間 もしもし?今異世界にいます。
【黒秋美春】
「もしもし?…いきなりどうしたの、秀。
母さん忙しいんだけど」
『あー、端的に言うと…今異世界にいる』
「…ちょっと、冗談は大概に……冗談じゃ無いのね」
いつもと同じく、頭の中に聞こえる声に違和感を感じる。
何と言えばいいのだろうか…電話の調子が悪いような、そんな感覚。
右手を振って一時的に周囲との関わりを断つ。同時、時間の流れからも自身を切り離し止まった世界の中で話し続ける。
「そっちに上手く繋げられないわね…異世界、っていうのは本当なの?」
『ほぼほぼ確実かなあ。父さんには届かなかったし、【言霊】の強引な接続は効かなかった。世界を超えてるなら納得じゃない?』
「じゃあ、もう一つ。あの子たちも一緒?」
数秒、沈黙した後に観念したような声が届く。
『…やっぱり隠してもバレるか。四人も一緒だよ』
「そう。分かったわ。私の方でもそっちの世界にどうにか繋げられないか色々試してみるから、秀も気をつけてなさい」
職場に向かおうと思っていた足を家に戻す。
一度頭を整理してから動いた方がきっといい。
そう考えて再び右手を振り、時間の流れを戻す。
『ありがとう。正直言ってそろそろお手上げ状態に近いから、何かしら進展が欲しかった所だった』
「あのね…前から何度も言っているでしょう?もっと母さんと父さんに頼りなさい。何でもかんでも自分一人でどうにか出来る、なんて思ってたら駄目だからね」
『…んーと、じゃあ早速聞いていい?』
「何?」
『…隠れて母さんと話してたはずなのに、四人にバレた。しかも四人がすごい目して俺のこと見てるんだけど。命の危機を感じるんだけど』
「…」
なぜか状況が想像できてしまう。
だから、仕方なく。
「…何とか全員と繋げられないか試してみるから。そう伝えなさい。世話の焼ける子だこと」
『…了解。じゃ、また今度』
あっさりと切られた念話から意識を戻し、動き出す。
元々、あの子は手間がかからない子だった。
私達二人の力を継いでいるのに力を使うことに消極的で大人しい。
決断した時は躊躇はしない。そんな子だった。
だから、もっと頼って欲しいと、ずっと思っていたのだけれど。
「…まさか異世界とは。さすがに驚いた」
予想外にも程がある。
それでも、
「頼ってくれたのなら、全力で助けになってあげないとね。待ってなさいよ、秀」




