27.神話に出てくる空を飛ぶ奴 【白川蓮】
【白川蓮】
手加減して二人へと殴りかかり続けること数分。
相手二人の動きは完全に鈍り、膝をつきかけるほどになったおかげで余裕をもって相対出来ている。
ある程度実力も分かって加減も楽になってきた時。
「まだやってたのか?気絶させとけよ」
空中から音を立てずに秀が着地した。
その余裕そうな様子にまず、一言言いたくなった。
「働けやニート」
「ニートじゃねえわ。こちとら魔法とやらを理解するために大変だったんだ」
秀はほんの一瞬ふらついている二人を一瞥し、面倒そうに言った。
「さっさと気絶させろよ」
「あ、了解。悪かったな」
深呼吸をして意識を切り替えるイメージで、己を意識する。
もう一つの姿へ変わる必要はない。
あの力の一部だけを引き出せばいい。
「…」
ゆっくりと辺りの空が雲に覆われて暗くなっていき、大量の雨が、足元の石を打つ。
そして、雷鳴が響いた。
どうせ結界で閉じられているのだ、多少大雑把でいい。
「「か…ッ!!??」」
相対していた二人の倒れる音を聞き、力を抑え直す。
「よし。これでいい…か?」
秀に確認しようと、振り向いた先では。
「…」
秀が全身から水を滴らせながらこちらを睨んでいた。
「大丈夫そうだな」
「雨降らす必要あった?加減しろや」
「悪い悪い」
とりあえず、謝った。
それから気になっていた事を聞く。
「んで、引きこもりになった甲斐はあったのか?」
「…そうだな。面白いもん見せてやる」
そう言って秀は右手を上に向けた。
「【火炎魔法】【雷鳴魔法】」
秀の掌の上に、炎の弾と雷の弾が現れ、揺らめく。
二つの弾は、互いにぶつかる寸前の距離を維持しながらゆっくりと時計回りに回転し続けていた。
「…それが魔法?」
「じゃねえの?少なくとも、物理現象とは異なる過程で発生してる。さっき止められなかったのも俺が理解出来てなかったからだ」
まるでお手玉を投げて遊ぶように、二つの異なる色の弾が秀の右手の周りを自由自在に動く。
一通り、動かして満足したのか、秀は右手を握るようにして二つの魔法を消した。
「多分、こっちでの詠唱やら魔法名やらは違うだろうけど俺も使える。だけど、魔法使うより力使ったほうが楽だな」
「…つまり?」
「今まで通りだ。理解したから、もう十分。使うメリットもない。おけ?」
「おっけい」
「んで、今からもう一人の方のおっさんと交渉するから。起こすぞ」
「…ええと、俺が気絶させた意味は?」
思わず、聞き返す。
すぐ起こすのであれば、そのままで良かったのではないか。
「…」
「おい」
「うっせえ黙れ喋るな」
「殺すぞ」




