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42.力の使い方、絶対に間違ってる 【鈴森奈々】

【鈴森奈々】



「はあ………」


 何度目かの溜め息。

 それを吐いた張本人、秀は右手でトワの頭を撫でながら空を眺めていた。


「……」


 言わないけれど。

 やっぱり秀は馬鹿だと思う。

 昨日の夜の件も、さっきの件も。

 合理的な思考ができるくせに変に凝ったやり方をわざわざ選ぼうとする。

 うん、やっぱ馬鹿なのかな。


「おい今『馬鹿だコイツ』って思っただろ?」


「……知らない。何の事?」


「自覚あるからやめろ……くそ……」


 未だに顔を顰めている秀を眺め、流れて行く地面に目を向ける。

 今の様子は、箱が()()して自走しているように見えるだろう。

 実際には秀が飛ばしているわけだけど。


「はっ……はっ……もう、二度と、やらねえ……」


 隣には息を切らして座っている蓮がいる。

 あの後意地になった蓮が二時間近く担いで走った。

 それはもう、本当に意地になって。

 結局倒れかけたタイミングで秀が回収した。

 そして乗ってた箱が自走し始めた。


「完全に怪奇現象よね、これ……」


 カレンの言葉に完全に同意である。

 勝手に人を運ぶ箱とか怖すぎる。

 ……いやまあ、私たちは慣れてしまっているけれど。


「ねえ、トワちゃん」


 優奈がトワに声をかけた。

 今更ではあるが、優奈は秀とトワを挟んで座っている。

 うーん、溢れ出る夫婦感。

 何でだろ。


「聞きたかったんだけど、どうして結界を通れたの?」


「……?」


 コテン、と首を傾けるトワ。

 うわ、可愛い。

 狙ってやってないあたりが特に。


「自覚はないってことね……本当に、どういうことかしら。ねえ?」


「……まあ、知ってる奴に聞けばいいんじゃないかな。ねえ?」


「だな。知ってるやつに聞くべきだな。なあ?」


「秀は分かる?」


「とりあえず言わせてもらうが優奈ぐらい素直に聞いてくれるか?まるで俺が悪いことやってるみたいな言い方はやめろ。左から遺物蜥蜴蝙蝠」


「「「あ?」」」


 私達を完全に無視して秀は優奈に声をかけた。


「優奈」


「どうしたの、秀」


「これ、斬れる?」


 いつの間にか秀の手の上にあった林檎。

 トワがびっくりしてるから今まで無かったはず。


「いいよ!」


 あまりにも早い優奈の手刀であった。

 残像が残るレベルの。


「ほれ」


 私達に向けて飛ばされたそれをキャッチ。

 見事な六分割林檎。

 やっぱり力の使い方おかしくない?

 そう思うの、私だけかな。

 


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