7.倫理観って知ってる? 【和泉優奈】
【和泉優奈】
カレンが秀と蓮に指示を出して二人が出発した少し後。
カレンが奈々の持ち帰って来た植物と睨めっこをしている隣で私は奈々を抱き抱えて座っていた。
奈々と私の身長差だと丁度いいのだ。
「…ねえ、奈々。そういえばなんだけどさ」
「…何?」
相変わらず多く喋ろうとしない幼馴染に愚痴る。
「何でクラスの奴ら秀を置いて行こうとしたのかな。冷静になると可笑しいよね」
「…ラノベ」
「…追放モノとか?でもさ、ああいったやつって何かしら理由あるよね。秀が恨まれるようなことあったかな」
「…二年前。体育祭」
「?」
記憶を探る。
二年前、つまり中学三年生での体育祭。
「んん?何かあったっけ」
「――告白しようとした時、よ。覚えてないの」
カレンの言葉で一気に思い出した。
「あれね。『一位になったら俺と付き合ってくれ』事件ね」
「…ラノベか」
「私らもその時同じ事を思ってたわよ」
ちなみに詳細は話さないが、何があったのかを簡単に説明すると。
・『一位になったら俺と付き合ってくれ』と言った二人がいた。
・ある二人によって両名二位以下に抑えられた。
・おめでとうございます。体育祭が終わるまで二人とも地獄のような表情だったよ。
「…あれ、でもその理屈で言うと蓮は?」
「モテるから」
「はあ?秀もかっこいいでしょ」
「…価値観の違い。大変」
蓮はかっこいい。
確かにそうだ。
あの体格、そして明るい性格。
しかし。
「秀のあのクールな雰囲気と見た目、モテるでしょ」
「それは、そうだけど。一部の人間の話でしょ…」
「いーや、間違いないね。秀の方が蓮よりモテる」
「…ちょっと話し合いが必要なようね。徹底的に討論しましょう」
それから数分間、カレンと徹底的に話し合った。
互いに互いの意見をぶつけ合う、まさに討論であった。
しかしそれから更に数分後。
「…何この話」
ぽつりと奈々が溢した言葉で正気に帰った。
「…その通りね」
「…その通りだわ」
これからは暴走しないように気をつけないと。
◆◆◆
「へっくしッ!!へっっくしッ!!」
「どうした?秀。二回もくしゃみして」
「…?何だろうな」