34.変なところで鋭いね 【鈴森奈々】
【鈴森奈々】
「……」
夜。
昇った二つの月を眺めて私は立っていた。
少し離れた場所で四人、蓮と優奈とカレン、そしてあの狐の子――トワが眠っている。
ちなみに、名前は秀が聞いていたが。
私達に伝えたのは夜、寝る前。
『あ、そういや言ってなかったわ。ごめんごめんんんん!?!?待て待て待てカレン!!それはマジでやばい!!』
『……私、殺す』
『あーあ、カレンが殺人ロボットになっちまった。秀、全てお前のせいだぞ』
『だから悪かったって!!やめてくれ、カレン!!ふざけないから!!これからは気をつけるから!!』
キレたカレンを止めるのは大変だった。
何あの無表情。本当に怖かった。
まあ、何はともあれ。
私の本領が発揮されるのは、夜。
だから、夜警戒するのは私の役目だ。
「よ、奈々」
「…何で起きてるの?」
だから、平然と起きていた秀に少しだけ驚いた。
どうせもう寝ていると思い込んでいたけれど、そんな事はなかった。
「今夜は月が綺麗ですね」
「私はそうは思わないけど」
ふざけた様子の秀へとはっきり言う。
事実、二つの月のうち一つの月は真っ赤に染まっている。
ブラッドムーン、と言うやつだろうか。
「ん〜?月、赤いし、天気良いし、文句のつけどころないだろ?」
「…無意識?ワザと?…ま、いいか。この月、結界のおかげで気にならないけど、かなり面倒な効果あるよ」
今もザワザワと、何かが本能に訴えかけるような感覚がある。
それこそ、ただの人間には影響しないだろうと思うけれど。
「…思ったより、厄介な世界かも。この世界は」
「元の世界に帰るまでは辛抱してくれ」
「…元の世界への手がかりは掴めてるの?」
「それも話したいところだけど。それより、奈々、聞きたいことがある」
突然真剣な顔を浮かべた秀は、私を見据えた。
「嘘は無しで。調子はどうだ?」
「……」
誤魔化しはきっと効かない。
「…はあ」
「ため息やめろ」
思わず出てしまったため息。
いつも鈍感な癖に。
どうして、こう変なところで鋭いのだろうか。




