41.力の使い方、絶対に間違ってる 【黒秋秀】
【黒秋秀】
蓮ごと加速させてすぐにそれは見えた。
かなり遠い。距離にして、300メートルほど離れた場所。
森と森の切れ目、とでも言えばいいだろうか。
無論、あちらの人間が俺たちに気づいた様子はない。
倒れた馬車と、その周りにいる数人の武装した人間。
そして、さらにそれを囲うように集まっている狼のような何か。
おそらく魔物、と区別されるその生物を遠目に眺めつつ、右手を掲げるように持ち上げ、
「【雷鳴魔法】【風旋魔法】」
二種類の魔法を発動させた。
放電する球体と、回転する旋風。
蓮には二度と使わないなどと言ったけど。
嘘です。
「混合、【天嵐魔法】」
二つの魔法を混ぜ合わせ、風の槍を纏う雷球へと形を調整。
遠距離、視界より遥か先。
狼もどき共に狙いをつける。
魔法の射程距離は世界を解析した際に理解している。
この距離では届かない。
というわけで。
「【行け】」
【言霊】によって強制的に距離を伸ばす。
風の槍を纏う雷球を狼もどきと同じ数飛ばしておいた。
これで魔物は全滅する。
あの馬車の周りにいた奴らも助かる。
その結果を見る前に森にもう一度入ってしまったが。
それはそれとして。
奈々がジト目でこちらを見つめていた。
「何だよ」
「……相変わらず、一方的なやり方。堂々と姿現して助ければいいのに」
「苦手なんだよ。つか、お前も知ってるだろ」
「……まあね。秀があまり人助けに積極的じゃないことも、ね」
トワの頭を撫でながら答えた奈々。
……おいちょっと待て。いつの間にトワを抱えてた?
さっきまで優奈の前にいたはずなのに。
「私は秀の気持ちが分かるわ。……とはいえ、仕方ないか。それより」
そう言ってカレンは俺に呆れたような視線を向けた。
何でだか。
「さっきの魔法……よね?使う必要あった?」
「?そりゃあ、この世界に合わせねえと」
「普通に【言霊】でそれっぽい感じの、作れるんじゃないの?結局最後は使ったでしょ?」
「……あっ」
全部【言霊】でやればよかったと今更気づいた。
「もしかして、魔法使いたかっただけ……とか?」
「……」
カレンから顔を逸らす。
奈々と目が合った。
奈々から顔を逸らす。
優奈と目が合った。
優奈から目を逸らし、空を見上げた。
「「「「ふ〜ん……」」」」
「あ゛あ゛あ゛ああ!!うるせえ!!」
手で隠した顔がめっちゃ熱い。
ここぞとばかりに蓮も参加しやがって。
何だろう、普通にやればいいのに凝ったやり方して生暖かい視線向けられたような。
ていうか現状向けられてるわ。
くそう。
「だ、大丈夫ですか……?」
癒しはトワだけだった。




