黒いコスモス達は、たまごを肴に咲き誇るのか
私は黒里桜子。黒髪黒目、黒いファッション好きの会社員。黒子ちゃんと呼ばれる、黒いのに影が薄い女が私だ。
この度は盛大にフラれました。これみよがしに会社前の広場の公衆の面前で。
フッたのは取引先の営業、英男。割とイケメン。良く言えば、素直な天然。悪く言えば鈍感で非道。
だってさ、私の会社の目の前よ、この広場。
「好きな人が出来ました、別れて下さい」
そんな場所で堂々と公開処刑された私の身にもなってよ。
……百歩譲ってフラれたのは仕方ない。でも告げる場所って、そこじゃないよね。
私は、その日からあだ名が「黒子」の他に「黒いコスモス」と、称号が加わった。
存在感は増したよう。だけど黒いコスモスって、揶揄だよね。恋の終わりや思い出、移り変わらぬ気持ちを意味するし。
未練タラタラ、そんなの好きだったから当たり前じゃないの?
目立たない私が陰口言わず、なんで派手な女の子達が陰口言ってるんだろうか。
黒子のくせにざまぁ、って声が急に大きく聞こえるようになった。
陰じゃなくてオープンだから問題ないってさ。ハハッただの虐めじゃない。
いたたまれなくなった私は会社を辞めた。ある事ない事を、悪しざまに言われる筋合いない。
私が黒子呼ばわりされるのは、仕事が早く目立たないからだ。発注ミスもないし、クレームを貰うような案件はなかったと思う。
有能ではない。当たり前を当たり前にやるだけだったから。だからかな、簡単に辞表は受理された。
――――就活していたある日の帰りの事だ。偶然入った居酒屋で、偶然英男の被害に会った事のある女の子に会った。
「あいつはクズ」
私達は笑い合う。久しぶりに笑った。それは意気投合するって。
痛快だったのは、英男の会社が潰れた事か。
「私のいた会社の連中にもざまぁって言ってやりたいわ」
「取引相手なら関連会社なんでしょう。それなら潰れないにしてもダメージはあるはずだよ」
社長秘書のジーコさんの予言は当たった。業績の落ち込みに加えて、発注ミスや処理の雑さに顧客がキレて何人かクビになったそうだ。
私はジーコさんに誘われて、彼女の会社で働く事になった。
私は黒里桜子。黒いファッションが好き。だからと言って、いつまでも黒いコスモスにこだわりはしない。
瞬く星が暗闇があって映えるというのなら、黒く咲き誇る影は、明るい光の中でこそ映えるはずだ。
私はジーコさんと何度目かの乾杯をしながら、自分自身の存在について熱く語って寝落ちした。
お読みいただきありがとうございました。この物語は、なろうラジオ大賞5の投稿作品となります。
コスモスの花言葉は、色によって違うようです。単色で贈ると誤解を招き兼ねないようです。決めたのは人の側で、花に罪はありませんよね。
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