろそろログアウトした方がいい時間だろうし、我慢するしかねー。


■エリア、サクラストリート


 この辺りはプレイヤーが全然いない。

 現実世界と同様、桜の木が一直線いっちょくせんに立ち並ぶ美しい道だ。

 眼前には広く開かれた門。

 モンスターも見当たらない。人がいないだけでただの大学入口じゃね? 


「着いたわね」

「なぁ、この世界ってあまり破壊されてる様子がないように思えるんだが」

「人は表面しか見ないから。それが分かるほど知能レベルが高い相手ってことなの」

「へ?」

「せっかくだからストーリー設定は見ておいて欲しいかな」

「……ああ。何だよ急にしおらしくなるなよな」

「ふふっ。もう少ししっておいて欲しかっただけよ。さ、行ってらっしゃーい」

【クラシッククエスト、魂のくびきを開始します。ログアウトが制限されますのでご注意ください】

「へっ?」


 油断した。いきなり背中を強く押され、大学入口をくぐったその瞬間。

 現実感から引き剥がされた。

 なんなんだ、これ。

 今しがた俺は大学の入口にいたはずだ。

 なのに後ろが壁。見覚えの無い汚い部屋に放り出された。

 いや、鉄格子がある。牢屋か? 


「おい、リリ! どうなって……」


 ……いねぇ! 


「うるさいぞ異星人!」


 牢屋の外には赤い鎧に身を包む兵士風の男。頭には二本の角。

 口から見える牙。

 魔族か? すげーリアルだ。

 そうだ、落ち着くために一度いちどログアウトして情報を……。


【ログアウト制限エリア】


 ……はい? いや、ログアウトを。


【ログアウト制限エリア】


「おい、冗談だろ!」

「うるさいと言っているだろう! 少し痛い目に合わないと分からないようだな」


 うおお、牢屋の中に入ってきやがった。

 ごつい、でかい、赤い! いやいや、びびるな。この場所なら空中には飛べない。

 まともに戦えるんだ、強気でいけ。


「ここ、どこだよ」

「ああん? お前何言ってやがる。異星人を捕えておく牢屋の中に決まってるだろうが」

「ふーん。大学じゃない、か」

「いい度胸だなお前。その仮面はこっちの仲間入りでもしたかったのか? はっはっは、残念だったな。所詮お前らは単なる労働力なんだよ」

「労働力ねぇ。会社だったら炎上するぞ」


 ログアウトできねーし。

 わけわからねー状況だし。

 守銭女にははめられるし。

 変な仮面は外れねーし。

 イライラの頂点だったんだわ。


「悪いが、こっからは……完全な八つ当たりだ!」

くびき の意味するところ(【】つけなのでそちらに意味は書きませんでした)は比喩的な意味合いで束縛を現すものです。

魂のくびきはつまり、束縛される魂。そうとらえていただくと、なるほどに……! と感じられるかもしれません。


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